62225明治期に姿を消した銘酒「千歳」が150年の時を経て復活! 古来の製法・原料にこだわった日本酒の味わいやいかに

明治期に姿を消した銘酒「千歳」が150年の時を経て復活! 古来の製法・原料にこだわった日本酒の味わいやいかに

男の隠れ家編集部
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古くから国内で作られてきた日本酒。酒蔵は国内に1,400以上あると言われており、各蔵で出している銘柄の総数は1万を超えるという。古いものから新しいものまで多種多様な日本酒が生み出されているが、長い歴史の中でなくなってしまった銘柄も少なくない。

しかし、そんな中でも古来の酒造りに想いを馳せ、明治期に姿を消した銘柄「千歳(せんさい)」を復活させた酒蔵がある。今回は、兵庫の奥丹波で300年の歴史を持つ山名酒造が醸した、千歳の魅力を紹介しよう。

■そもそも山名酒造って聞いたことある?

2021年より復刻ブランド「千歳」がリリース。写真右は山名酒造の12代目・山名洋一朗さん

読者の中には初めて山名酒造の存在を知った人もいるだろう。そこで、まずは酒蔵について紹介する。

山名酒造の創業は、1716(江戸享保元)年のこと。山々に囲まれた丹波市市島町に建ち、古くから続く製法で日本酒を醸している。

酒造りに使用している米は、“酒米の王様”とも呼ばれる「山田錦」をはじめ、希少な酒米「野条穂」や、2017年に品種登録された「Hyogo Sake 85」など。いずれも兵庫県産の米の中から厳選した品種だ。

そして、米麹や仕込み水といった原材料だけでなく、和釜や木桶など昔ながらの道具を使用し、極上の酒が生み出されてゆく。

ちなみに、山名酒造で醸している蔵人は、日本三大杜氏の一つ「丹波杜氏」に属している。古くは剣菱や男山といった銘酒も造ってきた職人集団で、往時の製法や技能が現在も伝わっている。

■150年の歴史を経て蘇った「千歳」とは

手作りで生み出される千歳は、明治維新の頃に生産されなくなったという。そして、千歳が途絶えた後は「萬歳(ばんざい)」が造られ、1997年に誕生した「奥丹波」が山名酒造を代表する日本酒となる。

千、万、億(奥)と銘柄の桁は順に増えていったが、当蔵の12代目を継いだ山名洋一朗さんが着目したのは、原点である千歳だった。

千歳の製造には古くから伝わる酒母製法を踏襲し、醪(もろみ)の発酵には吉野杉で造られた木桶を使用。蔵内に住み着いた微生物の働きにより、独特でまろやかな味わいの酒へと仕上がる。そして、試行錯誤を繰り返した結果、2021年に千歳が復活を果たしたのだ。

2022年4月に発売された千歳シリーズは全3種類。酒米や生産者、育成年などによって異なるが、素材の良さが引き出され、それぞれの特徴を生かした味わいが楽しめる。

■千歳の気になる味わいは?

復活した千歳の味を確かめるため、実際に飲み比べをしてみることにした。日本酒の肴に選んだのは、さつま揚げや冷奴。そして山名酒造が公開している肴レシピの中から「和中華海鮮とろろ」をチョイス。

それぞれの味わいを見ていこう。

千歳 Hyogo Sake 85

2017年に開発された兵庫県の酒米「Hyogo Sake 85」を使った純米酒。やや甘口でライチを思わせる爽快な香りが楽しめる。昔ながらの製法と現代の酒米が見事に調和した逸品だ。

実際に飲んでみると、日本酒特有のクセは強くなく、スッキリとした味わい。どんな料理に合わせてもマッチし、日本酒が苦手な人でも楽しめそうなほど飲みやすい。

千歳 山田錦

こちらは酒造好適米として優れた特徴を持ち、香りの良さと繊細さを兼ね備えた「山田錦」が使われている。栓を開けた時からフルーティーな香りが立ち上り、口に含むと甘みと酸味のバランスが取れた味わいを楽しめる。

こちらは好みが分かれるかもしれないが、ホタルイカや酒盗といったクセのあるつまみにも合いそうだ。筆者の好きなテイストだったため、何杯も飲んでしまった。

千歳 愛山

1950年頃に誕生した希少酒米「愛山」を使った一本は、先ほど飲んだ2つの中間くらいの香り立ち。ルーツには山田錦も含まれているため、果実味のある味わいが楽しめるが、愛山ならではの独特な香りも特徴的だ。柑橘系のような渋みと酸味がありながら、キレのある風味に虜になる人も少なくない。

酒米に使われている「愛山」は山田錦と雄町を祖父母に持っているが、両者の特徴もしっかりと引き継がれている。筆者は初めて飲んだが、これまた奥深い味わいが楽しめた。

■やっぱり日本酒って良いよね

古くから国内で醸されてきた日本酒。今や外国人のファンも多く、人気の酒はすぐに売り切れてしまうほどだ。有名な酒も確かに美味いが、地域ごとの特色を生かした地酒に着目してみると、新たな発見があって面白い。

今回ご紹介した千歳も長い歴史の中で途絶えた銘柄だが、150年の歴史を経て見事に復活を果たした逸品である。こうした復活や新たな出会いがあるからこそ、日本酒の楽しみは尽きないのかもしれない。

公式サイト「山名酒造

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