魚釣りに使われる擬似餌。ミミズや小魚など、魚が好む餌をモチーフにしたデザインのものが主流だが、一風変わったワーム(擬似餌)が発売される。それは「機動戦士ガンダム」に登場する水陸両用のモビルスーツ「ズゴック」がモデルのワームだ。販売元のTRYALLに開発に至った経緯を聞いた。

大きなブラックバスに丸呑みされてしまったズゴック

■ズゴックのワームでブラックバスが釣れる

水中を静かに進む影。急速にスピードを上げたかと思うと、稲妻のように駆け抜けていった。陸上からも確認できる、ほんのりと赤いシルエットと、両手の3本のツメ。影の正体は、水陸両用モビルスーツ「ズゴック」だった。赤い機体はシャア専用である。その後ろを巨大な魚影が追走していく姿が見えた。

こちらはガンダムでも、“木馬”でもなく、影の形からして、ブラックバスに違いない。「ヒット!」という声と同時に水しぶきがあがり、赤いズゴックを咥えた大きな魚が姿を現した。しばらく暴れたものの、ブラックバスは敗北を認めるように、大人しく水際へと引き寄せられていった。一瞬、「機動戦士ガンダム」の世界に迷い込んだかと思ったが、バス釣りを楽しんでいただけだった……。

釣り人が使っていた奇妙な擬似餌の正体は、TRYALLとコスパによって開発された2022年2月発売予定の「水陸両用モビルスーツワームシリーズ MSM-07ズゴック」である。「機動戦士ガンダム」シリーズのファンならお馴染みのモビルスーツだが、小魚とは似ても似つかないシルエット。それがどうして擬似餌になったのか、素人には理解ができない。ズゴックの姿に魚が惹きつけられるということなのだろうか? 製品を企画したプロアングラーとしても活躍するTRYALLの代表・やまけんさんの元を訪ねた。

「うちの会社では釣りのさまざまなギアを企画・販売していますが、ルアーやワームといった擬似餌は、他社からもたくさん種類が出ています。いまさら普通のデザインの製品を作っても面白くないと思いました。

もともと、キャラクタービジネスを手がけていた経験もあり、もっと別のアプローチで商品を開発してみようと思い、今回、行き着いたのが『機動戦士ガンダム』シリーズのズゴックでした。水陸両用のモビルスーツで、両手にツメがあるので、なんだかカニっぽいシルエットということもあり、釣りとの相性が良さそうだと思ったんです。3Dデータ化やパッケージデザインはガンダムのグッズ製作でノウハウのあるコスパとのコラボレーションで実現しています」

「COMET RED」「MASS PRODUCTION BLUE」「ZEON GREEN」の3色展開

■公式設定に基づいたディテールでズゴックのフォルムを忠実に再現

せっかく作るなら、ちゃんと釣れた方が面白い。そこで、公式設定に基づいた機体のディテールを再現しつつ、フィールドテストを重ねながら、より魚が反応する製品を目指したという。

「魚って動くものに反応する習性があるので、水中でのアクションが重要になります。水圧などで腕や足がバタバタと動いて、魚にアピールするデザインを模索しました。その結果、フックの種類や刺す位置によって、アクションが変わるワームに仕上がっています」

ライセンス商品としてのルールを守りつつ、きちんと釣れる商品が完成したのだ。ただ、あくまで面白グッズとして、気軽に楽しんでほしいとやまけんさんは語る。

「釣りに真剣になるほど、釣果ばかりが気になりがちです。とくに乗合船などで釣りをすると、乗船料を払っているので、元を取ろうという意識が強くなります。でも、釣れるときもあれば、どうしても釣れない日もあります。もちろん釣れるに越したことはないんですけど、あくまでレジャーなので、釣れなくても楽しめたほうがいいんじゃないかと思っています。

もし殺伐とした船上でも、このズゴックのワームで釣りをしていたら、和みません? あんなので釣ってるよって。釣れても、ズゴックで釣れちゃったよって笑えるし、万が一、逃がしてしまってもズゴックを見れば和むんです」

確かに魚の口から見え隠れするズゴックの画は、シュールである。湖や川でブラックバスを狙うのはもちろん、このズゴックを使って、海でメバルやマゴチが釣れた実績もあるという。カラーバリエーションはシャア専用をイメージした「COMET RED」に加え、ジオン軍をイメージした「ZEON GREEN」や、量産タイプをイメージした「MASS PRODUCTION BLUE」の3種類の販売が予定されている。ズゴックとともにフィールドに出てみては、いかがだろうか?

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取材・文/梅中伸介(verb)