道具を一式背負って檜原村のキャンプサイトへ

焚き火の炎を見つめているうち、ふっと瞼が重くなってきた。夢現(ゆめうつつ)の中でしばし愉しむまどろみの時間。耳元に届いてくるのは、渓流の涼やかな瀬音と、パチパチとはぜる薪の音……。時にさぁーっと風が吹き抜けると、木々が少し騒がしく葉音を立てるだけで、ひとりだけのキャンプサイトはひたすら静かだ。焚き火の匂いも秋を迎えた森の香りも清々しく、自然の中では聴覚も嗅覚もより敏感に研ぎ澄まされるのがわかる。まもなく夜の帳が下りると、さらに森は静寂に包まれるだろう。

ここは東京の奥座敷、西多摩郡檜原村にある神戸(かのと)園キャンプ場。景勝地の神戸岩から流れる渓流沿いにあり、このエリアには他にもキャンプ&バーベキュー場が点在している。夏場はいずれも家族連れなどで賑わうが、秋の平日は比較的静かで、この日予約した神戸園の川沿いサイトは運よく自分ひとりだけだった。

今回の現地までのアクセスは電車とバスを利用する。JR武蔵五日市駅から北秋川渓谷・藤倉行きのバスに揺られ、神戸岩入口のバス停へ。そこから徒歩約20分の場所に神戸園はある。バスに乗り込む前に、町中のスーバーや酒蔵などで食材や地酒などを購入。地元産の野菜や蕎麦も仕入れておいた。

JR武蔵五日市駅から路線バスに乗り替える。
その前後で、スーバーや地元の酒蔵「野崎酒造」などに寄って食材や地酒を仕入れる。

県道33号線を西へと進む路線バスは檜原村役場のあるT字路を右折。まずは、この先の払沢(ほっさわ)の滝入口のバス停で途中・車する。目的はバス停目の前の「檜原とうふ ちとせ屋」で豆腐を手に入れることと、檜原村を代表する景勝地・払沢の滝に立ち寄るためであった。

払沢の滝入口のバス停前にある「檜原とうふ ちとせ屋」

地元だけでなく観光客にも人気の豆腐は、檜原村の清らかな水と国産大豆で仕込んだ逸品。夕食の炭火焼用に厚揚げと油揚げ、朝の味噌汁用に絹豆腐を購入する。ちなみにおやつに食べたい卯の花ドーナッツもさっくりと旨い。

厚揚げ(205円)や北海道産大豆を使った滝の音豆腐・絹(324円)を購入。
売り切れ終了なので要注意。

バス停から整備された山道を15分ほど歩いた場所にある払沢の滝は、東京都で唯一「日本の滝百選」に選ばれている名瀑だ。4段から成る落差約62mの滝で、間近に望む最下段の約23mの滝は迫力と優美さをそなえ見応えがある。

払沢の滝入口のバス停で途中下車(バスの本数が少ないので要時刻確認)し、「日本の滝百選」選定の払沢の滝に立ち寄る。写真は約23mの最下段の滝を眺める。滝までのハイキングも気持ちがいい。

払沢の滝入口のバス停から再びバスに乗ること約10分、のどかな里山風景を眺めながら神戸岩入口で下車し、今宵のキャンプ場へとゆっくり歩いていく。

清々しい渓流のテントサイトで静かなひとり時間を堪能

神戸園は釣り堀を併設するキャンプ場。釣り堀と売店・管理棟のある広々とした12区画の林間サイトと、北へ150mほど離れた3区画の川沿いサイトがある。予約状況にもよるが、ソロキャンパーには後者の方が静かでお勧めだ。

神戸園には釣り堀や管理棟のある広々とした林間サイトと、150mほど離れた川沿いサイトがある。すべて車が乗り入れられるオートキャンプスタイルだ。

管理棟でチェックインを済ませたら、さっそくサイトに移動してMSRのエリクサ2テントとスルーハイカー100ウィングタープを設営する。雑木林と神戸川のせせらぎが心地良いロケーションに早くも気分は上々。

神戸園に到着してチェックイン。
写真はいずれも川沿いサイトで、神戸川の清流と自然林に囲まれた静かな雰囲気が人気だという。3区画あり共用の簡易トイレと流し台が設置されている。

そしてひと息着いたところでヘリノックスのチェアワンとドリップで淹れたコーヒーを川べりに持って行き、まずはコーヒータイム。森と渓流のカフェ空間……。こんなシチュエーション、そう多くはない。

その後は再び管理棟まで戻り、釣り堀でニジマス釣りに興じる。これも神戸園ならではの楽しみで、釣ったニジマスは夕食と朝食の食材に。今回の夕食はニジマスを焼く予定なのだ。釣り竿を投入すると思いのほかあっという間に2匹3匹と釣れたのでひと安心。内臓を取ってもらい、テントサイトでさっそく調理を始める。

