78182ChatGPTの進化で話題! AIの今後を大予測。仕事が奪われるのはいつ? どう活用すればいい?

ChatGPTの進化で話題! AIの今後を大予測。仕事が奪われるのはいつ? どう活用すればいい?

有限会社verb 岡本 のぞみ (おかもと のぞみ)
岡本のぞみ(verb)
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Twitter界隈では、ChatGPTの回答クオリティの高さが日々、話題になっている。AIチャットの登場は、今後のインターネットの検索行動にも影響を及ぼすほか、Webビジネスを始めとして、さまざまな仕事にも変化が起きていきそうだ。

AIに仕事が奪われるという現実もすぐそこにある未来。今後、ビジネスはどう変わっていき、どう活用すべきだろうか。AIチャットについてTwitterで発信している、SEO(検索エンジン最適化)の専門家でエンジニアの柏崎剛さんにAIの今後を予測してもらった。

【取材協力:柏崎 剛】
株式会社コンテンシャル代表/1979年、東京都生まれ。インターネットにおけるマーケティングやクリエイティブに携わるプロジェクトや開発に参画し、SEOのコンサルティングとして活動。得意な領域は美容医療系・教育系・ITテクノロジー系・アフィリエイトメディア全般。「再検索キーワード調査」「共起語調査ツール」などのSEOツールを無料で公開している。TwitterでGPTまわりのことをつぶやく、“AIおじさん”としても話題。著書に『目からウロコのSEO対策「真」常識』(幻冬舎)がある。
https://www.tsuyoshikashiwazaki.com/
Twitter:@tkashiwazaki2

■ChatGPTがSFXの未来を可能にする?

ChatGPTの何がすごい?

“AIの進化なんてまだ先のこと”として高をくくっていたが、ChatGPTの登場はそれをくつがえしそうな勢いがある。そもそも、ChatGPTの何がそこまで驚異なのだろうか?

「ChatGPTは、アメリカのOpen AIというイーロン・マスクらによる会社が開発した自然な対話を生成することができるAIです。Open AIは設立当初、非営利の研究機関でしたが、2019年にMicrosoftと提携して資金を得たことで開発が加速し、2020年7月にGPT-3が公開されました。これが膨大な量のテキストデータを学習し始めたことで専門機関やエンジニア業界に大きなインパクトを与えたのです。そして、2022年11月に進化系であるGPT-3.5が搭載されたChatGPTが公開されました。

ChatGPTの何がすごいかというと、誰でもログインして質問すれば返してくれるところ。そのチャット型のインターフェイスが使いやすく、後ろに人がいるのかと思うくらい自然な文章で返してくれるのがとんでもないと話題になっています。さらにアクティブユーザー数が1億人を達成するまでにかかった時間は史上最速の2カ月。TikTokとInstagramがそれぞれ9カ月と2年半かかったことからも、そのすごさがわかります」(柏崎さん、以下同)

ChatGPTのすぐれた性能はさまざまな分野に発揮される。論文などはテーマを与えられると自然な文章となって作成されることからニューヨーク市では学校内のシステムやネットワークでChatGTPの使用を禁止したほど。このほか、コンピューターのプログラミングやバグの解消、数学や物理の問題を解く、翻訳、アイデア出しなどは得意分野。逆に現時点では、情報が正確でなかったり、学習しているデータが最新でない(2021年9月まで)、ローカル情報には対応していないなどが苦手分野となっている。

そして3月14日には、GPT-3.5の後継となるGPT-4がリリースされた。リリースされるたびに進化が著しいが、今回のアップグレードもすごい。アメリカの司法試験の模擬テストを受けさせたところ、GPT-3.5では不合格となっていた能力が、GPT-4においては上位10%程度の成績で合格するという驚異的な進化を遂げたという。

「GPT-4は、GTP-3と比較してマルチモーダルモデルとなった他、パラメーター数、最大トークン(記憶力のようなもの)といった部分が大幅に強化されました。近いうちに、出力も文字データだけではなく音声や動力と連動してくることは間違いないと思います。肉声でロボットに問い合わせや指示を行う会話型のコミュニケーションは、さながらSFX映画のような世界です」

■インターネットの検索行動の変化とGoogleの対応

もう検索は必要ない? Googleはどうなる?!

質問するだけで秀逸な回答が返ってくるなら、調べ物をするためにインターネットで検索していた行動も変わっていきそうだ。

「そうですね。私たちが調べ物をするときに検索を続けるかどうかは疑問視しています。昨今では、TikTokとInstagramというような”流し見”で済んでしまうプル型のコンテンツやプラットフォームが爆発的な人気を誇っています。検索はWebサイトを一覧で紹介する機能なので、コンテンツを自ら閲覧し、埋もれている情報を探さなければならない点で労力がかかります。これをすっ飛ばして対話型で答えのみを情報提供してくるのがAIであるため、検索エンジンよりも効率的な部分があります」

とはいえ、検索行動がすぐに変わってくるものでもないというのも柏崎さんの見解。その理由は検索とAIが共存するようなインターフェイスになるからと予測する。

「検索エンジンといえばGoogleが圧倒的なシェアですが、それに次ぐBingというMicrosoftの検索エンジンがGPTを検索に入れてきました。検索窓に入力するとAIが応答するしくみをつくってきたのです。つまり私たちが検索しようと思っても、知らず知らずの間にAIを使っている場合もあるということ。ハイブリッドで共存するようなものになっていく可能性があります」

そうなると、これまでインターネットの世界で強大な影響力をもってきたGoogleはどのようになっていくのだろうか?

