10月1日より、東京を発着する旅行が「Go Toトラベル」の対象に加わった。これを受け、旅行や観光を楽しむ人々は今後さらに増えていくことが予想される。
Withコロナの生活様式や、Go Toトラベルの実施によって注目されつつあるのが、「ワーケーション」という働き方だ。
和歌山県が提供する「ワーケーション」という名の創造機会
ワーケーションはもともと米国で生まれた概念で、「work(仕事)」と「vacation(休暇)」を掛け合わせた造語である。言葉の通り、テレワークを活用することで、温泉地やリゾート地などで休暇を楽しみながら働く新しいライフスタイルのことを指す。日本ではまだまだ聴き慣れない言葉だが、和歌山県はいち早くワーケーションの普及に乗り出し、日本中から注目を集めている。
同県は、ワーケーションをリモートワークのような単なる社会問題解決ツールではなく、価値を創造するためのツールだと捉えている。普段の生活圏から離れてその地域ならではの人や取り組み、自然に触れながら働くことは、新規ビジネスの創出や組織・人材の多様性確保、地方創生への貢献に役立つ可能性があるという考えだ。またワーケーションは、地域にとっても関係企業の創出や経済の活性化、コミュニティの多様化とメリットが豊富な取り組みであるとも言及している。
そのようなワーケーションを促進するため、多様なワークプレイスや宿泊施設、アクティビティの環境整備を進めている。単に仕事をするだけではなく、地元の方たちと交流できる場が用意されているのも、同県におけるワーケーションの大きな魅力だ。
平成29年よりワーケーションの実施に取り組み始めた結果、令和元年度までの3年間で104社910名がワーケーションを体験しており、ワーケーションをきっかけとしたビジネスが出現するなど、早くもその取り組みは身を結びつつある。
働き手にとっても受け入れ地域にとっても魅力的なワーケーション。テレワークが推進されるようになった今、おひとり様で休暇を満喫しながら働くワーケーションという新しい価値観は、さらに日本中へ浸透していくことが予想される。
時代や日本人の性格に合った働き方「ワーケーション」
「職場に迷惑をかけたくないから休暇が取れない」「プライベートよりも仕事を優先するべき」これが、多くの日本人が持っている価値観ではないだろうか。
リフレッシュしたくてもなかなか仕事を休めない真面目な日本人にこそ、ワーケーションの働き方は非常に有効だ。リフレッシュも仕事も同時に叶えてくれるワーケーションは、労働者の生産性アップにもひと役買ってくれることだろう。
2つので類型から見る「ワーケーション」の可能性
ワーケーションには大きく分けて2つの類型があるとされており、それぞれによって目的が異なる。
ひとつめは、個人が自由に行う「個人型ワーケーション」。これは、テレワークが可能な社員が自らリゾート地に赴き、個人負担でワーケーションを行うことを指す。場所に制限されない働き方の実現が目的であり、都会の喧騒から離れてリフレッシュしながら仕事をすることが可能となる。
ふたつめは、企業がワーケーション地域に社員を派遣し、事業を実施する「出張型ワーケーション」。通常の業務はもちろん、ワーケーションの目的に応じた業務を行うことで、イノベーションの創出や地域創生・地域課題解決への貢献を目指す取り組みとなっている。社員のリフレッシュだけではなく、ワーケーションを通じてビジネスを展開していくことが目的であるケースも多い。
つまりワーケーションは個人だけではなく、今後は企業単位で実施されていくこともあり得るのである。
菅首相も、かつて政府会議の場でワーケーションの推進を表明していた。もしかしたら近い将来、オフィスにとらわれず休暇を楽しみながら働くことが我々のスタンダードになるのかもしれない。