108421旧横浜市庁舎が“泊まれる文化遺産”に。OMO7横浜で味わう「ハマイズム」の一夜

旧横浜市庁舎が“泊まれる文化遺産”に。OMO7横浜で味わう「ハマイズム」の一夜

合同会社エーライト
菅堅太(エーライト)
目次

横浜を訪れると、多くの人はみなとみらいの夜景や赤レンガ倉庫、中華街へと向かう。しかし、この街の魅力はそれだけではない。関内や野毛には、開港以来の歴史や文化、人々の暮らしの記憶が今も色濃く残っている。

2026年4月に開業した「OMO7横浜 by 星野リゾート」は、旧横浜市庁舎行政棟を活用したレガシーホテル。建築を楽しみ、街を歩き、ジャズに耳を傾けながら過ごす時間の中には、“観光地としての横浜”とは少し違う、この街の奥深い表情が広がっていた。

旧横浜市庁舎を受け継いだ「OMO7横浜」という滞在拠点

OMO7横浜は、JR「関内駅」前に誕生した大型複合街区「BASEGATE横浜関内」の中核施設として開業した。最大の特徴は、2020年まで横浜市役所として使われていた旧横浜市庁舎行政棟をリノベーションし、ホテルへとコンバージョンした点にある。

コンセプトは「気分上々、ハマイズム」。総支配人・羽毛田実氏によれば、横浜は開港以来、海外から入ってきた文化や食を自分たちの暮らしに落とし込み、新しいカルチャーとして発信し続けてきた街だという。

関内周辺には、昭和の空気を残す喫茶店や昔ながらの飲み屋街が今も残る一方で、新しい感性の店も自然に溶け込んでいる。OMO7横浜は、そうした“新旧が混ざり合う横浜らしさ”をホテル全体で表現しているように感じられた。

館内に残る“横浜の記憶”を歩く

ホテルに入ってまず目を引くのが、1階から2階へ伸びる大階段だ。この階段は、旧横浜市庁舎の市民広間にあった大階段を移設・再現したもの。下から8段目までは実際に旧市庁舎で使われていた階段を再利用しており、両サイドの木製手すりも当時のものがそのまま使われている。

緩やかな曲線を描く手すりには、長年使われてきた傷や跡も残る。新品では出せない“時間の積み重なり”が、空間に独特の説得力を与えていた。

さらに興味深かったのが、館内各所に使われている「数字デザイン」だ。

エレベーターの階数表示や客室番号には、村野藤吾氏が旧市庁舎時代にデザインした数字フォントが使われている。しかし、旧市庁舎は8階建てだったため「0」と「9」の数字が存在しなかったという。

そこで今回、村野氏の弟子である鈴木志朗氏が「村野先生だったらどうデザインするか」を想像しながら、新たに「0」と「9」を制作。過去の意匠を単に保存するだけでなく、“思想を継承する”という姿勢が細部から伝わってくる。

館内には、単なる保存ではなく“歴史を現代へつなぐ”という考え方が一貫して流れているように感じられた。

“やぐら”が生む、想像以上に開放的な客室空間

今回宿泊したのは、「やぐらスイート」と呼ばれる客室だ。入口に立った瞬間はややコンパクトな印象を受けたが、室内へ足を踏み入れると印象は一変。OMOブランドで特徴的な“やぐら”構造によって視線が上へ抜け、実際の面積以上に広く感じられた。

ソファスペースやダイニングにもゆとりがあり、複数人でも窮屈さを感じにくい。館内は靴を脱いで過ごすスタイルのため、自宅の延長のようにリラックスできる点も印象的だった。

さらにOMO7横浜では、愛犬と泊まれる“愛犬ルーム”も展開。ホテル周辺にはペットと散歩しやすいエリアも多く、“ご近所マップ”では愛犬と立ち寄れるスポットも紹介しているという。

3階の愛犬専用フロア「OMOドッグガーデン」には、屋内ドッグラウンジと屋外ドッグランを完備。屋外ドッグランは5時30分〜22時まで利用可能で、リードや予約が不要だ。屋内ラウンジは24時間利用でき、ソファにはリードを留めるフックも設置されている。

ラウンジ内では飲食も可能で、ドッグフードを温める電子レンジまで用意されているというから驚きだ。歴史建築を活かしたレガシーホテルでありながら、愛犬との滞在まで快適に楽しめるよう工夫されていた。

OMO7横浜から、“ハマの文化”を歩く

OMOブランドの特徴は、“街を楽しむホテル”であること。OMO7横浜でも、スタッフ「OMOレンジャー」が街歩きや地域文化を深掘りするアクティビティを展開している。

その一つが、「野毛ホッピングセレクション」だ。

野毛は、戦後の闇市から発展した飲み屋街。現在では約600軒以上の飲食店が並ぶ、日本屈指のディープエリアとして知られている。

OMOレンジャーたちは、「ハシゴ酒を愛すべし」「繋がりを大切にすべし」といった“野毛の三箇条”を交えながら、おすすめ店を紹介していく。単なるグルメガイドではなく、“街との付き合い方”まで提案しているのが面白い。

翌朝には「横浜レガシーウォーク」にも参加。関内エリアに残る歴史的建築や街の成り立ちを、OMOレンジャーの解説とともに歩いて巡るアクティビティだ。

旧市庁舎だけでなく、周辺には開港以降の横浜の歴史を感じさせる建築や文化が数多く残っている。観光スポットを効率よく巡るのではなく、“なぜこの街並みが生まれたのか”を知りながら歩くことで、横浜という街の見え方が少し変わってくる。

