106579国産有機ワインの造り手を訪ねて「武蔵ワイナリー」|埼玉県小川町

国産有機ワインの造り手を訪ねて「武蔵ワイナリー」|埼玉県小川町

男の隠れ家編集部
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有機農業の里、埼玉県小川町で行われる全国的にも珍しい完全無農薬・無添加によるワイン造り。自然派ワインの秘密に迫る。

武蔵ワイナリー代表 福島有造さん&陽子さん夫妻

有造さんは、40歳を過ぎてから銀行マンから農家になりワイン造りに携わるという異色の経歴の持ち主。さらに日本酒の蔵人から杜氏に就任。奥様の陽子さんは「バイタリティについていくのが大変です(笑)」と話してくれた。

■異色な経歴のオーナーが造る 有機農法による自然派ワイン

武蔵ワイナリーは有機の里として知られる埼玉県小川町のワイナリーである。オーナーの福島有造さんは、銀行員からワイン造りに携わったという異色の経歴の持ち主だ。また酒造りを学ぶため地元の酒蔵で蔵人として働き、その後杜氏も務めた。

福島さんは、どうせなら最も厳しい産業に飛び込んでやろうと、農業を選んだ。当初ぶどう栽培が盛んな長野などを候補地にしていたが、小川町に足を踏み入れてから、今までうまくいかなかった事業が好転するようになり、これも縁だとして福島さんはワイナリーを始めることになった。

植物由来の油を使用する以外は虫避けも手作業で行われるぶどうは、一粒一粒が価値ある宝石のよう。

有機農業を選択した理由は、小川町で有機農業が盛んであること以外にもある。新しく農業を始めるということになったとき、福島さんはどのような農業を始めるかを考えた。そのとき、自分の子どもに胸を張れるものを作りたいと思ったという。

自分が作るものは子どもにも安心して食べさせられるものでありたいという思いがあるからこそ、有機農業を選択したのだ。

しかし小川町はぶどうの産地ではなく、栽培している人もほぼいないという状況だった。そのため、ヨーロッパ系のワインの品種の栽培は難しいだろうと考え、山葡萄の交配種であり、関東の平野でも栽培実績があった小公子を選定した。

福島さんが、心掛けているのはなるべくぶどう本来の力を生かした栽培をすることだという。「人間が手を下す時点で、自然というのはちょっとおこがましいかもしれませんが、肥料を使わず、成長ホルモンを利用した栽培をしています」と語る。

ぶどうなどの農産物を作る際、一般的には肥料を使用する。この肥料というのは主にリン酸、窒素、カリウムである。このうち窒素はぶどう内に残留し、過剰摂取した場合には健康被害を起こすともいわれる。

ぶどうの仕込み中の様子。

しかしこの3つは植物栽培の上では重要な物質。ではこれら抜きで福島さんはどのようにぶどうを育てているのか。

現在のぶどう栽培は、樹勢、樹木の成長する勢いを弱めることが主流になっている。剪定により人間がコントロールできるように樹勢を制御し、実に養分を行き渡らせる。

対して福島さんの農法は、ぶどうを元気にするために枝を伸ばし、樹勢を強めている。葉っぱの脇から出た脇芽の除去こそするが、あとは自然のままだ。ぶどう本来の力を活かすようにすることで、成長ホルモンが分泌され、枝が伸びると同時に根も力強く伸び、肥料がなくともぶどうは元気に育つという。

この栽培法により、現在では小公子以外に、ボルドーの主力品種であるメルローなどの品種も育てられるようになっている。

発酵中のぶどう。

⚫︎有機農業の里 小川町とは?

有機農業のパイオニアである金子美登氏が、小川町で有機農業を弟子に教え始めたことで、小川町全体に有機農業が広まり、有機農家数は現在では全体の10%にも達する。街のあちこちで有機野菜を楽しめる。

■完全有機農法だからこそできるワイン造りの手法と味わい

武蔵ワイナリーでは虫除けは手作業と、ニーム液という植物由来の油を主としており、他の有機農法では使われるボルドー液は使わない。

このボルドー液、殺菌剤として国の法律でも使用が認められている。通常人体に影響はないとされるが、土壌汚染の可能性もあるため福島さんは使用していない。これにより、他よりも長い期間ぶどうの皮を醸造に使用できるという。

武蔵ワイナリー敷地内には販売所があり、ワインのほかにも自社ブランドの日本酒や自家製味噌、地元の有機野菜や食品も購入できる。

ぶどうは皮の近くに栄養分があり、非常に美味しい部分だが、農薬を使っている場合は溶け出す前に除去する必要がある。ボルドー液の場合はそのまま仕込むが、風味に影響が出るともいわれる。

しかし福島さんの場合は、発酵が収束するまで、約一週間ほども漬け込んでおけるという。これによりぶどうのうま味を最大限引き出すことができるのである。

店内で購入したワインとおつまみを一緒にいただくとたまらない。

⚫︎剪定とは? 樹の力を高めるために行う

ワインにおける剪定には、ぶどうの栄養素を樹全体で調節するためなどさまざまな目的で行われる。ぶどうの育て方や狙いによって切り方が異なる上、国や地域によっても異なる。

⚫︎小公子とは?

