【プロフィール】団長安田 (安田大サーカス)
昭和49年(1974)、兵庫県西宮市生まれ。高校卒業後、芸人を目指して活動。平成13年(2001)、HIRO、クロちゃんとお笑いトリオ「安田大サーカス」を結成する。自転車芸人として知られ、各地のロードレ―スに参加する。平成24年(2012)には実業団チームの入団テストに合格。芸人初の実業団登録選手に。最近ではトライアスロンにも挑戦するほか、交通安全のイベントにも参加。公式Twitterを随時更新中(@dancho_yasuda)

浮いてるような感覚にハマって、気がついたらロードバイクの虜に

自転車芸人として知られる安田大サーカスの団長安田さん。都内にある自宅は、まず1階の入り口兼ビルトインガレージが自転車コレクションのためのスペースになっている。

愛車ルノーカングーと共に奥さんのクロスバイクやお子さんたちの可愛らしい自転車。圧巻は天井付近にディスプレイされたロードバイクなど5台の自転車だ。最も思い出深い自転車が、手前にあるトレックのロードバイク。団長安田さんの自転車芸人人生はこの自転車から始まった。

手前がトレックのロードバイク。
ガレージ上部には収納棚を設置。

「平成18年(2006)に関口宏さん司会の『東京フレンドパーク』に出演して、賞品としてもらいました。20万円くらいする本格的なロードバイクですが、当時はまだ乗りこなせなかった。ママチャリと交換してもらおうと自転車屋に行ったら、良い自転車なのでぜひ乗ってくださいとお店の方に説得されて」

実際にロードバイクに乗り始めると、その性能の素晴らしさに気付くのに時間はかからなかった。「乗っているというよりも、浮いているという感覚。地面との摩擦面を感じない。上りも軽くてスイスイ走れる。すっかりハマってしまい自転車の虜に。仕事でテレビ局に行く時の通勤用として乗り始めたんです」。

しばらくすると自転車雑誌から連載の依頼が来た。各地の坂を自転車で登るという企画だ。

「坂といっても3回目は青梅(おうめ)に連れていかれて、本格的な峠登りだった。 ドッキリじゃないかと疑ったくらい(笑)。必死になって上りを20㎞も走 って、頂上に着いたらしゃがみ込む くらい辛かった。連載は続いてヒルクライムレース(登坂競技)に出ることになった。どうしたら楽に走れるかと考えた結果、室内練習用のローラー台を購入して自宅でトレーニングを始めたんです」

団長安田さんは高校時代、県外にサッカー留学したほど、抜群の運動神経の持ち主だ。並外れた我慢強さと根性で体を張って数々の仕事をこなしてきた。自らの肉体を鍛える自転車との出会いは運命だったのかもしれない。やがてロードレースにも出場、自転車芸人への道を真っしぐらに進んでいく。

家族も自由に出入りするオープンな空間で楽しむ

以前はマンション暮らしで趣味部屋を確保できなかった。自転車で街を走っている時に偶然売り出し中の土地を見つけ、8年前に自宅を新築。ようやく念願がかなって自転車専用の趣味部屋を手に入れた。「まさに自転車のために建てた家です」と胸を張る。趣味部屋はガレージを通り玄関のドアを開けた4〜5畳ほどのスペース。2階への通り道で家族が出入りするオープンな空間だ。

「密室ではないけれど、ひとりで好きなことができる。傾斜地を掘った場所なので “ツール・ド・フランス”の映像を見て大声で盛り上がろうと隣近所には聞こえない。趣味部屋には最適な空間ですね。ここがない生活は今ではもう考えられないです」

壁と天井は一部コンクリート打ち放し。階段の壁面はボルダリング用ホールドを取り付け。
部屋の上部。天井まで3m以上あるので広く感じる。ジャージは新城幸也さんのもの。

趣味部屋には自転車グッズを収納する棚のほか、天井付近にはホイール、壁には大好きなロードレーサー、 ペーター・サガンや親交のある新城幸也(あらしろゆきや)さんらのカラフルなサイクルジャージが飾られている。

中央で存在感を放っているのがサリスのサイクルトレーナーだ。プラットフォーム(台)の上には団長安田さん専用にカスタマイズされたNESTOの愛車が置かれている。ここで毎日約1時間ペダルを漕ぐ。 最近では正面のモニター画面に、 バーチャルサイクリングサービス「ZWIFT(ズイフト)」のトレーニ ング映像を流して、架空のロードレ ースを楽しんでいる。

「この台は実際に走っている時と同じように揺れて、上りのきつい走りもリアルに体感できる。ロードを走れなくても、室内でも外で乗っているのと同じ感覚で走れるんです」

スマホを使ってロードレースを楽しむ。愛車のサドルは憧れのクリス・フルームと同モデルだ。
サイクルジャージは多数保有。「見ているだけで楽しいですね」。

コロナによるステイホームの時期も、趣味部屋に居ながらにして、仲間を誘ってグループライドを楽しんだり、自らが走る映像を配信したり。 さらには持ちネタのひとつ、ドラマ『半沢直樹』の香川照之さん演じる大和田取締役の物まねを、毎日曜日9時からリアルタイムで生配信。今や仕事部屋でもある。

自転車の面白さはメカニックという。メカニックを駆使して、いかに速く走るかを追求する日々だ。

「上りを早く上がるために、マラソンだと人間の体を強化しますが、自転車の場合、人間だけでなく自転車のメカニックを変えることによって楽に速く走ることができます。ステムの長さや角度、クランクの長さ。 シューズとペダルを固定させるビンディングペダルはシューズのリソートの位置を1㎜か2㎜変えるだけで 違ってくる。メカニックいじるのは子どもの頃のプラモデルと同じ楽しさがありますね」

また外を走る爽快感は自転車でなくては体感できないという。

「風を感じ、季節を肌で捉えられます。山の中に入れば木陰の涼しさを感じ、木や植物の香りを嗅ぐこともできる。全力で漕いで走った後はぬるい水でも美味しい。メシも何でも美味しい。天気が良いだけで気持ち良いなと幸せになれる。自転車は自由な乗り物なので、色々なことを考えながら走れる。それはどこでも同じ。ひとりでいろんなことを考えながらペダルを漕いでいます」

所ジョージさんにもらったクロモリ・フレームの自転車。

肉体を鍛える快楽が高じてトライアスロンにも挑戦

お気に入りの六角レンチでメンテナンス。ズイフトを組み合わせればリアルな体感を得られる。

最近ではトライアスロンを始め、年代別日本代表になることが目標になった。自転車のほかにマラソンや水泳のトレーニングもしている。

「実は場所だけでいったら海の近くに引っ越したい。波がある海で、プールとは違う泳ぎ方を練習したい」そうやってひたむきに己の肉体を鍛える生き方に悲壮感はない。「言うほど大変じゃないんですよ」と団長安田さん。趣味部屋で楽しみながら自転車と向き合っている。

文/阿部文枝 写真/遠藤純