106654【3大グルメ企画】第十四章、下北沢「Curry Spice Gelateria KALPASI」編|レシピなき料理、感覚で作る本物のカレー

【3大グルメ企画】第十四章、下北沢「Curry Spice Gelateria KALPASI」編|レシピなき料理、感覚で作る本物のカレー

男の隠れ家編集部
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【3大グルメ】は、日本人が大好きな人気グルメ「ラーメン」「カレーライス」「ハンバーガー」を提供する、こだわりの飲食店を紹介していく連載企画です。

セレクトのポイントは「老舗」と「老舗店主のおすすめ店」。 今回は、本格派カレーの名店「カルパシ」の2号店として誕生し、カレーとジェラートの融合で新たな食体験を提供する「Curry Spice Gelateria KALPASI」をピックアップ!

■営業マン時代の縁が結んだ、異色の飲食店デビュー

店長の内田さんは、飲食業界とは無縁の世界で働いていた。約20年前、営業マンとして働いていた会社で知り合ったのが、現在の社長である黒澤さんだった。もともとは先輩後輩の関係で、互いが元の会社を離れた後も定期的に会う関係は続いていたそう。

そんなある日、黒澤さんから「下北沢に2号店を出すから、店長をやってくれないか」と声がかかった。

カレーを作ったこともなく、包丁すら握ったことのない内田さんだったが、「それでもいい」という言葉に背中を押され、飲食の世界へ足を踏み入れることになった。

店長の内田さんは、入店当初ジェラート担当だったという。

■千歳船橋の名店から生まれた、大衆向けの2号店

営業マン時代からカレーをこよなく愛していた黒澤さんは、約10年前に千歳船橋で完全予約制の本格カレー店「カルパシ」をオープンさせた。確かな技術と独自のこだわりで、瞬く間に評判を呼ぶ名店となった。

矢印の先に、カレーとジェラートの香りが待っている。

そして2020年、下北沢に2号店を構えることになる。千歳船橋の店が常連客に支えられる隠れ家的な存在だったのに対し、下北沢の店は「誰もが楽しめる大衆向けのカレー店」というコンセプトで誕生した。

子供が食べても大人が食べても美味しい。万人が喜んでくれることを目指した店づくりが始まった。

■コロナ禍を乗り越えた、チームの結束力

オフィス街とは異なり、様々な人が行き交う下北沢。決まった顔ぶれのお客さんではなく、毎日新しい出会いがある土地柄だ。

内田さんは「今日来たお客さんを感動させれば、その後ろにいる無数の人たちにドミノ倒しのように広がっていく」と考えている。そんな想いを胸に、店は6年目を迎えている。

付け合わせは、前日の担当者が買ってきた野菜次第で変わるのも面白い。

開店直後に訪れたコロナ禍は、店にとって最大の試練だった。とにかくお客さんが来ない。内田さんは精神的に追い詰められる厳しい日々を送っていた。

しかし、そんな中でも救いとなったのが定期的に舞い込む催事の依頼だった。本店のお客さんが繋いでくれた縁もあり、百貨店での催事には積極的に参加し、売り上げを作っていった。

現在の店を支えるのは、内田さんを含む4人の社員だ。開店当初は内田さんと女性2人の体制でスタートしており、その女性もまた本店のお客さんだったという過去を持つ。様々な縁に支えられながら、店は今なお成長を続けている。

