44679「本気と本気が結びつく、最高に痺れるような時があります。そんな瞬間を体験したくて芝居を続けています」|女優・松本まりか

「本気と本気が結びつく、最高に痺れるような時があります。そんな瞬間を体験したくて芝居を続けています」|女優・松本まりか

男の隠れ家編集部
編集部
テレビ朝日系ドラマ「ホリデイラブ」で“あざと可愛い”女優としてブレイクし、注目を集める松本まりかさん。20年以上のキャリアを持つ演技派女優であり、今回「WOWOWオリジナルドラマ向こうの果て」で連ドラ初主演を務めることになった。今、最高の輝きを放つ松本さんにこれまでの俳優人生と、秘密の隠れ家について聞いた。

【プロフィール】女優 松本まりか
女優。2000年ドラマ『六番目の小夜子』でデビュー。2018年『ホリデイラブ』での演技で注目される。近年は『竜の道 二つの顔の復讐者』(関西テレビ系)、『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日系)、『先生を消す方程式。』(テレビ朝日系)、「教場Ⅱ」(フジテレビ系)など話題作に出演が相次いだ。現在『最高のオバハン 中島ハルコ』(東海テレビ系)が放送中。2021年5月14日スタートの、「WOWOWオリジナルドラマ 向こうの果て」で連ドラ初主演を務める。

演技をした時、雷に打たれたような衝撃がありました

デビューのきっかけは、中学生の時にたまたまスカウトされたことです。小学生時代、学芸会で役を演じていた瞬間がとても楽しかったので、すぐに演技や俳優という仕事に興味を持ちました。初めて受けたオーディションが「六番目の小夜子」。デビュー作となったこの作品で、俳優として初めて演技をした時に、雷に打たれたような衝撃を受けたんです。そして俳優を仕事として続けたいと思うようになりました。子どもの頃に抱いた演技への思いは今も変わりません。役のことを考えている時は楽しくもあり辛くもあり、逃げたいような時もありますが、それでも表現することが好きなんです。

社会生活を送るうえで、誰もが本当の自分でいられない瞬間がたくさんあります。自意識によって素の自分を出すことが恥ずかしくなることもあります。だけど、俳優になって演技する時だけは、ある意味で本当の自分、本当の感情を出せるということがわかりました。役を一枚かぶることによって、素直な嘘のない感情が出てくるんです。私の場合は演技をしている時の方が、普段よりも自分らしさが出ているような気がします。

また、役者さん同士であっても先輩や後輩など、色々なしがらみがありますが、演技をしている時だけは、相手が誰であれ、対等な関係で内面対内面の会話ができます。コミュニケーションが苦手な女の子だった私にとって、演技がコミュニケーションツールでした。お芝居、演技という行為を借りて、共演者やスタッフとコミュニケーションをとることが、とても楽しかったんです。

“あざと可愛い”と注目されていることはネットで初めて知りました

ドラマ「ホリデイラブ」は視聴者の皆様の反応を、ネットニュースなどで知ってびっくりしました。初回放送で世界が一夜にして変わったと言っていいくらいです。私自身“あざと可愛い”という言葉で注目されていることはネットを見て初めて知りました。ただ、それについては自分ではよくわからないです。そういうテクニックみたいなものを、いかにして身に着けないかということを考えて、これまで地道に仕事をしてきましたから。「ホリデイラブ」で注目されるまでに18年。その間は少しずつ何かを発見していたけれど、確かなものはわからなかった。表現する場が少なく、たまに小劇場演劇に出演していましたが、リプレイがなかった。一個一個の仕事がギリギリの綱渡り。でも、少しずつ評価されてきて、今はフィードバックがあります。頑張ったら、頑張っただけの成果がこんなにあるんだと思えるようになりました。

今思うと成果が出ない時代は、自分の中ではステップアップしていても、目に見えるものがなかったような気がします。誰からも誉められるわけでもなかったのに、それでも芝居を続けてきたのは、演技が好き。それ以上に好きなものがない。純粋にお芝居が楽しく、演技がうまくなりたいなと思っていたからです。周りに魅力的な人たちがいたので、自分もそんな人間になりたいと思っていました。年齢を重ねた時に、自分自身をわからない人間にはなりたくなかった。少しでも大人になりたかった。そういう思いが自分を支えていました。

