58273素材も形もまさに多彩な「郷土団子の世界」6選

素材も形もまさに多彩な「郷土団子の世界」6選

男の隠れ家編集部
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日本各地には珍しい素材を使ったものや不思議な形をした団子がある。ここではそんな団子たちをご紹介。味、素材、形。郷土団子の違いを生み出したものとは——。

■それぞれの地域の条件により、土地に合った団子が生まれた

日本各地に広がる団子をみていくと、その形も味も多様にあることがわかる。その違いを見ていくうえで、注目したいのが「地域性」ではないだろうか。その土地で、なぜその食材が用いられ、団子になっているのか。それにはその土地ならではの理由や由来があるはず。

例えば米どころ新潟の名物「笹だんご」の起源はいくつかあるようだが、越後の武将やその家臣が遠征の際の携行食として生み出したという説があるように、その郷土の偉人が関わっているもの。はたまた「しだみだんご」のように、その場所では生産できない小豆の代わりに、保存のきくドングリを餡にしたというような自然環境が理由となって生まれたものもある。

熊本の「いきなり団子」の場合は突然の来客でも、すぐにもてなしができる「簡単に作れる団子」が名前の由来となっており、これは人の往来が多い賑やかな城下町ならではの由来だろう。

・笹の葉に包まれた深みのある味わい「笹だんご」(新潟県・田中屋本店)

越後の名将・上杉謙信が考案したという説もある。また江戸時代に編纂された上杉謙信や景勝についてまとめられた『北越軍記』などには彼の家臣によるものとあるが定かではない。また上質な米を納めた後の余ったクズ米をより美味しく食べるために知恵を生かした庶民の食べ物の一つであったという説も捨て難い。

笹にはクロロフィルという物質が含まれており、防腐剤の役目を果たしている。加えて薬草としても知られるよもぎを練り込んでいるため、栄養価が高くて腹持ちも良い保存食として最高の団子である。現在では中にあんこが包まれているが、これは砂糖の入手が容易になった明治時代からで、それ以前は、惣菜を入れるのもポピュラーだった。「きんぴら」などは現在でも販売されている。

・栗のほのかな甘さがたれに絡まる「大栗だんご」(宮城県・なるみ)

名湯・鳴子温泉で、食材としてポピュラーな栗を使ったお茶請けとして食され、温泉客にも人気を博した。どの店でも添加物は使用しないため、現地でしか味わえない。みたらし風のたれを栗の入った大きな団子にたっぷりかけて食べる。ほっこりした栗、もちもちの団子、甘じょっぱいたれの絶妙な組み合わせ。

・思わず手が出る小振りの柔らか団子「むかし吉備団子」(岡山県・廣榮堂)

桃太郎の伝説が伝わる吉備国(現在の岡山県)のお土産の定番として有名な吉備団子。江戸時代、それまでの吉備団子を基に、茶席用に改良したのが同店の初代である武田浅次郎だ。そのレシピに基づいたものが、現在も「むかし吉備団子」として販売されている。ふんわりとした求肥菓子は上質なもち米と上白糖、水飴をベースにし、きび粉で風味づけしたもの。ほんのりとした上品な甘さも特徴。

・どこか香ばしい風味のドングリあん「しだみだんご」(岩手県・産直ぱあぷる)

「しだみ」は方言で「ドングリ」のこと。ドングリは古代から食材に利用されてきたが、強いアクを抜くのに手間を要する。しかし乾燥させれば保存が利くうえに栄養価も高い。そのためしだみ団子は救荒食として、古来、伝統的に食されてきた。「しだみ餡」は二日間かけてアクを取り、黒砂糖と白砂糖を混ぜ合わせて作る。生地で餡を包み、茹で上げたら完成。ただ、現代では生産者が少なくなってきており、今のうちに食しておきたいところ。

・サツマイモが満足感をくれる「いきなり団子」(熊本県・肥後屋)

突然の来客でも「かんたんに」出せることから名付けられたという。南九州でたくさん栽培されているサツマイモが餅やあんことマッチする。現在では熊本の定番土産にも。

・葉っぱに包まれたしっとり食感の球体「かからん団子」(宮崎県・お菓子の菊水)

「かからん」とは方言で「触らない」という意味を持ち、棘のある「サルトリイバラ」のこともそう呼んだ。この葉は特に西日本で多く使われるが、こちらも殺菌作用をもつ。

■まとめ

団子は気軽なおやつとして重宝され、郷土の自然や生活、食材と結び付いていた。だからこそ色々な味や形ができたのだろう。今回はそんな多彩な団子からいくつかをピックアップして紹介した。その姿の違いや由来などをぜひとも楽しんでほしい。

撮影/遠藤 純

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いくつになっても、男は心に 隠れ家を持っている。

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