

■世界遺産にも登録された厳しくも美しい自然

北海道・知床が1年の中で最も美しい季節を迎えつつある。
知床という地名は、アイヌ語で「大地の突端」を意味するシリ・エトクに由来する。そこには「地の果て」のようなニュアンスを含んでいるようにも思われる。北海道最東端に角のように突き出した細長い半島だ。


知床の自然は圧倒的である。火山活動と流氷によって形成された雄大な自然の景観は険しく、厳しい。そしてため息が出るほど美しい。そこに生息する野生生物の多様性にも特徴がある。世界的に希少な種も少なくないという。
昭和39年には知床国立公園に指定、平成17年にはユネスコの世界自然遺産にも登録されている。
■流氷が多様な生物を育み自然の豊かさの源に

知床半島のオホーツク海沿岸は、間もなく流氷の季節を迎える。
極東の大河アムール川がオホーツク海へと注いだ淡水が氷結し、大きく成長しながら南下してくるのが流氷だ。知床は流氷が毎年接岸する世界最南端の地である。
流氷がその白く神秘的な姿をオホーツク海沿岸に見せるのは、例年1月下旬頃。接岸は2月上旬から中旬にかけて。見頃を迎えるのは2月中旬から3月上旬のことだ。

流氷は美しいだけでなく、知床の自然の豊かさの源でもある。流氷は「アイスアルジー」と呼ばれる多量の植物プランクトンを育み、それを底辺に食物連鎖を形成。海には鮭やマスなどが育ち、その魚を求めて大型の海生哺乳類が現れる。流氷の上でアザラシが子育てする様子を見られることもあるとか。流氷の時期は渡り鳥の季節でもある。世界最大級の猛禽類、オオワシが見られるのもこの頃だ。
●ネイチャーガイド
山崎 誠さん

知床の大自然を野生動物ウォッチングツアーで堪能ください。必要な装備は貸し出しを行っているので手ぶらでOKです。


「原生林スノーシュー&野生動物ウォッチングツアー(大人6500円)ではエゾリスやエゾシカが見られます」(山崎さん)。


左/ドライスーツを着用して流氷の上を歩きながら学ぶ、流氷ウォーキング360°(大人・小人6000円)。右/ドライスーツを着用して流氷と同じ目線で浮遊体験。
ピッキオ知床
TEL:0152-26-7839
https://shiretoko-picchio.com/jp/
●知床世界遺産センター

「オオワシは翼を広げると240cmにもなります」と、知床世界遺産センターの向山純平さん。

「知床は夏も美しいです」と向山さん。左の群生がエゾノツガザクラ(ピンク)とアオノツノザクラ(白)。右はチングルマ。


北海道斜里郡斜里町ウトロ西186-10
TEL:0152-24-3255
開館時間:夏期(4月20日~10月20日) 8:30~17:30、冬期(10月21日~4月19日) 9:00~16:30
休館日:夏期無休 冬期火曜日、年末年始(12月29日~1月3日)
http://shiretoko-whcc.env.go.jp/
■鮭の水揚げ日本一を誇る斜里町ウトロ漁港を訪ねる

漁を終えた漁船が次々と港へと戻ってくる。船倉を鮭でいっぱいにした漁船が接岸すると、すぐに水揚げが始まった。船員たちはクレーンとタモ網を巧みに操り、鮭を水揚げしていく。例年9月から11月は漁もたけなわ。斜里町ウトロ漁港では毎日そのダイナミックな光景を見ることができる。
斜里町ウトロは知床半島のオホーツク海に面した港町だ。世界自然遺産「知床」の玄関口であると同時に、日本でも有数の定置網漁を中心とする沿岸漁業の拠点としての役割を担っている。特に当地ではサケ・マス定置網漁が盛んに行われていて、斜里町は鮭の水揚げ18年連続日本一を誇る。