「WOWOWオリジナルドラマ向こうの果て」、監督は「ミッドナイトスワン」の内田英治監督です

主人公の律子は、幼馴染を殺した犯人として取り調べを受ける役です。律子を取り巻く男たちの証言で、彼女が色々な素顔を持つ女性であることがわかってきます。初めての主役ですが、主演らしいことは何もなく(笑)今回、私がやるべきことは律子という役をただ演じることだけ。役に集中する環境を皆さんが作ってくださいました。そんな恵まれた現場でした。撮影に入ると不思議と共演者の方とすっと呼吸が合って、演技だけでつながる瞬間が生まれました。映像作品を作る時は役者さんもスタッフもみんなが本気を出して……、演技をしていると本気と本気が結びつく、最高潮の痺れるような瞬間があります。私自身そんな瞬間を体験したくて芝居を続けています。いつも感じるわけではないですが、この作品では何度か痺れる瞬間がありました。

内田監督は私が初めて映画に出演した時の監督さんでした。内田監督自身も初めての長編映画ということもあり、私にとってはとても印象深かった仕事です。最近は何度もお声をかけていただいたのに実現しなくて、今回ようやく参加できました。ドラマの撮影時期がちょうど「ミッドナイトスワン」が日本アカデミー賞にノミネートされた時と重なりました。内田組はスタッフさんがものを作ることを大事にしている、とても心地いいクルーで、初日から居心地が良かったです。初めての主演が内田組というのもラッキーでした。運命というものを感じました。今回はWOWOWのオリジナルドラマです。内田組だからというだけでなく、WOWOWはとても映画的な現場です。映画的で、必要であれば、過激な表現もある程度許容される。純粋に表現したいという監督、脚本家、スタッフさんが集まって、皆が表現するアーティストでもいられる現場でした。

隠れ家は行きつけの小料理屋。ママの言葉が心に沁みます

私にとっての隠れ家ですか。そうですね……、近所にある小料理屋さんかな。凄く応援してくれるママがいて、ママの手料理が美味しいんです。私のことをとても応援してくれる、そのお店とママが私にとっての隠れ家でしょうか。ママは率直に話をしてくださる方で、最初に会った時は、「全然輝いていないけれど女優さんなの?」と言われました。仕事がうまくいかない時には、そんなだったら、やめてしまいなさいよとズバッと言われます(笑)。仕事が乗ってきた時には、なんかオーラが出てきたよ、今すごくいいよと、誉めてくれる。反対に今は駄目だねと言われる時もあります。

その店に行くようになったのは6、7年前くらいからです。最初は偶然入った店でした。恵比寿の「らっきょ」という日本料理・家庭料理のお店。コロナで大変な時だから、皆さんにも行ってもらいたいですね。ただ、「らっきょ」には一見さんはあまり来ない。知っている人しか来ない店です。飲んでいる人がみんな知り合いで。本当に隠れ家のような存在ですね。

辛口だけど、言葉の底にはいつも大きな愛と温かい心があります

ママの作る料理は何でも美味しいですが、私がよく注文するのは、揚げ春巻きと牛肉の明太子和えです。素材にいいものを使っているので、何気ない料理でもクオリティが高いです。お酒は自家製でサングリアを作っています。瓶に何種類ものフルーツを入れて、もちろん添加物無しです。わたしはお酒に弱くて、飲むと顔が真っ赤になってすぐに酔っぱらってしまいます。そんなに強くないので、量はたくさん飲めませんけれど、飲むためのお店に行くのは好きです。お酒を飲まない時でも食べるだけでも気軽に行きます。私のことを本当に親身に思ってくださって、その時々で叱咤激励してくれたり、温かい言葉をかけてくれたり。辛口だけど、ママの言葉の底にはいつも大きな愛と温かい心があるんです。だからひとつ一つの言葉が、私の心に沁みてくるのだと思います。いつも私のことを応援してくださっていて、本当に感謝しています。

<ドラマ情報>
「WOWOWオリジナルドラマ 向こうの果て」
2021年5月14日(金)〜全8話WOWOWプライム・WOWOWオンデマンドにて毎週金曜よる11時放送・配信【第1話無料放送】
監督:内田英治(映画『ミッドナイトスワン』) 脚本:竹田新 出演:松本まりか、松下洸平、柿澤勇人、加治将樹、渋川清彦、 豊本明長、宇野祥平 ほか
wowow.co.jp/drama/original/mukounohate/ 

律子は幼馴染の男・公平を殺した事件の被疑者。関わった男たちの語る律子像はそれぞれ異なっていた。律子とはどんな女なのか。そして、二人の過去に一体何があったのか。昭和の時代を舞台に、律子を取り巻く濃厚な人間ドラマが繰り広げられる。舞台、小説と連動したWOWOWオリジナルドラマ。

文/阿部文枝 撮影/島崎信一
ヘアメイク/AYA(LA DONNA) スタイリスト/後藤仁子
・トップス¥25,300 ・パンツ¥26,400 共にスタイリング/(スタイリング/ルミネ新宿1店) 
・ピアス¥77,000 ジジ(ホワイトオフィス) ・リング¥162,800 マリハ

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