「実際にGoogleはコードレッド(非常事態)を宣言したことが有名です。この1月にレイオフしたことも関係しているかもしれません。後発となったもののGoogleもチャットAIの『Bard』を発表し、検索エンジンに対話型AIとして組み込んだ形で試験運用が開始されており、今後は順次利用可能となるようです。また、3月14日には大規模言語モデルの『PaLM』を発表し、既にGoogle CloudなどのAPIで開放するなどして、先行するMicrosoftを猛追しています。今のところ精度、話題性ともにChatGPTに分があるという見方でしたが、『PaLM』は性能に値するニューラルネットワークの規模が、現時点でGPTを上回っているとのことで期待が持てるでしょう。どちらにしても、Googleは『AIの波には逆らえない』として、コードレッド宣言を行ったと考えられるので、検索エンジンは維持しつつも、引き続きAIチャットボットの開発に力を入れてくると考えています」

■仕事が奪われる? うまく利用していくには、どうしたら?

どんな能力を身につければ?

まさに日進月歩で進化しているAIの世界。AIをめぐる私たちの環境は今後、どのようになっていくのだろうか?

「GPTは業者向けにAPIという開発パーツを開放しているので、GPTを組み込んだ画期的なアプリケーションやサービスが出てくると思います。いま、ChatGPTは、文字データですが、音声型のAIも出しています。それらを連結して出力された文章をWhisperという音声型のAIに投げ込むと、各国の言語にしたうえで、老若男女、早口やゆっくりなどいろんなパターンで、人間が話しているのと変わらないようになっていきます。つまり完全にロボットが完成しつつあり、人間が必要のない部分が出てくることになりかねません」

GPTを組み込んだライティングAIはすでにあるので、ライターがいらなくなるといわれ、筆者自身が戦々恐々とする毎日。ほかにも、AIによって変化していく仕事もありそうだ。

「ライティングの分野でいうと、2024年にはライターと同等レベルの文章を作成してくるといわれています。さらに2025年には人間を超えたオリジナルの発想やアイデアを出してくるかもしれません。2025年は、シンギュラリティといってAIが人間の知能をこえる分岐点といわれています。ライターだけでなくプログラムも書いてくれるのでプログラマーもいりません。ほかにも薬剤師、弁護士、医師など、症状や判例をもとに判断が必要な職業はいらなくなるかもしれません。ほとんどのホワイトカラーはAIで代替えできるので、逆に肉体労働が必要とされる。つまり、AIに支配される世の中になる可能性もあります」

ただし、GPTの進化に対応した膨大なハードウエアの保存機能や通信量を支えるだけの高速インフラが整うなどの条件も必要になるので、シンギュラリティがいつになるかは予測不可能な部分もある。とはいえ、いつかは来るAIの台頭に対して、私達はどう対応していけばよいのだろう。

「AIにインプットするやり方や内容次第だと思います。ライターであれば、当たり前のことを当たり前に書くだけでは、既に価値を生み出さない状況になってきました。それ故に、『何をいうかより、誰がいうか』といった流れが非常に強くなってくる。一人一人が「何者かになる」ことが重要です。これをGoogleはE-E-A-Tと呼んでいますが、『経験、信頼性、権威性、専門性』を上げることで、文章の内容ではなく『この人が言うのであれば!』と言われるような立場になる他ありません。誰もが調べれば書けるようなことはAIに任せつつ、自分にしかないものを生み出すことが生き残るカギです。これはどんな職業にもいえること。AIを活用できる部分はしながら、それ以外の視点や主張の部分を磨いていくのがよいと思います」

当たり前のことや大多数の人が考えるようなことをしていてもしょうがない。出来杉君ともいえるAIに対抗するには、ある意味でトリッキーな存在になる必要がありそうだ。

取材・文:岡本のぞみ(verb)

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有限会社verb 岡本 のぞみ (おかもと のぞみ)

編集プロダクションverb所属。広告制作会社でコピーライターを経験後、ライターに。Webメディア「東京ワインショップガイド」も運営している。ワインエキスパートやビアテイスター、普通自動二輪の資格・免許を所持。ワインやクラフトビール、テニスが趣味で、酒を楽しむこと、体を動かすことが好き。男の隠れ家デジタルを担当するようになり、アウトドアやバイクにも興味が広がっている。

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