教会や洋館、石畳の道に赤レンガ倉庫。異国情緒あふれる函館の地は、開拓使が入植する以前はほとんど手付かずだった北海道の中でも、近代日本の歴史を感じられる特別な場所だ。明治34年に創業した「阿佐利本店」もまた、そんな歴史を感じられる店なのだ。

風格に満ちた老舗すき焼き店を訪ねる

初代が肉屋として店を構えたのは明治34年(1901)。精肉店を開業してからしばらくした後、すき焼きを提供するようになったという。昭和9年(1934)に青森から移築した数寄屋造の建物は、異国チックな歴史ある洋館が多い函館の中でも、ひときわ目に付くものだ。

かつて花街として賑わった宝来町で当時の佇まいを今に残す。

店に入り黒光りした階段を登り2階へと案内される。松の部屋と呼ばれる個室の窓から外を見下ろすと、路面電車が走る姿が目に入る。なんとも言えないノスタルジーを感じる瞬間だ。そんな趣ある座敷で味わうすき焼きは「格別」のひとこと。

松の部屋から見下ろす路面電車。

メインメニューの「すき焼きお食事コース」は松竹梅の3コースから選べ、松と竹では最上級A5ランクの肉が提供される。松と竹の違いは肉の部位。松コース(4100円)は黒毛和牛A5ランクのサーロイン、竹コース(3600円)は同じく黒毛和牛A5ランクのリブロースを使用する。

価格が2900円とリーズナブルな梅コースは、黒毛和牛A2からA3ランクのリブロースが味わえる。コースにはそれぞれ、ご飯、お新香、卵、デザートが付く。肉や野菜は単品での追加も可能だ。

薄口の割下が肉本来の旨味を引き立てる。

竹コースを注文すると美しくサシの入ったA5ランクのリブロースに感動する。炊き上がった肉をひとくち含むをわかる、脂の美味さ。阿佐利本店の秘伝の割下は、柔らかくてまろやかな肉本来の風味を引き立てる薄味だ。さらに黄身の濃い卵と絡めて食すると、思わずため息が漏れ出てしまう旨さである。

函館に訪れたなら食して欲しい阿佐利本店の竹コース。

北海道新幹線が開通したことで、本州から函館へのアクセスの選択肢は増えた。歴史や建物など見どころが詰まった函館に訪れる観光客は、みな競ったように朝市や食事処で海鮮を求めるが、阿佐利本店のすき焼きを食わずして函館グルメは語れないのだ。

【基本情報】 
住所: 北海道函館市宝来町10-11
最寄り駅: 函館市電「宝来町電停」より徒歩すぐ
営業時間: 11:00~21:30(LO 20:30)
定休:  水曜

写真/佐藤佳穂