70709ヴィオロン|こだわりのシステムが生むコンサートホールのような音響。

ヴィオロン|こだわりのシステムが生むコンサートホールのような音響。

男の隠れ家編集部
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■機器も部屋も全て自家製。音にこだわる名曲喫茶

重厚な雰囲気の店内は、段差のついたユニークな構造。

客として通っていた中野の名曲喫茶「クラシック」で、「レコードを聴かせる喫茶店とは何たるか」を仕込まれた寺元健治さんが「ヴィオロン」をオープンしたのは昭和55年(1980)12月。当初は喫茶店ではなくスピーカーメーカーの試聴室になるはずだったという。

「スピーカーの試聴室にわざわざ足を運ぶ人は、そうおいそれとはいないはず。それなら珈琲でも出して喫茶店という形を取れば、結果的に音を聴いてもらう機会も増えるのでは」という「クラシック」の店主からの助言が名曲喫茶を始めるきっかけになったそう。

寺元さんのこだわりは、レコードを再生する環境全てが自作ということ。アンプやスピーカーはもとより、店内のつくりも全部が寺元さんの手によるものなのだ。そのほとんどの材料はフランス製で、自家製の真空管アンプの回路に使う古い抵抗器は、お目当てのものを探した挙げ句、現地で捨てられかけていたものを段ボール2箱まとめ買いしたそうだ。まさにここは“音の実験室”。

また中央の席を一段下げ、スピーカーをさらに一段低い場所に設置することで、コンサートホールと同様の箱鳴りを効率よく発生させているという。

実際に音を再生してみると、確かにホールでオーケストラピットの生演奏を聴いているかのような錯覚を体感できた。部屋を含めた高効率の音響システムを、自らの手で作り上げた寺元さんには脱帽だ。

世の中はCDはおろか、サブスクで好きな音楽が聴き放題のデジタル全盛期。そんなご時世に、なぜトランジスタ以前の真空管にこだわるのか、その理由を寺元さんに聞くと「昔の名曲喫茶は、真空管のアンプでレコードを再生して聴かせるのが鉄則。その文化を遺したい」と迷いのない真っ直ぐな視線で回答が返ってきた。

だが一方で、「後継者がいないんです。とにかく続けられる限りやるしかないですね」と淋しそうに語る寺元さんの姿が印象的だった。

真空管アンプは1930〜40年代のパーツを使用し自作している。
カウンターの奥にはプレイヤーと真空管アンプが置かれる。カートリッジの上にコインを乗せて針圧を増すこだわりよう。

■店主とっておきの一枚

ベートーヴェン:交響曲第5番・第8番
ハンス・シュミット=イッセルシュテット
レーベル/LONDON

ベートーヴェンとモーツァルトが好きという寺元さん。発売当時評判を呼んだハンス・シュミット指揮、ウィーン・フィルによる演奏を収録した名盤をチョイス。

■音響機材

レコードプレーヤー:Garrard 301
アンプ:オリジナル
スピーカー:オリジナル

ヴィオロン
昭和55年(1980)創業
東京都杉並区阿佐谷北2-9-5
TEL:03-3336-6414
営業時間:12:00~23:00
定休日:火曜
席数:テーブル30席
アクセス:JR「阿佐ヶ谷駅」より徒歩約5分

文/小畑彰弘 撮影/遠藤 純

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