また、1階に設置された“ご近所マップ”を参考に関内周辺を歩いてみると、横浜の奥深さが少しずつ見えてくる。

立ち寄った「コーヒーの大学院 ルミエール・ド・パリ」は、日本大通りエリアの重厚な街並みに溶け込む1974年創業の老舗喫茶。クラシカルな外観からは、“横浜らしい洋風文化”の名残が感じられた。

続いて「みのや本店」で購入した、しゅうまいそっくりの和菓子「シウマイ饅頭」にも、港町らしい遊び心が詰まっている。

最近の横浜は、“みなとみらい”のイメージが先行しがちだ。しかし関内周辺には、開港以来の歴史や文化、人々の暮らしが今も色濃く残っている。

観光名所を巡るだけでは見えてこない、“生活と文化が混ざり合う横浜”が、このエリアにはあった。

ジャズと夜風に浸る「気分上々、ハマナイト」

夜は、OMO7横浜の象徴的イベント「気分上々、ハマナイト」へ。

この日は天候の影響もあり、ジャズの生演奏は館内で実施。OMOレンジャーがDJ風に横浜文化を紹介しながら、ジャズのリズムや楽しみ方をレクチャーしていく。

生演奏では『Take the ‘A’ Train(A列車で行こう)』『Just the Two of Us(クリスタルの恋人たち)』『The Way You Look Tonight(今宵の君は)』といった名曲が披露され、会場にはゆったりとした空気が流れていた。

横浜は、日本におけるジャズ文化の発信地の一つでもある。関内周辺には老舗ジャズクラブも多く、街に音楽文化が深く根付いている。

演奏後には、屋上の「HAMAKAZEテラス」へ(*注釈)。天候も落ち着き、夜風が心地よく吹き抜けていた。

テラスではクラフトビールと軽食を片手に、関内エリアの夜景をゆったりと楽しめる。目の前には横浜スタジアムのライトが浮かび、その周囲には雑多な街の灯りや電車の走行音が混ざり合う。

洗練されたベイエリアとはまた違う、人の気配が近い“関内らしい夜”。ジャズの余韻に浸りながら浜風を感じていると、観光地としての横浜ではなく、“暮らしと文化が混ざり合う港町”としての横浜が、少しずつ見えてくるようだった。

(*注釈)通常、雨天・荒天などの理由から「気分上々、ハマナイト」が屋内開催になった場合、HAMAKAZEキッチンの運営は中止になります。

食事まで“横浜らしい”。OMOダイニングとOMOベーカリー

食の体験にも、横浜らしさが散りばめられている。

OMOダイニングでは、横浜発祥とされるナポリタンをはじめ、オマール海老を使った麻婆ポットパイ、スパイシーなラム肉の赤い餃子など、洋食と中華が交差するメニューを展開。港町・横浜らしい多文化性を感じさせる内容だ。

さらに印象的だったのが、「OMOベーカリー」で体験した“パン飲み”だ。OMOブランド初となるベーカリー業態で、昼はベーカリー、夜はパンと酒を楽しむ空間へと表情を変える。

今回いただいたのは、「ワイン泥棒のチーズトースト」とスパークリングワインの組み合わせ。香ばしく焼き上げたトーストの上には、パルミジャーノがふんだんに盛られ、その下にはクルミやパテが隠れている。

チーズの濃厚なコクに胡桃の食感、パテの塩気が重なり、自然とワインが進む。港町・横浜らしい“大人の寄り道”を楽しめる空間になっていた。

横浜を“観光地”ではなく、“文化”として味わうホテル

OMO7横浜は、単に宿泊するためのホテルではない。旧市庁舎の建築を受け継ぎ、関内や野毛の文化へと宿泊者を導き、ジャズや喫茶、街歩きまで含めて“横浜らしさ”を体験させてくれる場所だ。

みなとみらいの煌びやかな景色も横浜の魅力だが、この街にはそれだけでは語れない歴史や暮らしがある。建築の曲線に目を留め、野毛で一杯飲み、ジャズに耳を傾けながら夜風を感じる。

OMO7横浜は、そんな“もう一つの横浜”へと誘ってくれる滞在拠点だった。

【ホテル詳細】
ホテル名:OMO7横浜 by 星野リゾート
住所:神奈川県横浜市中区港町1-1-1
宿泊費:1泊1室36,000円〜(2名利用時、食事別、税込)
チェックイン・アウト:15:00・11:00
公式サイト:OMO7横浜 by 星野リゾート

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合同会社エーライト

代表は1992年、大阪府出身。出版社、編集プロダクションで書籍・雑誌の制作に携わり、独立後の2019年には記事制作会社「合同会社エーライト」を設立。月刊誌『男の隠れ家』の編集としてお世話になった経緯もあり、現在は「男の隠れ家デジタル」でも記事制作を行っている。

仕事ばかりしすぎて「趣味ってなんだっけ?」と思いつつも、取材先やネタ探しで出会うものに影響を受けがち。毎年のように和歌山でワーケーションを行ってるほか、最近は別府温泉にハマり、半年で4回も訪れるほど。生粋のキッチンドランカー。

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