誰しもが一度は憧れを抱く、自分の好きなモノだけに囲まれた趣味部屋。限られた空間に所狭しと並んだコレクションは、ギターにバイク、模型、スニーカー、植物など主人の個性によってさまざまだ。
趣味を追求することで生まれる空間と時間、それはミニマリズムの対極にある究極のマキシマリズム。情熱とロマンあふれる特別な部屋を紹介しよう。
(※その他の写真は【関連画像】を参照)
※この記事は2025年10月号に掲載されたものです。
■「仕事柄集まった物なので、部屋というよりも下駄箱に近いです」
●高見 薫さん/@kaorutakami
■天井まである棚+鏡が圧巻の室内
部屋は3面が天井まで靴を並べる棚になっていて、低いところは9段、かつてロフトだった最も高い場所では18段ある。左右に鏡をはめ込んであることで棚は一層広く見える。

●コレクションではなく履くためのスニーカー
住まいは普通に洒落た雰囲気の戸建てだ。すっきりとした玄関から2階に上がる。「ここです」と言う高見薫さんに促されてドアを開け、そして一瞬たじろぐ。
天井までぎっしりと並ぶスニーカー。ほとんどがナイキだ。その数は約600足。だが本当はもっとある。
「棚に入り切らないものは別の部屋にも置いてあって、全部でおそらく1500足くらいかも」

中古住宅を購入してリフォームしたのは10年前。ここは子ども部屋だったらしく、中央に仕切り壁があり、共用のロフトもあった。知人の建築家と相談して、壁とロフトを取り去り、棟までの高さを生かして手持ちのスニーカーを置く棚を作ったという。
「建築家には“下駄箱”を作ってほしいと頼みました。履くための靴を入れる棚。だから湿気を取ってくれる木の板を使い、紙箱から靴を出し、さっと取り出しやすいようにかかと側を表にしています」

高見さんは、自分は“コレクター”ではないと言う。では、なぜこんなにも多くのスニーカーが?
じつは高見さんはかつてナイキに勤めていた。その頃の話が面白い。
34年前に就職した頃は自社製品をスニーカーと呼ぶことは御法度だったそうだ。ランニングシューズ、バスケットシューズ、サッカーシューズなど各スポーツ用に特化され、普段に街で履く文化はなかった。
けれども「エア マックス」の大ブームが起き、それが短期間で終息した後の2000年頃からは、ナイキも各種スポーツに合わせた開発とともに、一般向けのカジュアル路線も追求していく。担当していた高見さんのもとには多くの製品や特別な品が集まった。
「そんな歴史を語るスニーカーたちなんです。並んでいる多くは20~25年くらい前のモデルですね」


“履くもの”と考える高見さんは、その日の気分や出先での目的に合せて選ぶ。しかし、長年のうちにソール部が崩壊していくのが悩みだ。
「ソールは10年もすれば確実に傷みます。スポーツ選手は1足を何年も履き続けることはないからいいんですけれど。私は履けないスニーカーはどんどん捨てたいんですが、貴重なものも多くて」
展示会や写真撮影用に古い品の借り出し要望も多く、保管し続けるしかないそうだ。しかし、そうして残してあるからこそ語れる歴史がある。1足ごとに高見さんの人生の物語がある。その凝縮された姿こそが、この部屋なのだ。




■種類別で整頓して見た目もスッキリと
棚のスニーカーは、種類ごとにまとめている。色やデザインの展開がわかりやすく、見た目も雑然としない。履くときに取り出しやすいよう、かかとを外側にして並べている。

■スニーカーの大敵「加水分解」
ソールのプラスチック素材が空気中の水分と反応して徐々に劣化し、分解していく現象。ゴムだけのソールだと起きにくいが、怪しいと思う前から確認することが大切だ。

■こうなるのを遅くするためには?
保管中の湿気を避けるため、しまい込まずに時々チェック。さらに履くことで体重がかかり、水分が多少抜ける。汗や皮脂からの劣化を軽減するために、靴下の着用や着用後の乾燥がお勧め。箱に入れっぱなしは要注意!

●BEST ONE!
お気に入りの「エア リフト」
着脱がラクでよく履く。元々裸足で走るケニアのランナーから着想を得て、デザイナーが日本の工事現場で地下足袋を見たことで開発。これは2009年発表のケニア国旗カラー。

●ROOM DATA
広さ/19.8㎡
使用年数/10年
趣味/スニーカー
文/秋川ゆか 撮影/森本真哉
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