■レシピなき料理、感覚で作る本物のカレー

カルパシのカレーには、明確なレシピが存在しない。時間ではなく「このくらいの湯気が立ったら」「この香りが立ったら」といった状態で判断して次の工程に進むのだ。

カレーの基本は決まっている。クミン、ターメリック、チリ、コリアンダーなどのスパイスを使っていれば、それはカレーだ。

しかし、火加減やテンパリングの有無、投入のタイミングで味は大きく変わる。そうした微妙な差が、カルパシの味を生み出している。

4種類のカレーから好みを選び、ライスの量も自在に。訪れるたびに新しい組み合わせが楽しめる。

店では月に1、2種類のカレーが入れ替わり、2か月もあれば全種類が刷新される。カレーの種類を変えるのは、店のスタッフたちだ。

「そろそろ変える?」と相談しながら、メニューは進化し続けている。付け合わせも毎日変わり、訪れるたびに新しい発見がある。

■雑誌掲載が呼んだ、国際的な注目

数年前、ある出来事が店に大きな変化をもたらした。「東京で訪れるべきレストラン」を紹介する英字雑誌に掲載されたのだ。すると、それまでとは客層が一変した。

「カレー百名店」に3年連続で選出されるなど、確かな人気を誇る。

特に中国からの観光客が団体で訪れるようになり、一時期は店内が海外のお客さんで溢れかえる状況が続いた。もちろん、中国以外からの訪問者も絶えない。

現在は落ち着きを見せているが、カルパシは下北沢という街で、国境を越えた美味しさを提供する店として認知されるようになった。

■カレーとジェラート、意外な組み合わせの妙

店の大きな特徴は、カレーとジェラートを同時に楽しめることだ。当初、内田さんはジェラート担当として店に入った。来店客の半数以上がジェラートも注文し、最初は頼んでいなくても、周囲を見て後から追加する人も多い。

カレーのスパイシーな余韻を、ジェラートの冷たさと甘さが包み込む。そして、ジェラートにもまたスパイスが潜んでいる。食事とデザートの境界を曖昧にする、新しい食体験がここにはある。

色とりどりのスパイスが棚に整列。店の味を支える道具たちだ。

■個性豊かな4種のカレーが織りなす味の世界

現在(取材時)提供されている4種類のカレーは、それぞれが異なる個性を持っている。

最も辛さ控えめなのが「サンバル」だ。オリジナルのサンバルパウダーに、ツールダール(豆)や根菜がたっぷりと入ったインド定番の豆カレーである。

一口食べると、豆の優しい甘みとホクホクとした食感が口の中に広がる。スパイスは主張しすぎず、根菜の自然な旨みを引き立てる役割に徹している。

スープのようにさらりとした質感で、何杯でも食べられそうな軽やかさがありながら、豆の栄養がしっかりと感じられる。子供から大人まで、誰もが安心して楽しめる味わいだ。

辛さや味わいがそれぞれ異なり、組み合わせも自由に楽しめる。

中辛に位置する「レモンチキン」は、たまねぎとトマトの甘みをベースに、レモンの爽やかな酸味が際立つ一品だ。チキンは柔らかく煮込まれ、噛むたびに肉汁とカレーのルーが一体となって口の中に広がる。

トマトのコクとたまねぎの甘みが優しく包み込み、そこにレモンの酸味がアクセントとして加わることで、重たくなりがちなカレーが驚くほど軽やかな印象に仕上がっている。食後にもたれることなく、むしろさっぱりとした後味が心地よい。

最も辛さが際立つ「ポークビンダルー」は、ゴア地方の伝統的なポークカレーだ。赤ワインビネガーの酸味と、たっぷり使われたスパイスの辛味が特徴である。

一口目から、ピリッとした刺激が舌を直撃する。しかし、ただ辛いだけではない。赤ワインビネガーの深い酸味が辛さを引き締め、豚肉の旨みと絡み合って複雑な味わいを生み出している。

カレーの概念を拡張するのが「チャイニーズポークキーマ」だ。五香粉を使用し、鶏がらスープをベースに中華カレーの手法で仕上げたキーマカレーである。

ひき肉の食感とともに、五香粉の独特な香りが鼻腔をくすぐる。八角やシナモンを含む五香粉の複雑な香りが、カレーのスパイスと不思議なほど調和している。

鶏がらスープのまろやかさが全体をまとめ上げ、中華料理のような優しさとカレーのパンチが同居する。インドと中国、二つの食文化の架け橋のような味わいだ。

■スパイスが主役の4種のジェラート

ジェラートには、スパイスを軸にした個性的なフレーバーがそろう。

なかでも存在感を放つのが「花椒ショコラーデ」。最初に感じるのはチョコレートの濃厚な甘み。そのあとに花椒の刺激が追いかけ、舌の感覚が一変する。

甘さと辛さが交互に現れ、冷たいジェラートの中で複雑な味の層をつくる。チョコレートの深みとスパイスの鋭さがぶつかりながらも、最後にはひとつの味としてまとまる仕上がりだ。

