人が立ち入らない静かな山 聞こえるのは風と川音だけ

東京近郊にある山林、ソロでしか来たことがない秘密の場所に約1年ぶりにやって来た。杉木立にナラやクヌギ、サクラといった広葉樹が混ざっているこの森は、全体が緑の屋根に覆われていて、ここだけが木々に包まれている不思議な空間だ。今日のソロキャンプはハンモックを使って過ごそうと計画した。車の立ち入れない山奥の森に45Lザックを背負ってキャリーカートを引きながら分け入って行く。普段全く人が立ち入らない山なのでトレースは目印程度に薄くなり、蜘蛛の巣も濃い。

車止めでザックを背負い、キャンプ道具を収めたボックスをキャリーカートに乗せる。山への入り口は若干の斜面になっているが、カートがあれば楽々。とはいえ、歩くのも数分なので全く苦ではない。
辺りを見渡せば手付かずの大自然。
空を覆い尽くさんばかりのツル、倒木に生した苔、足元にはシダ植物がたくさん茂っている。
この周辺の丘陵にはサンコウチョウが棲むと聞いたが、夏鳥ゆえ、さすがにその鳴き声は聞こえなかった。

そして数分歩き、キャンプサイトに到着。早速ハンモックの張れる木を探してセッティングをする。雨予報ではなかったがバックヤードも兼ねてタープも張ることにした。少し風が出てきたか。あまりの気持ち良さにリビングの展開もそこそこにハンモックに飛び込んだ。

近年、爆発的な人気となっているハンモック。ソロキャンプ(特にブッシュクラフトスタイルのキャンパー)でそれを使っている人を本当に多く見かけるようになった。価格も数千円のものから数万円のものまで様々。私はビギナーなので前者だが、それでも包まれるような安心感は十分に得られる。
ハンモックをセッティングしてその上にタープを張る。
その下に簡素なリビングスペースとファイヤーピットを作った。
こんな時に活躍するのがスコップ。折り畳みのものをひとつ持っていくと何かと役に立つ。
ナイフで薪を細かく割り、早速焚き火を熾す。焚き火なくしてキャンプ酒宴は始まらない。
直火ができる森ではあるが、マナーとルールはしっかり守る。必ず水は火の近くに置いて安全対策を。

山から吹き下ろしの風が吹いてきて森の天井を揺らす。聞こえるのは木々が揺れる音、そして近くを流れる小川のせせらぎだけ。誰もいない静寂の森。さて1泊2日、何をして過ごそうか。

ゆらゆら揺れるハンモック この感覚は癖になりそう

サイト設営完了。実はハンモック、キャンプ場で常設されているものに軽く乗ったことがある程度で、しっかり使う(眠る)のは今日が初めてである。本当にこれで寝られるのか?

張り終わってあらためてそのディテールを多方向から見てみると、そのひ弱さに若干不安が募る。しかし一度座って身を委ねてみると、抜群の安定感に驚かされた。しかもこのモデルは蚊帳付きなのでテント替わりに1年中使えるだろう。某著名人がハンモックだけで野営をする姿を観て、なんだか過ごしずらそうだなと思っていたが、意外や意外、思いのほか快適なのかもしれない。

木漏れ日を浴びて揺れいつの間にか夢の中に…

昼下がり、ビールと雑誌を持ち込んで全身を委ねてみる。「ナンダコレハ!」身を包まれてているミノムシ感(?)、そして静かに左右するゆらゆら感がたまらない。思わず笑みがこぼれる。そうか、皆がこぞってソロキャンプに取り入れるのも頷ける。秋の木漏れ日が本当に気持ち良い。本を読みながらしばらく過ごしているうちに、どうやら眠ってしまったらしい。

当たり前だがハンモックは、そこそこの太さの木が2本ないと設営できない。ゆえに設営場所が限定されるが、コレを張るのを目的にフィールドを探すのも楽しいだろう。

まだ食事の準備には早いな、時間はたっぷりある。せっかくなので森の散策に出かけてみることにした。森の奥の池にはカモが2羽気持ち良さそうに泳いでいて、小魚が走るのが見える。あれはクチボソだろうか。そして支流を遡っていくと、気持ちの良い場所を見つけた。持参したコーヒーセットでコーヒーを淹れて飲む。ちょろちょろと流れる小川、小さな石組み段差を落ちる水を眺めているだけであっという間に時間が過ぎた。

営後に周辺を散策。本流へと注ぐ支流を遡ってみる。湧き水を汲んでバーナーで沸かし、コーヒーを飲んだ。水中を覗けばホトケドジョウが。

さて、そろそろサイトに戻り食事を作ろう。明るいうちから焚いていてきれいに熾火になったその上に、無造作に太い薪を2本追加。カラカラに乾いたナラの木の皮に火が移り、あっという間に炎が立ち昇る。素敵な夜になりそうだ。

