5103630年後にコーヒーは無くなる? コーヒー業界が抱える課題|地球規模で考えるサスティナブルな世界

30年後にコーヒーは無くなる? コーヒー業界が抱える課題|地球規模で考えるサスティナブルな世界

男の隠れ家編集部
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昨今「サスティナブル」という言葉を耳にすることが日に日に多くなってきている。とくに、アウトドア好きや関係者は、サスティナブルな活動・行動について日頃から考えているのではないだろうか。

コーヒー業界でも、サスティナブルな環境・労働・持続性について常に課題としてあげられるトピックだ。地球温暖化やゴミ問題、労働の格差が生まれている現代社会において、コーヒー業界で働く人々も、その打撃を受ける職業といえるだろう。

では、コーヒー業界の「サスティナブル」とは一体どのような課題があるのか?是非、本記事を読む読者にも、その課題を知っていてもらいたい。

今のままでは30年後にコーヒーは無くなる可能性がある

地球温暖化が進む地球で起きている問題。それは、異常な気候変動によって「コーヒー豆」の生産が危機的状況にあることだ。実は、コーヒー豆の生産が危機的状況にあることは、コーヒー業界に携わっていると必ず耳にする内容だろう。

起床後、1日の始まりとして飲んでいたブラックコーヒー。仕事の合間に飲むカプチーノ。休日の癒しとして飲んでいたカフェ・ラテ。毎日いつでも飲めるコーヒーが、約30年後の2050年には飲めない飲み物として扱われている。

では、どうして30年後にコーヒーが飲めなくなってしまうのか。その内容をこれから説明しよう。

地球温暖化による異常な気候変動

先述したように、地球温暖化によってコーヒー豆の生産が非常に難しい状況に陥っている。温室効果ガスの影響を直に受ける地域も存在するため、コーヒー業界は温暖化による危機的状況が長期間にわたって続いているのだ。

そもそも、コーヒー豆が生産されている地域がどこなのかはご存知だろうか?

コーヒー豆は、コーヒーベルトと呼ばれる赤道を中心とした熱帯地域「アフリカ」「中南米」「東南アジア」付近で主に生産されている。この地域で「コーヒーノキ」と呼ばれる木を栽培し、コーヒー豆は生産されているのだ。

数千万人ものコーヒー農家によって栽培されるコーヒー豆なのだが、近年では異常な気候変動によってコーヒーノキを安定して育てられずにいる。

基本的に、スペシャリティコーヒーと呼ばれる高品質なコーヒー豆は、気温の寒暖差が激しい標高1000〜2000m付近の山の上で育てられる。標高が高い地域ほど「昼は暑く、夜は寒い」といった寒暖差が生まれるため、甘味や香り、酸味などの旨味が濃縮された美味しいコーヒー豆を育てることができるのだ。

しかし、温暖化によって世界の平均気温は上昇しており、標高が高い地域でも寒暖差という条件は年々失いつつある。さらに、気候パターンが変化したことで、気温が上がるタイミング・雨が降るタイミングの予測が困難となり、栽培に悪影響が出ている地域も増え続けているのだ。

地球温暖化というのは気温を上げてしまうだけではなく、気候パターンも変化させてしまうため、コーヒー業界のみならず他業種の生産者にも大打撃を与えているに違いないだろう。

異常な気候変動が改善されず時間が過ぎると、いつの日かコーヒーは高級品として扱われ、日常的に飲めない飲み物になってしまうのだ。

温暖な気温や気候は害虫・菌にとって最適な環境

気温や気候といった自然現象だけが、コーヒー豆の栽培に影響を及ぼしているわけではない。先述した内容のほかにも、害虫や菌などによってコーヒーノキがきちんと育てられないということも重要視しなければならない。

温暖な気温や気候は、害虫・菌にとって最適な環境といえる。とくに、コーヒーさび病という病気に悩まされるコーヒー農園が近年多くなっていることも事実としてある。

コーヒー豆を育てる環境の管理が徹底されていたとしても、やはり害虫・菌などからの攻撃を全て防ぐことはできないだろう。害虫や菌も自然の一部。その自然の一部を人間の手で全て消滅させることは実質不可能だ。

だが、日々の私生活を変えていくだけで気温や気候の不自然な変化を少しでも止めることはできるかもしれない。人間が考えだした産物によって、気温や気候が不自然に変わったのならば、責任を持って自分らが食い止めなくてはならないはずだ。