流氷がもたらす恵み豊かな海。鮭の産卵に適した川も多い。さらに斜里町では、鮭の遡上を妨げるダムを迂回する魚道の確保や、人工孵化の推進など、漁獲量を安定化させるため町を挙げての取り組みが行われているという。
とにかく水揚げされたばかりの鮭を食べてまずいわけがない。ウトロに来たなら獲れたての魚介類をぜひとも味わいたい。

●OYAJI
ウトロの網元・古坂彰彦さんが11月にオープンさせたばかりの「OYAJI」。食事を楽しみながら漁の話を聞いてみたい。品書きは当日水揚げされた魚次第、何が出てくるかは行ってみないと分からない。

ウトロならではの食材でもてなす漁師の店「OYAJI」のメニューの一例。左が「鮭とホッケのスティック揚げ」。右上が「鮭の漬けご飯」。右下が「鮭の肝(心臓)と中(胃袋)のピリ辛炒め」。どれも古坂さんが漁の合間に考案したオリジナルメニュー。



北海道斜里郡斜里町ウトロ西111
TEL:0152-22-5207〈協和漁業部〉
■地元・知床の食材にこだわった和食処



※価格は変更になる場合があります。
知床の玄関口である斜里町の国道244号線沿いで営業する「しれとこ里味」は、バイクツーリング愛好家の間でも評判の食事処。地元の自然素材にこだわった和食が満載だ。
お勧めはなんといっても地魚料理。正直、どれを選んでも間違いないが、迷ったらぜひ「銀がれい味噌焼定食」を注文してほしい。脂が乗った知床産カラスガレイ(銀がれい)の身が、口の中で身がほろりとほぐれる食感は絶品だ。ちなみにこの「銀がれい味噌漬」は、オホーツクブランド「プレミアム認証商品」にも認定されている逸品だ。
●しれとこ里味

北海道斜里郡斜里町新光町64-1
TEL:0152-23-2220
営業時間、定休日は要問合わせ
https://shiretokosatomi.com/
■即興ライブもOK 知床の音楽好きが集まるバー

自然との触れ合いだけが知床の魅力ではない。斜里の街中にはスナックやバーなど、大人の夜が楽しめる店も少なくない。その中で地元の音楽好きが集まるバーが「ZERO」だ。演奏機材を完備しているので、メンバーさえそろえばジャンルを問わず即興ライブが可能だ。ライブのない日には静かに会話を楽しむこともできる。


ちなみに斜里町では道外の企業を対象としてワーケーションの誘致に積極的に取り組んでいる。テレワークの拠点として開設された「しれとこらぼ」からほど近い「ZERO」には、仕事を終えて気軽に立ち寄るテレワーカーもいるとか。地元客と気軽に交流できるアットホームな雰囲気だ。
●LIVE SPORT ZERO
北海道斜里郡斜里町本町39-12
TEL:0152-26-7206
営業時間、定休日は要問合わせ
■知床の海を眺めながら温泉・サウナ三昧

オホーツク海を見渡すことができる宿でくつろいだ。お目当てはサウナと温泉。サウナは大海原を眺めながら心と体を整えることができる。最上階の展望大浴場では、肌触りの良い湯が楽しめる。

知床の味覚を楽しむ「テラスダイニング波音」も好評だ。和食・洋食にとらわれない新しい食事スタイルを「知床ブッフェ」として提供。知床の旬の食材を使ったライブキッチンやオープンキッチンの出来たて料理の数々が楽しめる。




※「テラスダイニング波音」は3月上旬リニューアルオープン予定。
●北こぶし知床 ホテル&リゾート

北海道斜里郡斜里町ウトロ東172番地
TEL:0152-24-2021
2名1室2食付き料金(1名料金)3万1000円〜(税別)
※オホーツク倶楽部・露天風呂付DXツイン利用の場合
https://www.shiretoko.co.jp/
撮影/遠藤 純 文/仲武一朗 取材協力/知床斜里町観光協会
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