73664町田忍さんに聞く、奥深きレトロ銭湯の世界|知られざる街の極楽空間

町田忍さんに聞く、奥深きレトロ銭湯の世界|知られざる街の極楽空間

編集部
懐かしさを感じる世代から、レトロなものに惹かれる若者まで銭湯文化に興味を持つ人は多い。そのひとりであり銭湯文化研究の第一人者である町田忍さんが語る銭湯の魅力とは。

【プロフィール】エッセイスト 町田忍
1950年東京生まれ。一般社団法人日本銭湯文化協会理事を務め、銭湯研究の第一人者として知られる。著書に『町田忍の銭湯パラダイス』(山と渓谷社)など多数。2022年11月27日~12月11日まで、神奈川県横浜市「ギャラリー幸子」にて『町田忍の江戸から昭和の銭湯ジオラマ展』を開催した。

■各地の庶民の暮らしに銭湯は常に寄り添ってきた

小学生時代のメンコに始まり、庶民文化を伝える品々としてチョコレートや納豆のラベル、飲料缶、歯磨き粉の箱や使い捨て髭剃りなどなど150種を超えるカテゴリーを収集・研究し続ける町田さん。一方、銭湯に関する著作も多い。

“モノ”ではない銭湯に注目したのはなぜだったのだろう?

「いや、僕にとっては同じなんですよ。どこにでもあって、あまり人が記録しておらず、けれども人々の生活に寄り添っていたものだから」と町田さん。

42年前、オーストラリアから来た友人を近所の銭湯に誘った。日本文化に触れさせようという軽い気持ちだった。そこでお寺や神社に似ている理由を聞かれ、がぜん興味が湧いた。取り壊される銭湯も増え始めた時期だ。これは記録しなければとの思いが沸き上がる。

「電話帳で調べて訪ね、古いとわかると次には入浴に行き、再度連絡して撮影に。そうして全国3800以上の銭湯を回りました」

あちこち行けば出会う謎も増す。銭湯絵師、煙突掃除、備品など探求するテーマも増えていく。地域による違いもある。お寺のような姿の宮造り銭湯は関東中心の文化だ。富士山などのペンキ絵が描かれ、脱衣所の外には小庭がある。

「豪華で、ある意味ムダが多い。そこには宗教観があるんですね。昔、お寺で人々を入浴させた施浴がルーツですから。湯船の上の富士山の絵も、富士の霊力で清められた湯に入るということ」

それに対して大阪では機能重視。ジェットバスや電気湯もある。北海道は洋風の建物で、入り口には風防室がある。沖縄は脱衣場と浴室の仕切りが無く、湯船以外はシャワーのみだそうだ。

「土地の気候や文化を反映した歴史の積み重ねがあるんですよ」

そうしたあちこちの銭湯を楽しむには“ヨソ者心得”が必要だ。

「僕は下足箱やロッカーは使いにくい隅っこにします。いい場所は地域の常連さんのものだから。浴室のカランも入り口に近い寒いところ。すると地元の方が話しかけてくれ、昔の話も聞けたりします」

若い世代には、濡れた体で脱衣場に出たり、湯船にタオルを浸けたりといったマナー知らずもいる。

「昔ならちゃんと叱る人もいた。銭湯は社交の場であると共に、社会性を学ぶ場でもあったんです」

かつて全国で1万軒以上を数えた銭湯も今は4000を割る。しかし趣深い銭湯は探せばまだある。

「浮世の垢を落としに、ぜひ銭湯へ行きましょう!」

・ロケ地:これぞ宮造り銭湯のお手本【明神湯】

1957(昭和32)年に創業し、現在は2代目が運営。燃料には廃材を主に使う。宮造り銭湯の典型であり、ペンキ絵師・丸山清人氏による富士山も美しい。小庭もある。脱衣場の折上格天井も見事だ。

東京都大田区南雪谷5-14-7 
TEL:03-3729-2526
アクセス:東急電鉄「雪が谷大塚駅」より徒歩約15分

文/秋川ゆか 撮影/池本史彦

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