例えば「必要のない時にエアコンを使わない」「車を使わないでいい距離は自転車や歩いて移動する」「飲み物はタンブラーに入れる」など、自分らが日頃からできるサスティナブルな行動を考え、実施することがコーヒー界でもとても必要になってくる。

自然界の異常な気温・気候の変化はコーヒー界だけの問題ではなく、地球規模で考えるべき内容だ。自然と人間が共存できる世界が未来に続くようにするには、サスティナブルな考えを持つことが非常に重要になるだろう。

コーヒー界が掲げるプロジェクト

コーヒー界は、自然を守り、生産者が豊かに暮らしながら持続してコーヒー豆が育てられるように世界規模で実施されているサスティナブルプロジェクトが存在する。

人為的な環境破壊は、コーヒー農園のみならず、多くの自然や動物に被害が広がっている。豊かな自然に戻し、動物たちが幸せに暮らしていける環境を保ち続けることが人々に与えられた課題とも言えるだろう。

Bird Friendly(バードフレンドリー)

引用元:バードフレンドリー®コーヒープログラム

渡り鳥が休息する自然環境を守るプロジェクト「BirdFriendly」。コーヒー農園の自然環境と渡り鳥が深い関係であることが判明したことで創設されたプロジェクトだ。

1990年代後半、北米と中南米を行き来する渡り鳥の数が減少していることを専門家が確認。事態を重くみたワシントンD.C.にあるスミソニアン協会が「スミソニアン渡り鳥センター(SMBC)」を設立した。

渡り鳥は、シェードグロウン(木陰栽培)と呼ばれる自然林に近い環境を休息場所として、そこに生息する昆虫などを餌に生活している。しかし、低コスト化のために森林を切り開き、収穫を機械で行うコーヒー農園が増えたことで、渡り鳥の休息場所である自然環境が減少した。

それに伴い、休息場所である自然環境を失った渡り鳥の数も次第に減っていったのだ。そこで、SMBCは渡り鳥が休息できるより自然の環境に近いコーヒー農園を維持するために1999年にBirdFriendlyの認証基準を設定した。

認証基準をクリアしたコーヒー農園のコーヒー豆を高い価格で取引きすることで、生産者を支援しながら渡り鳥と自然林を守るプロジェクトがBirdFriendly®︎認証ということだ。

BirdFriendlyの認証を受けたコーヒー豆を取り扱っている場合は、コーヒー袋の裏などにロゴを印字して販売している。コーヒー農園の環境維持と、動物の生息に深い関係があるプロジェクトなので、是非コーヒーを買うときはコーヒー袋の裏などをチェックしてみてほしい。

Orang Utan Coffee(オランウータンコーヒー)

引用元:コミュニカフェインターナショナル

絶滅危惧種に指定されているオランウータンの保全活動として、インドネシアで創設されたプロジェクト「OrangUtanCoffee」。オランウータンの危機的状況を救うべく活動している非営利団体「PanEco(パンエコ)」が中心となり、世界的に有名なバリスタ・ロースター・コーヒーマシンメーカーによって創設されたプロジェクトだ。

もともとPanEcoは、オランウータンの保全活動「Sumatran Orangutan Conservation Programme(S.O.C.P)」を行っていた。そして、コーヒー界のプロフェッショナルたちがPanEcoの保全活動に賛同し、スタートしたのが「OrangUtanCoffee」だ。

Orang Utan Coffeeプロジェクトは、オランウータンが生息する自然環境の保護やコーヒー生産者の生活が豊かになることを大きな目的としている。

オランウータンの住処である熱帯雨林は、森林火災や違法伐採によって年々減少しつつある。住処である熱帯雨林が減少すると共に、オランウータンの数も減少し危機的状況にあるのだ。熱帯雨林を必要とするオランウータンを救うことは、ほかの動物を守ることにも繋がる。

そして、同プロジェクトを創設すると同時に、生産者とともにコーヒーの品質向上を目的とした「オランウータンコーヒーラボ」を設立した。コーヒー栽培から抽出までを検証できる設備が現地に導入されたことで、より高品質なコーヒー豆を管理できるようになった。

