5220二人だけで静かに過ごしたい温泉宿 岐阜県・奥飛騨 新平湯温泉 飛騨つづり朧

二人だけで静かに過ごしたい温泉宿 岐阜県・奥飛騨 新平湯温泉 飛騨つづり朧

男の隠れ家編集部
編集部
ここは岐阜県の奥飛騨温泉郷。そこにある伝統と趣のある隠れ宿「飛騨つづり 朧(おぼろ)」。美しい月夜とこの宿が、ふたりの時間をより特別なものにしてくれるだろう。
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十六夜に訪れた奥飛騨温泉郷の隠れ宿

山の端に赤く染まった陽の光が隠れると、あたりは一気に夜の帳を下ろし始める。晩秋の山の宵の訪れは特に早い。障子越しに映る景色も、朱色から紫へと色のトーンが落ち着いてきた。

「この時間帯がいつも一番好き」と言っている連れ合いも、部屋の露天風呂に浸かりながらその色の移り変わりを楽しんでいるようだ。先に温泉を堪能したこちらはすっかり体も温まり、部屋でうつらうつら……。こんなにゆっくりした時を過ごすのは久しぶりだ。

今回訪れたのは、岐阜県の奥飛騨温泉郷新平湯・焼岳温泉。長野県・松本方面から県境の安房(あぼう)トンネルを抜けて岐阜県側の平湯温泉へと入り、さらに15分ほど新穂高方面に車を走らせた平湯川沿いに佇む一軒宿である。

宿の名は「飛騨つづり 朧」。「奥飛騨ガーデンホテル焼岳(やけだけ)」の敷地内にある全室露天風呂完備の離れ棟で、合掌造り風の建物が山懐にひっそりと抱かれている。その数はわずか8棟。

それぞれ少しずつ趣を異にする建物内は、1階にくつろぎの居間と露天風呂があり、2階が和室+和室、または和室+洋室(ベッドルーム)というメゾネットタイプの造りになっている。各棟には「水月」「皐月」「佳月」など月に因んだ名前が付けられ、フロント棟は宿名にもなっている風流な「朧 」。

栗の木で造られたという300年前の古民家を飛騨高山から移築したもので、離れのゲストは重厚なこの空間でチェックインをする。

「月下にたたずむ伝統の趣、贅をつくした隠れ宿」というコンセプトのように、宿滞在へのプロローグも期待をふくらませる趣深い雰囲気を漂わせていた。

月暦を調べてみると、今夜は十六夜(いざよい)。そろそろ東の山の端から月が顔を出す頃だろう。いざよいには〝ためらう〟という意味があり、十五夜より少し遅く月が現れることからそう呼ばれるが、何とも日本人好みの粋な喩えに連れも感動することしきり。形も満月より少し欠ける十六夜だが、月明かりにさえざえと照らされる夜の山の景色は意外にも明るく、そして幻想的だ。

さて、夕食前にもう一度、部屋の露天風呂に入ろうか。それとも種類豊富な本館の大浴場か、渓流沿いの貸切露天風呂から月を見上げようか。

この宿には敷地内に5本もの自家源泉があり、湯量は毎分1100ℓ。ほとんどの湯船が源泉かけ流しだ。しかも大浴場は〝うぐいすの湯〟と呼ばれるエメラルドグリーンの湯が特徴。色の要因は泉質か成分か不明だが、光の当たる角度などで美しく燦めく不思議な湯は、芯から温まり吸いつくような肌触りが心地良い。

珍しい自然の恵みを食す、ふたりだけの観月の宴

「朧」のゲストの食事は、朝夕ともに離れ専用の食事棟「十三夜」にていただく。こちらも飛騨の古民家風の造りと個室空間が落ち着いた雰囲気。ちなみに十三夜には〝観月の宴〟を行う意味合いもあ ることから、食事処の建物にその名を付けたのだという。

まさにそんな月夜にふさわしい今宵の夕膳は、地元・飛騨のご馳走尽くし。まずは湯上がりの一杯にビールで乾杯し、前菜を味わう。ローストビーフ、湯葉山椒、チョウザメの竜田揚げ、チョウザメ珍味などが登場。さらにお造りの飛騨の幸盛りにも飛騨マスやイワナの刺身とともにチョウザメの刺身が盛られていた。

奥飛騨の山の中でチョウザメ?と不安と期待が入り交じったが、初めて味わうチョウザメの刺身は、少し脂ののったヒラメのようで実に美味。キャビアを少しのせていただくと、まさに口福の味だ。実はチョウザメがこの宿の自慢のひとつであり、自社の養殖場でチョウザメと、さらにスッポンまで育てているのである。

チョウザメは奥飛騨北アルプスの伏流水育ち、スッポンは当温泉の源泉育ち。いずれも社長・石田清一さん自らのアイデアと試行錯誤の末に生まれた逸品である。

コラーゲンたっぷりで滋養強壮にもいいスッポンはこの日、〝湯けむり美人のお吸い物〟として供され、「美肌になれるわね」と連れ合いも笑顔満面。

さらに締めには何とキャビアのお茶漬けまでもが出され、その驚きと感動は最後まで続いていくことになる。しかもその間にはA5ランクの飛騨牛ステーキとしゃぶしゃぶなども頃合いを見計らって登場。地場産食材はもちろん、自社の食材を駆使したまさに贅沢美味三昧の料理が目と舌を楽しませてくれるのである。

飛騨の地酒もついつい進み、いつもより会話も弾んだ今宵ふたりだけの観月の宴。さて、食後は月夜の庭を歩いて酔いをさましにいこうか……。冷え込む夜も、今日はなんだかとっても温かい。

飛騨つづり 朧 
岐阜県高山市奥飛騨温泉郷一重ヶ根2498-1
☎0578-89-2811 
宿泊料/1泊2食付き2万8000円~(2名1室の場合の1人分・入湯税別) 
カード/使用可 客室/8棟 チェックイン・アウト/15:00・11:00 風呂/内湯各棟1、露天風呂各棟1、貸切露天風呂2(本館「ガーデンホテル焼岳」に内湯男女各1、露天男女各4、混浴4) 泉質/ナトリウムー炭酸水素塩・塩化物温泉 施設/マッサージルーム 駐車場/10台 アクセス/(電車)JR「高山駅」よりバスで約1時間15分。JR「松本駅」よりバスで約1時間30分。(車)中部縦貫自動車道「高山IC」より約1時間。長野自動車道「松本IC」より約1時間20分


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いくつになっても、男は心に 隠れ家を持っている。

我々は、あらゆるテーマから、徹底的に「隠れ家」というストーリーを求めていきます。

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