103214昭和から受け継がれる魅惑の社交場「グランドサロン十三」|大阪の昭和夜遊び

昭和から受け継がれる魅惑の社交場「グランドサロン十三」|大阪の昭和夜遊び

男の隠れ家編集部
編集部

洗練された都会的なエリアから少し離れれば、人情味あふれる下町の風景が広がる大阪。昭和レトロを味わい楽しむ夜の旅へ、いざ出発。

(※その他の写真は【関連画像】を参照)

※この記事は2024年11月号に掲載されたものです。

■昭和の風情が色濃く残る「大人の社交場」へ

浪速の昭和レトロを巡る旅、まず訪れたいのは大阪市南部の下町「新世界」。言わずと知れた大阪屈指の名所である。

シンボルの「通天閣」を中心として、その周辺に立ち飲み屋や純喫茶、食堂、遊技場、劇場などがずらり。ぶらぶら歩くだけで昭和の雰囲気が味わえる。

昔懐かしい昭和の風情がそこかしこに残る通天閣周辺。レトロ感漂うメニューやインテリアが人気の喫茶店は、地元の人や観光客でいつも賑わっている。商店街から外れて路地に入れば、大阪庶民の営みや日常風景を肌で感じることができる。

大衆酒場や串カツ屋、どて焼き屋など庶民派の店が軒を連ねる「ジャンジャン横丁」は昼飲みの聖地としても知られる。明るいうちから地元の人たちが酒を酌み交わす、その輪に混ぜてもらって、ちょっと一杯。

エネルギッシュな大阪を堪能した後は、地下鉄と阪急電車を乗り継ぎ北へ向かう。目当ては老舗のグランドキャバレー、「グランドサロン十三」だ。

1階客席は緩やかな傾斜がついておりステージが見渡せる。劇場のような造りだ。

昭和30年代後半から40年代の半ばまで、日本各地で大型キャバレーが大いに賑わったが、現在は数軒を残すのみ。グランドサロン十三は大阪でわずかとなったうちの一つである。

ホステスの笑顔に迎えられ、さっそく中に入ると大空間が目の前に広がる。無数の電飾で縁取られた重厚な舞台幕にまばゆいばかりのステージと、外とはまるで別世界だ。

さらに歩みを進めると、視界が一気に開かれ高い天井から豪奢なシャンデリアの光が降り注ぐ。日本が元気だった時代を彷彿とさせる贅を尽くした空間は圧巻だ。

ステージから扇形に広がるラグジュアリーな空間。
現在は未使用だが2階席も。昭和の時代は2階まで連日満席だった。

艶やかな濃紺のベロア地のソファに案内されフロアを見渡すと、すでに客席は多くの客で埋まっている。ホステスと親しげに乾杯する人、大阪名物を肴に酒を楽しむ人、男女数人連れでホステスを囲み談笑する席もある。

ステージでは客のカラオケが始まった。あの光の中で歌うのは、さぞかし気持ちがいいに違いない。

ベテランホステスの接客もじつに心地良く、テンポのいい大阪弁とユーモアあふれる会話で緊張を解きほぐしてくれる。長い歴史を紡いできたのは建物や空間だけではない。人と人の交流もまた歴史の重要なファクターとなる。

指定席番号札。
常連たちのボトルキープ。

「元々キャバレーはフランスが発祥で、ステージのショーを観ながら酒を楽しむ場でした。戦後、日本に入ってきた際にホステスによる接客が加わり、独自の文化として広まったようです」

経営者の宮田泰三さんによると、グランドサロン十三の創業は昭和44年(1969)。高度経済成長期の真っ只中、仕事を終えた人たちが歌や演奏、ダンスなどのショーを楽しみ、連日満員だったという。

折しも昭和45年(1970)開催の大阪万博前だったことから、鉄道や道路工事に従事した人々も多く訪れたそうだ。

ステージから客席を望めば昭和の世界にタイムスリップできる。
ネオンが輝くエントランス。ホステスたちが笑顔で出迎える。
経営者の宮田さん。一般企業での経験を活かし改革を続ける。

創業者の先代は理想のグランドキャバレーを築き上げるために、やりたいことをすべて実現してきたという。非日常な空間を生み出すラグジュアリーな内装や照明、家具を見れば、そのこだわりがうかがえる。

そして、2020年に宮田さんは2代目として父である先代からこのサロンを引き継いだ。

「キャバレーの数も減っていますし、ちょっと怪しい店という印象がありましたから、誰もが安心して楽しめるように料金体系を明確にすることから始めました」

創業当時の姿。街の様子は変わったが現在でも変わらぬネオンサインが見られる。
現在の通天閣は昭和31年(1956)再建の2代目。

グランドサロン十三では、客の人数と同じ人数のホステスが60分間席についてくれる、一人7000円のパック料金で楽しめるようになっている。飲み放題で料金は前払いのため、初めての人でも安心できるシステムだ。

「およそ七割が常連のお客さまですが、最近は初めてという方も増えてきました。昭和が好きな若い女性がSNSを見て、東京からいらしてくださることもあります」

キャバレーとしての文化を残すため、月に一度はダンサーのパフォーマンスやバンドのライブ、大衆演劇などショーを開催。さらに、この空間を多くの人に体験してもらいたいと、イベントや撮影会の会場としての貸し出しも行っている。

ドレスをまとうホステスたちは30代から50代が中心のベテラン揃い。
最年長は80代という超ベテランも。

貴重な昭和のキャバレー文化を残しながら、この場所をさまざまな文化発信の場にしていきたいという宮田さん。昭和の企業戦士を癒し、明日への活力をもたらした唯一無二の空間は、令和の時代にまた新たな歴史を刻んでいく。

100年以上続く「新世界市場」。近年は屋台街として賑わう。

■スマートに楽しむ「初めてのキャバレー マナー&ルール」

⚫︎正しい服装は?

スマートカジュアルが基本だが普段着で来店する人も。周囲に迷惑をかけない服装で訪問を。

⚫︎料金はどのくらい?

グランドサロン十三は、ホステス1名、飲み放題付きで、60分間 7000円で楽しめる。

⚫︎予約は必要?

基本的に不要、3名以上の利用は予約を。グランドサロン十三は数十名での利用も可能だ。

グランドサロン十三
昭和44年(1969)創業のグランドキャバレー。「情緒ある大人の社交場」として今も親しまれている。

大阪府大阪市淀川区十三本町1-16-20
TEL/080-9476-7377
営業時間/18:30~22:45
定休日/日・月曜、祝日、年末年始

※この記事は2024年11月号に掲載されたものです。

文/いしだかおり 撮影/渡部健五

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