小公子は山葡萄の研究家、澤登晴雄氏が開発した品種。野生ぶどうに連なる品種で、さまざまな種類の山葡萄品種をかけ合わせて日本で作られた。高い糖度と酸度を持ち、黒く小さい実が特徴的な品種だ。

武蔵ワイナリー
埼玉県比企郡小川町高谷104-1
TEL/0493-81-6344
営業時間/10:00~17:00 定休日/無休
アクセス/関越自動車道「嵐山小川IC」より車で約7分

■天然酵母の美味しいワイン

「SEXY 2021」 (小川ヤマソービニオンBlanc de Noirs 2021 Mizunara)/750ml 8800円

赤ワイン用山ぶどう品種「ヤマ・ソービニオン」を白ワインの造り方で仕立てた一本。ミズナラの新樽で熟成させ、カリンや洋梨のような印象にミズナラの香りが加わる。

原材料名:ぶどう(埼玉県小川町産)
品種:小川ヤマソービニオン100%
酵母:天然酵母 アルコール度数:12度

■カンパイに相応しい一本

KANPAI 2024 /750ml 3850円

小川町にある、乾杯には地酒や地元産の飲み物でという「乾杯条例」。その最初の一杯にふさわしいように造られた微発泡ワイン。ラベルはぶどうを盗み食いしたアライグマ。

原材料名:ぶどう(埼玉県小川町産)
品種: 小公子100% 
酵母:天然酵母
アルコール度数:13度

■特別な熟成を経た濃厚さ

小川 小公子 2020 Extreame /750ml 1万1000円

糖度を29度まで高めたぶどうを、アメリカンオーク新樽にて約2年熟成させた。小公子の強みを最大限に引き出し、葉巻のような深みと、しっかり残った酸のバランスが絶妙。

原材料名:ぶどう(埼玉県小川町産)
品種:小公子100% 酵母:天然酵母
アルコール度数:13度

■日本酒造りの経験を活かした革新的なワイン造り

武蔵ワイナリーのこだわりは育て方にとどまらない。福島さんの日本酒に携わった経験を活かしたワイン造りが行われている。通常ワイン造りではぶどうを潰し、それから発酵を始めるが、福島さんはぶどうを潰す前にまず酒母というものを使用する。

この酒母というのは日本酒で使われるもので本来は麹米・麹・仕込み水を混ぜ合わせた「酒のもと」のことである。福島さんはこれのワイン用を作って使用している。

手作業で葡萄の房から実をはずす。

これによって、例えば1tのぶどうをつぶして発酵させる際、通常なら1週間かかるところ、最初に発酵が始まった酒母を用意しておけば、翌日にはすでに発酵が始まるという。これは発酵期間の短縮以外にも、リスクを軽減する利点も存在する。

大量の材料でいきなり発酵を始めてしまうと、失敗した場合に材料すべてが無駄になってしまう。しかし、最初の段階で酒母を作り、少量づつ発酵して様子を見ていけば、うまくいかなかった場合も少量の部分が犠牲になるだけで済む。

福島さんは、1tに対して30㎏から40㎏の原料を先に発酵させておくようにしているという。日本酒に関わり、現在も麹室屋や醸造設備まで備える福島さんと武蔵ワイナリーだからこそできるワイン造りといえるだろう。

武蔵ワイナリーではぶどうに付着した天然酵母を使ってワイン造りを行っている。酸化剤やおり引き、補糖、補酸も行わない。

さらに武蔵ワイナリーでは新たな挑戦として、日本の木を使用した樽によるワイン造りも行っている。ジャパニーズオークともいわれるミズナラをはじめとして、ヒノキ、スギなどの樽を使用している。

これは福島さんが日本の樽メーカーに依頼して作ってもらっている。日本の木を使用した樽はそれぞれ独特の香りを持ち、ワインに変化を与えてくれるという。

現在は樽の寿命に合わせて海外産から切りかえている。このように革新的な取り組みを行う武蔵ワイナリーは、まさに有機ワインの先端を走るワイナリーといえるだろう。

⚫︎武蔵ワイナリーの活動とは?

武蔵ワイナリーでは毎年秋に行われる「小川のワイン祭」をはじめ、GWには「WINE WEEK」などワイナリーの敷地内でさまざまなイベントを行っている。

イベントでは武蔵ワイナリーの多彩なワインを楽しむことができるほか、造り手自らが自社畑の案内をするワイナリーツアーも。夏には収穫イベントも開催。

⚫︎無添加トンカツと有機ワインのマリアージュを味わえる

武蔵とんナリー

東武東上線・JR八高線「小川町駅」近くにある「武蔵ワイナリー駅前店」の2階、「武蔵とんナリー」では埼玉県産の地元豚、小川町の有機野菜とワインを楽しむことができる。うま味がギュッと詰まったトンカツとワインの相性は絶妙だ。

武蔵ワイナリー駅前店

埼玉県比企郡小川町大塚47-3 2F
TEL/0493-81-3241
営業時間/土、日曜・祝日10:00~18:00(とんナリーは土、日曜・祝日11:00~LO14:00)
定休日/月〜金曜
アクセス/東武鉄道またはJR「小川町駅」より徒歩約2分

⚫︎武蔵ワイナリーが楽しめる直営店

武蔵ワイナリー玉成舎直売所では、ワインのほかに福島さんが手がけた日本酒などを少量から楽しめる角打ち、販売を行っている。不在時は1階にある「有機野菜食堂わらしべ」にて購入が可能。

武蔵ワイナリー玉成舎直売所

埼玉県比企郡小川町小川197
TEL/080-7331-8870
営業時間/11:00~21:00
定休日/月、火曜

写真提供/武蔵ワイナリー 撮影/遠藤 純

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