76650本当の贅沢とは? ゆっくりと時間が流れる神戸の里山を訪ねる

本当の贅沢とは? ゆっくりと時間が流れる神戸の里山を訪ねる

合同会社エーライト
菅堅太(エーライト)
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東京での生活は、都会ならではの便利さはもちろんさまざまな人との出会いにも恵まれ、刺激的な日々を送れている。しかし、平日はいつも仕事のことを考え、土日も心が休まる時がない。

(※神戸市北区の雰囲気は【関連画像】を参照)

そんな時に知り合いから勧めてもらったのが神戸市だ。横浜のようなシャレた街並みを想像していたが、今なお里山の風景が広がっているエリアもあり「疲れた心にピッタリかも」と言うのだ。今回は心の癒しを求めて、同地を訪ねてみることにした。

■神戸市の北区へと向かう

兵庫県の神戸市といえば、神戸ルミナリエや六甲山などが有名だが、山側にある北区を訪ねる人は多くないだろう。

東京から神戸までは、新幹線で3時間弱。今回の目的地である北区は新神戸駅から車で30分ほどの場所にある。新神戸駅から北へと進んでいくうちに少しずつ山の印象が強くなり、同じ神戸とは思えない景観が広がってゆく。

■会席料理のランチに舌鼓を打つ

里山のドライブを楽しんでいたら、いつの間にか昼飯時。ランチを食べるため、「ごはんやさん キモリ」を訪ねることにした。同店は里山の景観に溶け込むようにひっそりと建っており、道中の看板を見逃すと辿り着けなかったかもしれない。

「このお店は、奥さんの実家の納屋を改装して造ったんです」と話してくれたのは、店主の木全(きまた)浩治さん。

もともとは東京で調理師として働いていたが、「田舎で子育てをしたい」と、奥さんの育った淡河町に家族で移住することを決めた。実際に神戸で暮らしてみると、家庭と仕事のバランスが整い、気持ちも楽になったと言う。

キモリのランチメニューは「キモリ膳」と「キモリ天丼」から選ぶことができ、いずれも旬の食材を活かした料理だ。店主の木全さんは東京や海外で会席料理を作ってきた料理人だと伺ったので、「キモリ膳」をいただくことにした。

隣の畑でとれた白米をはじめ、お椀はハクサイのすり流し、そして副菜には菜の花のお浸しや、ちぢみほうれん草の胡麻和えなどが膳を彩る。地のものを使った品々は、見ているだけで美味しさが伝わってくる。

木全さんによると、淡河エリアでは程よく育った新鮮な食材が販売されているため、控えめな味付けでも十分に美味しさを感じられると言う。一品一品、丁寧に調理された会席料理は、食材の旨みだけでなく料理人の優しさも伝わってくるかのようだ。

【詳細情報】
住所:兵庫県神戸市北区淡河町萩原696
営業時間:木・金は11:00〜L.O.14:00、土・日は11:00〜L.O.16:00まで
公式SNS:ごはんやさん キモリ

■お試し移住が可能な「一十土」に宿泊

今回の旅はのんびり過ごそうと考えていたため、昼食後は一棟貸しの古民家「一十土(いっとうち)」へと車を走らせる。

六甲北有料道路・大沢(おおぞう)ICからほど近く、車で5分ほどの場所にショッピングモールの「神戸三田プレミアム・アウトレット」もあるため、アクセスのしやすさや利便性は申し分ない。

一十土の外観は、まさに古民家と言えるものだったが、中に入ってみると和モダンな雰囲気にあふれている。

「築100年の古民家を改修したんですが、その際に玄関からの一面を土間にしました」と話してくれたのは、管理人の吉田さん。以前は東京で働いていたが、神戸市北区の地域おこし協力隊への応募を機に、2019年に同地に移住したと言う。

現在、一棟貸しを行なっているのは週末のみ。というのも、宿泊者に貸す時以外は吉田さん夫妻と愛犬がここで生活しているためだ。

将来的にはコワーキングスペースとしての開放も視野に入れており、通信環境を整えてオンライン会議用の個室も用意されている。

寝室を出るとウッドデッキがあり、古民家のすぐ下を通る坂を降って行くと畑もある。「日本初かもしれませんが、“菜園付きコワーキングスペース”として活用したいですね」と話す吉田さん。

