狭間や石落を持たない
太平の世の品格ある天守

宇和島藩家老の桑折家から移築したという長屋門をくぐり、城内へと入る。右手の緩やかな坂を上っていくと、石垣をマメヅタが覆い、上の斜面からも鬱蒼と茂る樹木が枝を伸ばしている。その緑の濃さと静けさに、野山を散策しているような気分になる。

「藩主だった伊達家は明治時代に城を買い戻し、後に市に寄贈しました。その際『貴重な自然を保つように』と条件を付けたため、宇和島城は変に観光地化されていないんです」

案内人の高橋睿さんと菊池芳紀さんの解説を聞きながら、江戸期から続く植生を眺める。植物は450種に上り、独自の生態系のためマツ、スギ、ヒノキ、ツツジ類があまり見られない。

藤兵衛丸に着くと、高さ10m以上の見事な野面積の高石垣が姿を現した。これは、文禄4年(1595)、宇和郡の領主となった藤堂高虎によるもの。後に築城の名手として江戸城や大坂城などを手掛けたが、この城は彼の最初期の傑作だ。慶長6年(1601)、板島丸串城と呼ばれていた城を、高虎は近世城郭に変貌させた。

その後、高虎が今治へ移ると元和9年(1615)に伊達政宗の長男秀宗が封じられ、板島は宇和島と名を改められる。現在の天守は伊達氏二代宗利が城を改築した際に再建されたもので、寛文6年(1666)に完成した。

二之丸を抜け、到着した天守は端正で上品、威圧感がない。南予の明るい日差しを浴びて白壁が輝いている。威圧感がないのは、狭間や石落など防御の備えを持たないせいもある。

太平の世に再建された天守は戦闘色が薄い。内部も障子が張られていたり、最上層には竿縁天井があったりと穏やかな雰囲気。窓から眺めれば、紺碧の空と宇和島湾が目に眩しい。海風を感じ、ゆったりと流れる時間に身を委ねた。

うわじまじょう
愛媛県宇和島市丸之内
TEL:0895-22-2832(天守窓口)
開館時間:9:00〜17:00(10月〜3月は16:00)
休館日:なし
入場料:200円
アクセス:JR予「宇和島駅」より徒歩約35分