飛騨の豪壮な古民家空間と自家源泉の湯を満喫

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「草円」は、国の有形文化財にも指定されている趣ある古民家の建物と、豊富に湧き出る自家源泉の温泉が訪れる人たちを惹きつけてやまない。まずは玄関を入った瞬間に目を見張る母屋の造り。

160年余り前の飛騨の古民家を移築再生したもので、桁け たゆき 行7間半(13・6m)の切妻入りの大型空間は長い歳月と厳しい風雪に耐えた重厚感に満ちあふれている。太い柱と梁、広々とした土間、そして炭が赤々と燃える囲炉裏端。自在鉤に掛けられた鉄瓶からは細い湯気が上がり、まるで昔の暮らしがそのまま営まれているかのよう。静寂なその空間に座していると、時の流れも穏やかに感じる。

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客室は和タイプが15 室。古民家の雰囲気を生かした造りが多く、くつろぎ感に満ちている。チェックインの後しばし部屋で過ごしたら、浴衣に着替えて温泉へ。地下300mから汲み上げる豊富な自家源泉は、男女別の大浴場「福の湯」ほか、露天風呂や貸切風呂などに源泉のままかけ流される。

自然林に抱かれたその名も「森の湯」は、「釜湯」と「岩湯」の男女に分かれた野趣たっぷりの露天風呂。平湯川のせせらぎを眼前に、巨石を配した岩湯、円形の木の香ゆかしい湯船が特徴の釜湯があり、後者の湯船は近隣の神岡鉱山で利用されていた鉄釜と木を組み合わせたユニークな湯船だ。

湯船の縁からあふれる無色透明の湯に、周囲の風景を眺めながら湯に身を包んでいると、まさに開放感と至福のひと時へと誘われる。まもなくその風景は、燦めく真っ白な雪に彩られることだろう。

地元農家が育てた天日干しの米を羽釜で炊く

夕刻になると、真っ赤な炎の揺らめきと共にパチパチと薪のはぜる音が耳元に心地よく響く。やがて釜の木蓋の隙間から白い湯気が上がってくると、薪をくべていた手を止めて火加減をうかがう。かまどと対峙し、目を離さず炎をじっと見つめる姿は真剣そのもの。湯気はさらに勢いを増してシュンシュンと音を立て、それと同時にふわりと甘いご飯の香りが漂い始めた。

「よく、はじめちょろちょろなかパッパ……などと言いますが、最初は一気に火力を上げて強火にするのが当宿の炊き方です」と話すご飯担当の男性スタッフ。そして、火加減の調整と炊き上がりのタイミングは、薪の音と湯気の香りの変化で判断するという。ほんのり香ばしさが立ってきたら火を落としてそのまま20分蒸らす。

「いい具合におこげもできてるはずですが……」とにっこり。 

昔ながらに薪で火を熾(お)こし、絶妙な火加減で炊き上げる宿自慢の釜炊きご飯。地元のおばあちゃんから炊き方を伝授してもらったというふっくらご飯は、夕食の名物料理のひとつになっている。米は岐阜県高山市上かみたから宝町で有機栽培されたコシヒカリ。昔ながらに稲を逆さまにして干す〝はさ掛け〟という天日干しした米を使用している。吊すことで旨味が稲穂に凝縮。滋味深い飛騨の料理と相性ぴったりの米なのだという。

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ご飯が炊き上がった頃がちょうど夕食の時間。料理は朝夕ともに炉端お食事処「木庵」で、囲炉裏 を囲んでゆっくりいただく。

湯上がりに囲炉裏に座すと、目の前には炭火が赤くちろちろと燃え、串に刺したイワナと五平餅がこんがりと焼かれていた。料理は地元・飛騨の食材をふんだんに使った山里ならではの逸品揃い。

この日は2品の串焼きのほかに、湯葉や奥飛騨サーモンをあしらった前菜、イワナのお造りなどが順番に登場。囲炉裏の真ん中には野菜やキノコ、大根おろしの入った霙みぞれ 鍋が運ばれ、ほっこり温かな湯気を上げている。さらにメインはお待ちかねの飛騨牛ステーキと温野菜添えが供された。

「肉本来の味を楽しむため、塩コショウやオリーブ醤油などでシンプルにお召し上がりください」

その言葉通り、口中にとろける柔らかさと深い旨味は、飛騨牛ならではの味わい。そして、いよいよ最後に登場するのがあの釜炊きご飯である。茶碗に盛られた真っ白いご飯。

「今日はちょっとおこげが少なかったです」と言われたが、ちょっぴりのったおこげと一緒に口に運ぶと、香ばしさもふわり。粘りと甘みも絶妙で、しみじみ釜炊きご飯の美味しさに感動を覚えた。ご飯を噛み締めながら、ふとふたりでにっこりと笑い合う。つれ合いの瞳の奥の「また来たいね」の意味を悟った。

山里のいおり 草円
岐阜県高山市奥飛騨温泉郷福地温泉831
☎0578-89-1116
宿泊料/1泊2食付き1万8800円~(2名1室の場合の1名分・消費税、入湯税別)カード/使用可 客室/15室 チェックイン・アウト/15:00・11:00 風呂/内湯男女別各1、露天風呂男女 別各1、貸切露天風呂3 泉質/弱アルカリ性単純泉 駐車場/10台 アクセス/(電車)JR「高山駅」よりバスで約1時間10分。JR「松本駅」よりバスで約1時間40分。(車)中部縦貫自動車道「高山IC」より約1時間。長野自動車道「松本IC」より約1時間