インドネシア産オランウータンコーヒーは、たくさんの人の想いが詰まって育てられているコーヒー豆だ。このコーヒーを購入することで動物や地球を守ることにも繋がるので、見かけたときは是非一度手にしてみてほしい。

Rainforest Alliance(レインフォレスト・アライアンス)

引用元:レインフォレスト・アライアンス

森林や生態系を守り、農園で働く労働者の生活を保証するプロジェクト「Rainforest Alliance」。カエルのマークが目印となっている同プロジェクトは、厳しい基準をクリアした農園に「レインフォレスト・アライアンス認証」が与えられる。

同プロジェクトは、コーヒーのみならず紅茶・バナナ・チョコレートに関係する商品などにも緑のカエルマークが施されている。そのため、日常生活を送っている中で、一度はRainforest Allianceのマークを見かけたことがあるかもしれない。

このカエルマークのついた商品を買うことで、生産国の自然保護・労働者の生活補助に貢献することになる。

では、Rainforest Allianceがカエルをモチーフにしている理由をご存知だろうか?

それは、カエルにとって住みよい環境であるか指標になるからだ。とくに、アマガエルは極めて優秀な指標生物として考えられている。実は、南極以外の全ての大陸にアマガエルは生息していることを知っている人はそう多くはないはずだ。

アマガエルの生息が発見できることは、自然生態系のバランスが取れている証になる。アマガエルは、環境の変化にとても敏感なため、住みにくくなるとその土地では生存できなくなるのだ。

同プロジェクトに認証されたコーヒーを購入することで、その地域の自然を守り、人々の暮らしの支えにもなる。是非、美味しいコーヒーを味わいながら、サスティナブルな社会の実現を一緒に目指していこう。

コーヒー豆の高騰と生産者・労働者の減少

現在、コーヒー豆の取引価格が上がっていることはニュースにも取り上げられる内容だ。コーヒー業界が受ける経済的打撃は、生産者・労働者はもちろんのこと、コーヒーショップで働くバリスタやロースター、そして消費者にとって決して良い状態ではない。

コーヒー豆の価格が高騰している理由は、主に2つある。

  • 世界的な天候不順によって生産量が落ちている
  • コーヒー農園を離れる生産者・労働者が増えている

ここでは、コーヒーの経済と労働について詳しく説明しよう。

天候不順によってコーヒー豆の価格が高騰

世界一のコーヒー豆生産国として知られるブラジル。このブラジルの天候不順が、コーヒー豆の価格に大きく関わっている。

2021年、ブラジルのコーヒー農園では、春先の重要な時期に低温と降雨不足によって生産量が著しく低下し、コーヒー豆の相場が高騰しているのだ。

ブラジルのコーヒー豆生産量は、全世界の約35%程度を占めている。そして、スペシャリティコーヒーとして扱われる品種「アラビカ種」の生産量もブラジルが世界最大といわれている。

本来、ブラジルでは春先に十分な雨が降ることで5月〜8月にかけてコーヒー豆の収穫が行われる。

しかし、2021年は例年よりも悪化した天候不順・悪天候によってコーヒー豆の生産量・収穫量が低下。コーヒー豆の収穫量が30%減少する見通しとなった。

それに伴い、コーヒー豆を買い付けようと取引が殺到し、先物価格が高騰するといった経済状態になる可能性があるのだ。スペシャリティコーヒー業界では、品質の良いものを確保するために高い価格で取引されることが多く、生産量が少ないとわかればより高価格での取引が余儀なくされる。

ブラジルは、天候不順以外にも霜害による被害も多発しているため、生産量の低下は相当な被害といえるだろう。スペシャリティコーヒーを専門としているお店でも、コーヒーの価格を値上げするなど戦略の見直しがきっと迫られているはずだ。

生産者・労働者の減少

そもそも、コーヒー豆は「コーヒーノキ」から取れる種子が原料となっている。コーヒーノキで育った赤い果実を「コーヒーチェリー」と呼び、このコーヒーチェリーの果肉を取り除く精製処理を行ってから世界中で取引が行われる。

だが、コーヒーノキを長い月日をかけて丹精に育て、精製処理を行い、取引が成立した地域に出荷するといった労力は、経済的な観点でいうと非常に割りに合っていない。

大規模なコーヒー農園は、多くの支援や取引によって安定した生活を確保できているところが多いだろう。しかし、小規模なコーヒー農園は、経済基盤が安定しにくく豊かな生活を送れているとは決して言えない。