古民家をベースにさまざまな体験・機会が生み出されてゆく一十土。吉田さんの話しを聞いていると、ワクワクした気持ちになってくる。

一十土ではキッチンを借りて自炊できるため、お好み焼きを作ることにした。道の駅で買ったヤマノイモを入れたため、ふわふわの仕上がりに。また、せっかく兵庫に来たのであれば、兵庫の酒造好適米「山田錦」が使われた地酒も忘れてはいけない。

静かな空間でゆっくりと料理や食事を楽しむのはいつぶりだろうか……。宿の周囲には街灯が少ないため、都会よりも暗く感じる。里山の自然や時の流れを感じながら過ごすひと時は、都会では味わえない贅沢かもしれない。

【詳細情報】
住所:兵庫県神戸市北区大沢町上大沢2147-10
宿泊予約:一十土(Airbnb)

■ほかにも見所がたくさん

神戸市北区へ訪ねてみると、思っていた以上に歴史や見所のあるエリアだとわかった。おすすめのスポットをいくつか紹介しよう。

●進化を続ける空間「淡河宿本陣跡」

北区の淡河町にある「淡河宿本陣跡」は、歴史的にも価値のある建物だ。淡河町は、かの豊臣秀吉が有馬温泉へ向かうため宿場町として整備された町。そして、淡河宿本陣跡は江戸時代の大名や殿様が滞在した宿と言われており、数百年が経った今でも往時の姿を残している。

ちなみに、実写映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』のロケ現場としても使われ、多くのファンが訪ねて来るそうだ。

かつては宿として使われていたが、現在はイベントやカフェなど地域の人が集まる場所として開放されている。建物内には座敷やこたつも用意されているため、旅の休憩に立ち寄ってみても良いだろう。

【詳細情報】
住所:兵庫県神戸市北区淡河町淡河792-1
営業時間:11:00〜16:00
公式HP:淡河本陣宿跡

●関西一美味しいベーグル!? 「はなとね」

知人から「関西で一番美味しいベーグル」と教えてもらったのが「はなとね」だ。築200年以上の古民家を店舗として利用しており、イートインは座敷や縁側を利用できる。

「バジル&チーズ」と「抹茶にホワイトチョコ」を注文したが、めちゃくちゃウマかった。外はカリッ、中はフワッとしているため、食感が楽しい。バジルや抹茶など、ベーグルごとの香りは強すぎず、口の中で優しく広がってゆく。

はなとねでは、安心・安全の食べ物を提供するため、素材には全て国産のものを使用しているという。また、アレルギーの方も食べられるよう、乳製品や卵を使わないほか、米粉の蒸しパンなども用意している。

食べてくれる人への思いやりが、ベーグルや蒸しパンにも現れているかのような味わいだった。

【詳細情報】
住所:兵庫県神戸市北区淡河町神田143-2
営業時間:11:00〜16:00
公式HP:はなとね

●秀吉が愛した名湯「有馬温泉」

“金の湯”と“銀の湯”で有名な有馬温泉も、神戸市北区にある。立ち寄りで公衆浴場を訪ねてもよし、ご当地グルメを楽しんでもよしの観光スポットだ。

ちなみに有馬で有名な「炭酸せんべい」は、ぜひ味わってもらいたい一品。焼き立てのせんべいは、 “固まる直前”と“固まってから”の食感の変化が楽しめる。

温泉情緒あふれるレトロな景観を楽しみながら、のんびり散策しても良いだろう。

【詳細情報】
住所:兵庫県神戸市北区有馬町

■まとめ

自然あふれる環境でゆっくりと過ごしているうちに、日々の疲れを忘れ、心からリラックスできたのは言うまでもない。1泊2日の短い旅ではあったが、「神戸市」と一括りにはできない魅力を実感した。また、意外にも移住する人が多かったのには驚かされた。

大阪や兵庫から車で30分ほどでアクセスできるため、帰阪あるいは旅行のタイミングでまた訪ねてみたいと思う。

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合同会社エーライト

代表は1992年、大阪府出身。出版社、編集プロダクションで書籍・雑誌の制作に携わり、独立後の2019年には記事制作会社「合同会社エーライト」を設立。月刊誌『男の隠れ家』の編集としてお世話になった経緯もあり、現在は「男の隠れ家デジタル」でも記事制作を行っている。

仕事ばかりしすぎて「趣味ってなんだっけ?」と思いつつも、取材先やネタ探しで出会うものに影響を受けがち。毎年のように和歌山でワーケーションを行ってるほか、最近は別府温泉にハマり、半年で4回も訪れるほど。生粋のキッチンドランカー。

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