2種類ずつカップに盛り付けられたジェラート。どの組み合わせから食べるか迷う楽しさもある。

「ブルーチーズローストクミンシード」は、見た目よりもバランス重視の一品。ブルーチーズのクセをいくつかのチーズで和らげ、味に厚みを持たせている。

クミンシードの香ばしさが加わることで、チーズの塩味とスパイスの香りが自然に行き来する。ブルーチーズが苦手な人にも受け入れやすく、チーズ好きには満足感のある仕上がりだ。

「カルダモンマスカルポーネラッシー」は、より穏やかな印象。マスカルポーネのやわらかなコクとラッシーの酸味が自然に溶け合い、舌に残る重さを感じにくい。

カルダモンの香りは控えめで、全体を引き締める役割にとどまっている。食後の口直しとしても適しており、スパイス料理との相性が良い。

「マサラチャイ」は、口に入れた瞬間に香りが立ち上がるタイプだ。シナモンやカルダモン、ジンジャーなど、チャイを構成するスパイスが一斉に広がり、ミルクの甘みと合わさって濃厚な味わいになる。

香りの強さとまろやかな甘さのバランスがよく、まるで淹れたてのチャイをそのまま凍らせたようだ。

■点数ではなく心に残る体験を届ける

「カレーに点数はつけられない」と内田さんは言う。お金をいただいている以上、一定の美味しさは担保されている。それ以上は好みの問題だ。

しかし、1年後に思い出せるのは、カレーの味そのものではなく、店の空気や受けた接客、心に残る体験だと内田さんは考えている。だからこそ、小さな気配りの積み重ねを大切にしている。

カウンター越しの厨房と小さな気配り。心に残る時間を届ける。

水を飲み干したお客さんのグラスに氷が当たる音がしたら、言われる前に水を注ぐ。ジェラートを頼みたそうにきょろきょろしているお客さんに気づいたら、声をかける前に動く。

夏場、外で並ぶお客さんには、紙コップではなくステンレスのコップに氷を入れて渡す。こうした少しの気遣いの積み重ねが、誰かの心に刺さることがある。そんな小さな立ち回りを、内田さんはスタッフと共有している。

■飲食業界の常識を変えたい

別館のテーブル席。スタッフの気遣いを感じながら、食事を楽しめる空間。

内田さんには、もう一つの想いがある。それは、飲食業界の労働環境を改善することだ。

過重労働、長時間労働、低賃金。それが当たり前とされている業界の常識を変えたい。 現在、スタッフは全員が週休2日を確保しており、休憩時間もきちんと設けている。

店舗を増やすよりも、今の店を長く続け、今いるスタッフが安心して稼げる環境を整えたい。それが内田さんの願いだ。

■消費される側ではなく、長く愛される店へ

下北沢には次々と新しい店ができる。流行は移り変わり、店は消費されていく。その現実を内田さんは理解している。 だからこそ、長く続けることに意味があると考えている。

新しい店が増えるほど、消費される側に回る可能性も高まる。それでも、続けていくことが自分なりの答えだと感じている。

開店から6年。コロナ禍を乗り越え、国際的な注目も集めながら、下北沢の日常に溶け込むように続いている。飲食未経験から始まった内田さんの挑戦は、今も進行中だ。

レシピなきカレー、感覚で作る本物の味、そして心に残るおもてなし。Curry Spice Gelateria KALPASIには、食を通じた新しい体験と、人と人をつなぐ温かさがある。

Shop Data
Curry Spice Gelateria KALPASI

東京都世田谷区北沢2丁目12−2 サウスウェーブ下北沢1階
営業時間11:30~21:00(L.O20:00)
定休日:木曜日
アクセス/京王井の頭線・小田急線「下北沢駅」徒歩2分

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