地球温暖化や害虫、さび病などの被害が多ければ、収穫量が減少し、取引自体が行えないことも事実としてある。コーヒー豆の取引量が少なければ、それだけ豊かな暮らしは遠のいてしまう。

カフェで飲む美味しいコーヒーを生産している生産者の多くが、貧困化を余儀なくされていると言っても過言ではない。安定した取引ができなければコーヒー農園を営むことは難しく、生産者・労働者が減少していくことにも繋がる。

生産者・労働者の減少が起これば、コーヒー不足はさらに加速していくことだろう。

日本と海外における認証コーヒーの現状

最後に認証コーヒーの現状について解説する。そもそも認証コーヒーとは、サステナビリティや栽培方法、生産者支援などの目的により、非営利団体や第三者機関の一定基準に基づいて評価され、合格したコーヒーのことを指す。

認証コーヒー豆の生産者には、保証価格とプレミアム価格が支払われる。この支払いが実施されている理由は、生産者の収入安定化や人権の保護にある。

ハイクオリティのコーヒー豆を生産する者に十分な成果を支払うことで、結果的にコーヒー豆の普及や発展に期待が持てるということだ。

この認証コーヒーの現状について、「日本」と「海外」の2つに分けて解説する。それぞれの現状を理解することで、今後コーヒー業界に求められるものが見えてくるはずだ。

日本における認証コーヒー

日本では主に5種類の認証コーヒーが流通している。具体的には、「フェアトレードラベル認証」、「バードフレンドリーコーヒー」、「レインフォレストアライアンスコーヒー」「グッドインサイドコーヒー」、「コンサベーションコーヒー」が挙げられる。

これら複数の認証コーヒーが存在するものの、消費者からの認知度はそこまで高くない。「名前だけは知っている」という人が全体の半数以下であり、認証コーヒーの内容まで知っている人は全体の2割にも満たない。

つまり、認証コーヒーという名称なのにも関わらず、名前や内容を知らない人が半数以上も存在するのだ。これは日本における認証コーヒーの大きな課題だと言える。

今後、市場の中で生き残るためには、消費者に認証コーヒーの名前や内容を知ってもらい、実際に購入してもらう必要がある。しかし、現状はそれができていないため、生産から流通までの仕組みを整えること、さらにはその仕組みを活用して、生産者や販売業者が積極的に取り組みを起こすことが重要となる。

とはいえ、日本の認証コーヒーはさまざまな団体・企業が取り組んでいるが、消費者による認知はあまり進んでいないのが現状だ。そのことが原因で、採算が取れなくなった認証コーヒーの発売中止、または新規導入の取りやめなどが発生している。

海外における認証コーヒー

海外の認証コーヒーにおいては、日本よりも順調に認知度を広げている。そもそも海外における認証コーヒーは、1960年代にヨーロッパやアメリカを中心に普及し始めた。

その後、流通を少しずつ拡大していき、2002年にはレインフォレストアライアンス認証コーヒーが流通し始め、それ以外にもたくさんの認証が開発されている。

認知度は日本に比べてかなり高く、ドイツでは30%、イギリスでは50%、オランダでは90%以上だと言われている。

これほど認証コーヒーが認知されている主な理由は、キリスト教的倫理観に基づく社会貢献活動への関心の強さである。そのほか、政治家の理解によるフェアトレード政策の策定、公共機関におけるフェアトレード商品の採用なども影響している。

普及させるプロジェクトを国全体で推進している影響も大きく、日本に比べて広範囲で普及していることがわかる。日本における認証コーヒーを普及させるためには、この考え方や思想を、日本でも積極的に取り入れる必要があると言えるだろう。

まとめ

コーヒー業界の課題は、現在も完全な解決に至ってはいない。

当たり前かのように飲めているコーヒーだが、30年後の2050年には地球上から消えてしまう存在であることも我々消費者は知っておくべき事実だろう。

このコーヒー業界が抱える課題を解決するには、一人ひとりの協力も必要だ。2050年は刻一刻と迫っている。自然・動物・生物を守り、コーヒー農園を支える人々の生活が豊かになる個人が協力すれば必ず解決できるはずだ。

コーヒーの未来のためにも、日頃からできるサスティナブルな活動・行動を是非考えてみてほしい。

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