誰しもが一度は憧れを抱く、自分の好きなモノだけに囲まれた趣味部屋。限られた空間に所狭しと並んだコレクションは、ギターにバイク、模型、スニーカー、植物など主人の個性によってさまざまだ。
趣味を追求することで生まれる空間と時間、それはミニマリズムの対極にある究極のマキシマリズム。情熱とロマンあふれる特別な部屋を紹介しよう。
(※その他の写真は【関連画像】を参照)
※この記事は2025年10月号に掲載されたものです。
■「細部にまで好きなモノに囲まれていないとダメみたいです」
●内田堅一郎さん/@ken_uchida_garret

●20代で通ったアメリカでヴィンテージに魅了された
自宅1階奥の約10畳。そこがインテリアショップのオーナーである内田堅一郎さんの仕事部屋を兼ねた趣味部屋だ。四方の壁にDIYで造り付けた棚やデスク、窓辺、さらに空中にまで並ぶのはアメリカンな雑貨たちだ。
おもちゃの車、飛行機オブジェ、キャンプ道具、ラジオ、扇風機、文具、果ては使用している虫除け剤までも! 入り口付近にはジュークボックスが鎮座し、何本ものギターやベース、小さな太鼓などの楽器もある。
「趣味が広すぎて」と言う内田さんだが、若い頃から今に至るまで一貫しているのは“アメリカのミッドセンチュリーモダンの気配がたまらなく好き”ということだ。


幼い頃から車好きで、中学生でハーレーのバイクに憧れ、FENで聴く音楽に親しんだ高校時代はバンドを組んでベースを担当し、短期留学で行ったロサンゼルスでは映画などで観ていた通りの景色に圧倒された。
そして大学在学中の20歳からは毎年1~3カ月にわたるアメリカ放浪の旅に出る。ツテで知り合った人の家や車で寝泊まりしながら全米を巡り、気に入ったインディアンジュエリーやヴィンテージ雑貨などを買い集めて、日本で販売するようになったのが現在の仕事に結びついていった。
「アメリカの人たちって意外と長くものを使うんです。メーカーも長い間、生産が終わった品のパーツを供給する。だから手入れもきちんとなされたヴィンテージものがたくさん残っているんですよ」


とくにミッドセンチュリーモダンの品々に惹かれる理由はごくシンプル。かっこいいから、だ。
心惹かれるものは今もなお集め続ける。不具合があれば自身でも修理する。この室内に飾られたものは、おおよそ現役なのだ。おもちゃの車はスムーズに動くようにするし、数十台のラジオも皆使える。
イームズが家具に挑戦する前にデザインしていた木製フレームのラジオも何台もある。そうした品々で音楽を聴き、古風な扇風機で涼み、灯りのつく多数のオブジェも部屋の雰囲気を高める。



ペプシのロゴ入りなど複数のアルミ製クーラーボックスは、仲間が集う際に飲み物を冷やし、時にコールマンやシアーズのランタンとともにキャンプで活躍する。
「性能にはなんら問題ないですし、アルミ製は現代の品より軽くて使いやすいんですよ」
かつてアメリカの食卓で使われたクイックライトも、キャンプサイトで明るい。製造が1930年代で終わっても、光源のマントルは今も変わらず手に入る。内田さんは今はこうした品々を販売はしない。好き過ぎて手離すなどできようもないのだ。そしてもう一つ理由がある。


「昔はどこでも安く買えたような物が、今はコレクターが増えて数十倍にまで高騰しています。アメリカの空気感も変わってしまいました。行っても物がないですし、電気自動車ばかり走る国は今、私が憧れた風景ではなくなってしまいました」
今はアメリカへの興味が薄れてしまったのだという。たまに国内の基地や、アメリカのオークションで見つける以外は、思い出深い品々を大切に愛でる。
飾る棚はアメリカのサイトで購入した板を使っている。なんとなく日本の物とは気配が違う。
「向こうのはインチ規格だからでしょうか」の言葉に、なるほど。
一人ではむろん、友人たちも集まってここで楽しく、良き時代のアメリカに浸る時間が至福だ。