道具をコンパクト、軽量化しようと思ってもあれこれ持ってきてしまうのが常。今日は直火のできるフィールドだったので、そういった類の道具をセレクトして持って来た。お気に入りのケトル(グランマーコッパーケトル)は銅製で直火との相性がいい。
そのほかソロキャンプの味方「ヨコザワテッパン」
ハスクバーナのアックス、テオゴニアのファイヤープレーストング
モーラナイフやオピネル
ポケットボーイのノコギリなども焚き火で大活躍する。

ひとりで作って飲む愉しみ これぞソロの醍醐味である

緑の天井に囲まれた森は夜が早い。焚き火の火力を上げて早速夕食作りに取りかかろう。

日が落ちる前にビールの栓を抜き、料理を仕込みながら飲んだ。

まずランプ肉にガーリックが効いたアウトドアスパイス「ほりにし」を多めに振りかける。

しばらく馴染ませた後、焚き火上に設置したトライポットのS字フックにしっかりと引っ掛ける。あとは火が上がり過ぎないように炎を調整し、スモークをかけつつ遠火で炙り焼いていく。これが後ほど美味しいスモークビーフになるのだ。

焚き火の上にトライポットを設置し、アウトドアスパイス「ほりにし」を振ったランプ肉を吊るす。数時間後にスモークビーフになる。

また、トランギアのメスティンで豚バラとズッキーニをよく炒め、少なめの水で煮る。煮えたらカレー粉を投入してバーナー上で煮込めばカレー味の豚バラグリルの完成。

さらにミニスキレットでは挽肉とネギを炒め、焚き火から降ろして 納豆を加えて混ぜていく。粘り気がなくなった頃に出汁醤油をイン。レタスに巻いて食べるとこれがどんな酒にも合う酒肴となる。

ミニスキでは挽肉納豆とアヒージョ

ソロキャンパーの新定番・ヨコザワテッパンでは小さなチキンステーキを焼いた。こちらも件(くだん)のスパイスを振って焼き、最後にレモンをかければワインの最高のアテになる。ソロキャンプの食事は即席ラーメンでもいいのだが、普段あまり料理をしない私はここぞとばかり色々作り、毎回ついつい食べ過ぎてしまうのであった。

チキンソテーはヨコテツで焼く。

アヒージョとチーズを食べながら、ククサ(木製のコップ)でワインを飲んでいると「ウォーウォー」と低く乾いた鳴き声、犬の遠吠えにどこか似た声が山に響いた。しかしよく耳を澄まして聞いてみると、どうやらそれは鳥の鳴き声のようだ。これはソロキャンプでなくては絶対に聞き逃してしまう、どこか優しい鳴き声であった。

森が暗くなる頃にデイツのオイルランタンに火を灯す。このオイルランタンは照度こそ低いものの、雰囲気は抜群。真っ暗になる森なら意外と明るいこともわかる。アヒージョとお気に入りのチーズでワインをいただく。
焚き火上のランプ肉をカットすると、焚き火の香ばしい匂いが漂う。
もう秋、暗くなると肌寒い。そんな時やはり焚き火がありがたい。

昨夜は深夜までひとりで飲み過ぎてしまったが、キャンプの朝は極力早起きをし、普段は積極的に食べない朝食を作って食べるのも愉しみのひとつになっている。

食パンにレタスとハムチーズ、ピザソースをかけてホットサンドメーカーで焼く。さらにスープとウインナーで私的には超豪華な朝食となった。
近年人気のホットサンドメーカー。王道のホットサンドだけでなく、実は様々な調理に使える優れものだ。

そしてソロキャンプは常にひとり、撤収も誰に合わせるわけでもなく自分ペースだ。存分に朝を楽しんだところで野営地を後にする。

昨日歩いて来た道をカートを引いてゆっくりと下っていく。ふと後ろを振り返ると遥か頭上、覆い茂ったツルの中にまだ熟さないアケビが実っているのが見えた。

帰りの道中、市内を散策していると「味噌まんじゅう」を発見。餡の甘さと味噌がとてもいい。

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ガスやガソリンと違いワンタッチで得られる明るさが最大魅力(編集部所有)。

とにかく手軽に安全に使える点で言えば、この充電式LEDランタン「ルーメナー2」に勝るものはあまりないだろう。4段階モードで最大1,500ルーメン、色温度も3色変更可。防水、防塵、耐衝撃、最大照度で8時間持つというのもソロキャンプでは強い味方に。
※購入は正規販売店、ネットショップで。

Text/Noriy.K Photo/Kenji Mukano