裏手の釣り堀でニジマス釣りを楽しんだ。1匹300円。別途170円で塩焼きもしてくれる。

ニジマスをキノコとバターと共にホイルに包み炭火焼に。炭火は早めに熾しておき、とろ火でじっくり焼き上げる。同時にサブメニューのつけ蕎麦、厚揚げ焼きなども用意。つけ蕎麦は、鶏肉、ゴボウ、マイタケ、油揚げ、ネギなどを入れた具沢山の汁に蕎麦をくぐらせて味わう。厚揚げは炭火でこんがり焼いて大根おろしと醤油をたらり。野菜などの材料は洗浄・カットされた商品を使うと便利だ。

早々に夕食の準備を始める。
ニジマスのホイル焼きはバターと舞茸と共に包んで炭火焼きに。
つけ蕎麦用の汁はカットパックされたごぼう&人参、鶏肉をさっと炒め、水とめんつゆ、舞茸、油揚げなどを投入。
蕎麦をつけて味わうので味はやや濃いめに。

さあ、夕暮れと共に森のひとり酒宴の始まりである。

焚き火台ユニフレーム ファイヤースタンド2に火を熾す。薪や炭は神戸園で購入。薪(480円)、炭3キロ(1,400円)。
夕食の膳が完成!ニジマスのホイル焼き、つけ蕎麦、厚揚げの大根おろしかけなど。

赤々と燃える焚き火とランタンに照らされる中、地元・野崎酒造の純米酒「喜正」の杯を傾けながら、まずはニジマスのホイル焼を口に運ぶ。ふっくらとした身とバターの風味が絶妙でこれは大正解。厚揚げも大豆の風味が生きているし、つけ蕎麦も野菜と鶏肉の旨味が利いた汁が蕎麦を引き立ている。我ながらその出来に大満足だ。いや、この環境が酒と料理の味を引き立ててくれるのだろう。

シェラカップに具沢山の汁を入れ、蕎麦をくぐらせて手繰る。美味い!

川音と風ゆらす葉音に呼応する焚き火の温かなつぶやき

食べ終わる頃には辺りはすっかり闇の中。薪が燃え尽きるまで、今日はまだまだゆっくり酒を愉しむことにしよう。

夕飯もひと通り終わり、焚き火を眺めながらのんびりと過ごす。
薪が燃え尽きるまで焚き火を眺めて静かに過ごした。

「明朝は、自然に目覚めた時間に朝食を食べ、神秘の景観で知られる神戸岩まで朝の散歩をしよう……」。ぼんやりとそんな散策計画を抱きながら、ほろ酔う体をテントに滑り込ませた。

翌朝はのんびりと起床。川に下りてモーニングコーヒーを飲んだ後、朝食を作る。
コーヒーを淹れる前に、EPI ATSチタンクッカーで洗米しを水に浸したしておく。
炭火を熾しておくことも忘れずに。ニジマスはそのまま遠火の炭火焼きにする。
さらに豆腐の味噌汁と缶詰のおかずを1品添えて朝食が完成。
サイトから徒歩20分の所にある神戸岩。東京都指定天念記念物の名勝だ。
帰途に寄った手打ちそば処「玄庵 檜原」
ざるせいろ(850円)と野菜天盛り合わせ(650円)を賞味。

【BEST CHOICE】軽量コンパクトで使いやすいバーナー

OD缶を燃料にした分離型シングルバーナー。低温時に安定した火力を維持する「マイクロレギュレーターを搭載、耐風性に優れたすり鉢状バナーヘッド、そして182gという軽量でコンパクト。ソロキャンプから数人のキャンプ時の大鍋まで対応できる。

マイクロレギュレーターストーブ SOD-330
価格:9,000円 
問い合わせ:新富士バーナー

Camp ground information

東京の自然を味わい尽くす「神戸園キャンプ場」

広々とした山側のテントサイトや、川で遊べる静かな川側のテントサイト、バンガロー、コテージなども設置。街から近いとは思えない自然が豊富なキャンプ場。ニジマス釣りもできる。

神戸園キャンプ場(かのとえんきゃんぷじょう)
東京都西多摩郡檜原村神戸8018
電話/042-598-0107
チェックイン・チェックアウト/14時〜翌10時
料金/駐車料=普通車500円、サイト使用料=オート1区画4,000円、AC電源使用料600円、宿泊施設=バンガロー1万3,000〜3万2,000円 
アクセス/圏央道あきる野ICから約40分
HP/https://hinohara-kankou.jp/member/kanotoen/
※開設期間、シーズン料金等の詳細はHPで ご確認ください。

Thanks/コールマンジャパン、新越ワークス、新富士バーナー、モチヅキ、モンベル、ユニバーサルトレーディング

Text/Yukimi Iwaya Photo/Takeo Aki