主要先進国と比べて、日本の「労働生産性」が低いことは知っているだろうか? 労働生産性とは、労働者1人あたりが生み出す成果、もしくは労働者が1時間で生み出す成果のことだ。
日本の生産性そのもの(GDP)は他国と比較して上位に食い込んでいるのだが、労働者1人あたりの労働時間が異常に長い。つまり、端的に言えば労働のやり方が非効率で、企業にとって無駄が非常に多いということだ。
そこで今回は、日本とアメリカのビジネスに対する考え方の違いを主軸として、日本の労働生産性が低い原因を探っていく。
■日本の「労働生産性」はかなり低い
日本の「労働生産性」は、主要先進国と比べるとかなり低い。労働生産性とは、労働者1人あたりの仕事の効率性を表すものだ。
公益財団法人 日本生産性本部は、2021年12月17日に「労働生産性の国際比較 2021」を公表した。この比較によると、2020年における日本の時間あたりの労働生産性は、49.5ドル(5,086円)でOECD加盟38カ国中23位であった。
一方、日本の生産性そのもの(GDP)は、他国と比較してかなり上位に食い込んでいる。IMF(国際通貨基金)が発表した2021年の世界各国GDPランキングでは、アメリカ、中国に次いで日本は世界第3位を獲得している。
なぜ日本は労働生産性が低いのにGDPは高いのだろうか? それは、従業員の長時間労働によって生産量を高めているためだ。裏を返せば労働のやり方が非効率かつ、仕事の無駄がひたすらに多いとも言える。
また、長時間労働によって日本の労働者が疲弊しており、肉体的・精神的にストレスが大きいというのも、労働生産性の低さに関係しているとされる。
日本における労働生産性の低さは理解できたと思うが、この問題を解決する方法はないのだろうか?
この問題を解決に導くためには、働き方やビジネスに対する考え方を見直す必要がある。働き方や考え方の比較として、アメリカ企業を例に挙げて解説していく。
■日本とアメリカにおけるビジネスの違い
日本とアメリカにおけるビジネスでは、働き方や仕事に対する考え方が大きく異なる。それぞれの違いを詳しく見ていこう。
【日本のビジネス】
日本のビジネスは、組織としての在り方を強く意識する傾向がある。年功序列制度や終身雇用制度などが代表的だ。
また、従業員個人のスキルにはあまり注目されず、上司に気を遣う能力や人付き合いの能力など、組織に適応する能力が求められる。
そのため、日本のビジネスにおいては、「結果」よりも「過程」を評価する企業が多いように思える。近年では考え方や働き方が見直されてきているのだが、大企業や一部企業ではまだまだ根強く残っている。
【アメリカのビジネス】
アメリカのビジネスは個人主義の意識が強い。一般的には個人スキルが評価対象となり、「過程」よりも「結果」を出すことが求められる。
また、仕事の給料はビジネスへの貢献度によって定められることが多く、金額に対しても日本よりシビアである。
このように、アメリカのビジネスでは日本企業のような「組織行動」を主とする考え方とは異なり、労働者個人が積極的にビジネスに取り組んでいる。
■日本企業が取り入れるべき2つのポイント
「アメリカ企業のやり方が絶対!」というわけではなく、日本とアメリカにはそれぞれの良さが存在する。本項では、そのアメリカの良さを具体的に紹介していく。
【会議が効率的かつ有意義】
アメリカ企業の会議では儀礼的なものは基本的に行わない。すぐに本題へと入るため、効率的に会議を進められる。
また、あらかじめ会議の下準備をしている場合が多いため、スムーズに会議を進行させることができる。会議の本題であるホウレンソウのほかにも、ディスカッションなどを実施して生産性を高めている。
【時間管理に対してシビア】
アメリカのビジネスでは時間管理に対して非常にシビアである。結果に結びつけるため、プライベートを充実させるため、などの理由から、決められた時間内に業務を終わらせようとする意識が強い。
日本企業のような「残業=やる気がある」という考えは存在せず、定時になったら退社をするのが一般的である。彼らはそのための努力を惜しまないのだ。
■まとめ
本記事では、日本とアメリカのビジネスに対する考え方の違いを主軸として、日本の労働生産性が低い原因を探った。
日本のビジネスは組織としての在り方を強く意識する一方、アメリカのビジネスでは個人主義の意識が強い。
やはり日本の労働生産性が低い原因としては、ビジネスに対する考え方の違いが大きいのではないだろうか? もちろん、これはすべての企業に言えることではない。
なお、日本とアメリカにおける働き方・考え方の違いは、今回紹介したものだけではない。原因や解決方法を明らかにしたい人は、ぜひアメリカのビジネスについて深く調べてみてほしい。