■真空管式にしたジュークボックス
室内には大きなジュークボックスもある。1950年代のAMI CONTINENTAL。沖縄で見つけたそうだ。あちこち修理し、レコード盤も一部は好みのものに入れ替えた。

■とことんアメリカにこだわった部屋
モノだけではなくインテリアもアメリカスタイルを徹底。壁の色、カーペットの質感などはミッドセンチュリーらしいものを選び、棚板はインチ規格のものを取り寄せた。

■ほのかな灯りになるオブジェも多数
飛行機、飛行船、車両などの姿にランプを組み合わせたオブジェは、ミッドセンチュリーに多数作られていたもの。プラスチック素材を通した淡い光が室内のあちこちに。

■タイヤの付いたものに惹かれる
幼少期からの車好き。小学生時代はヨーロッパ車、中学生からはアメ車に。大学にはハーレーで通学していた。トイカーは若い頃から集め続けて、もはや数は把握できない。




●BEST ONE!
大好きな飛行機のヴィンテージ灰皿
飛行機の姿の雑貨はいくつも集めているが、これはなかなか希少かも。1950年代に作られたらしい飛行機ダイキャストの灰皿である。このほかにも飛行機の形をしたライターなど、ユニークな品々を収集。

●ROOM DATA
広さ/16.20㎡
使用年数/5年
趣味/アメリカン雑貨、乗り物
●趣味部屋以外の室内もミッドセンチュリーで
内田さん夫妻が暮らす家は、趣味部屋以外もミッドセンチュリーモダンの雰囲気にあふれる。元は築70年近い和風住宅を、基礎からリフォームしたそうだ。
壁にアート作品が飾られた室内は、内田さんが大好きだった時代のアメリカの住宅を彷彿させる。家具、キッチンの家電、電気のコードやタップまでもアメリカ製を選んだ。


ふんわりとした敷き込みカーペットも心地よい。玄関からDKまでの床はテラゾーという技法を使っている。旧知の左官職人に頼み、内田さん自身で集めたシーグラスを入れてもらった。
「ハワイの友人もわざわざ浜で探してくれたんですよ」
洗面所、バスルームなどもアメリカ製の水栓、タブなどで徹底しているのは清々しいほどだ。
ただし妻子と過ごすLDKは、アメリカンにはこだわっても内田さんが趣味で集めた細かな雑貨は置かない。そこは厳密に分ける。
「自分の部屋で本当に好きなものとともに過ごす時間があるから、それを外側に広げてはいけない」
おおいに納得である。




■経営するショップ内も趣味の品々がどっさり

内田さんにはもう一つの趣味部屋がある。経営する「ギャレットインテリア」の店内だ。
アメリカの古い家電、おもちゃ、時計、ラジオ、ギターなどのヴィンテージ品がここにもどっさりひしめく。だが家具や照明などのインテリア以外は売り物ではない。インテリアの販売を行う内田さんの店はその世界観を伝えるショールームのようにも機能している。
「本当に欲しい人と値段も折り合えば売るかもですが、なかなかそういうケースはないですね」

要するに、自宅からあふれ出た私物なのだ。憧れたハーレーのバイクも、大人になればヴィンテージものにも手が出せる。
タイプの違う数台をここに置き、仕事などでの行き来にも使う。なかにはレース用の1933年製単気筒ハーレーも。公道では走れないそうだが、じつに素敵だ。

ここには友人たちがなにかと集まり、楽器を奏で、飲んで歌って遊ぶ。親しくなった近所の人が参加することもある。
「好きなことだけをしています」という内田さん。決してぶれることのない積み重ねの先に、今の心地のよい日々がある。
●内田さんのインテリアショップ「Garret Interior」
家具や照明などの販売がメイン。客からの要望があれば、例外的に空間デザインなども行う。ミッドセンチュリー家具のヒントが詰まっている。


東京都目黒区上目黒4-1-29 祐天寺スクエア
営業時間/13:00~17:00(入店は~16:30)
定休日/平日、年末年始(臨時休業あり)
アクセス/東京メトロ「中目黒駅」より徒歩約10分
https://garret88.com/
文/秋川ゆか 撮影/森本真哉
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