62573中国のベストセラーEVがレトロに変身! これで100万円以下なら日本人も欲しくなる?

中国のベストセラーEVがレトロに変身! これで100万円以下なら日本人も欲しくなる?

男の隠れ家編集部
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上汽通用五菱汽車が販売する電動マイクロカー「宏光MINI EV(Hong Guang Mini EV)」は、中国で最も売れている電気自動車と言われている。そのベストセラー小型EVの内外装を、レトロなデザインにモディファイしたコンセプトモデルの画像が公開された。「男の隠れ家デジタル」では、現状入手し得る情報についてお伝えしたい。

安くてレトロ、今欲しいのはこういうクルマかも?

2020年に現地で発売された宏光MINI EV(画像)は、全長3m以下、全幅1.5m弱というサイズのコンパクトな電気自動車。日本の軽自動車より40cmほど短い車体に、4人乗りの空間が確保されており、車高は日本の軽ハイトワゴンに近い。後部座席を倒せば十分実用的な荷室も使える。

中国における車両価格は3.28万元(約64万円)から。一度の満充電で走行可能な距離は120km、4.48万元(約87万円)の上級仕様では170kmと発表されている。

中国製の安価な小型EVと聞くと、実際に乗ったことがなくとも信頼性についての不安が頭を過るような零細企業の製品が思い浮かぶかもしれないが、かつて日本の三菱自動車の軽トラック/軽バンをベースにライセンス生産していた会社と、中国の巨大自動車企業である上海汽車、そして米国のゼネラルモーターズ(GM)が出資して設立された上汽通用五菱汽車は、2021年に166万台を超える年間販売台数を記録するほどの大手自動車メーカーだ。

同社はそんな売上好調の小型EVにおいて、単なる「アシグルマ」を超える付加価値を模索しているらしい。今回、WeChatの公式アカウントで公開された画像では、宏光MINI EVの「顔」を大胆に変更し、メッキのバンパーやモールを加えることで、レトロな姿に作り変えられた小型EVの姿が写っている。

クラシックな丸形ランプを想起させるヘッドライトには、半円を描くLEDとウインカーが組み込まれ、細いクロームのリングで飾られたフロントグリルと相まって、優しげな表情を作り出している。前後にはベース車同様に樹脂製バンパーが備わるので、クラシックな形状のメッキバンパーは機能的な意味を担わない飾りだろう。「W」のエンブレムは「Wuling(五菱)」を意味するものと思われる。

横から見るとパネルやドアはベース車のままだが、クロームのモールと筆記体を用いたグラフィック、さらに後輪のホイールアーチ上部を覆うスパッツが付け加えられたことによって、1950年代風の雰囲気を醸し出す。砲弾型のサイドミラーを装備し、ホイールはディッシュスタイルに替えられている。

ベージュとブラウンの2トーンに塗り分けられたボディには、ルーフラックが装着され、革のストラップでトランクを固定。後部にもピクニックバスケットが載せられている。このあたりの小物の使い方も上手い。

インテリアの造形はほとんど変更されていないものの、シート表皮は高級感のあるアイボリーのレザーで張り替えられているようだ。樹脂製のダッシュボードはウッドパネルを思わせる表面仕上げが施され、横長のタッチスクリーンを装備。エアコンの吹き出し口もクロームで飾られている。

このレトロなコンセプトのデザインは、メーカー自身が手掛けたものではなく、サードパーティによる提案とのことだが、公式アカウントで公開されたことを考えれば、サードパーティとのコラボレーションによる製品化への期待も膨らむ。

上汽通用五菱汽車は、2021年の上海モーターショーで、宏光MINI EVに開閉式ソフトトップを装備したオープントップ仕様のカブリオレを発表しており、2022年3月には若者向けにドレスアップした宏光MINI EVの「GAME BOY」エディションも中国で発売している。既に成功を見た小型EVに次なる一手を打ち、さらなる市場を開拓しようと目論んでいることは明らかだ。

かつて日本でもあったレトロカー・ブーム

Be-1

ところで、ある年齢以上の方であれば、このコンセプトをご覧になり、日本でもレトロカー・ブームなるものがあったことを思い出すに違いない。時はバブル経済の真っ只中、日産自動車が小型車「マーチ」をベースに内外装を作り変え、1060年代の欧州車を想起させる「Be-1」(画像)を1万台限定で発売したところ、メーカーの予想をはるかに上回る注目を浴び、申し込みが殺到。

第二弾の「パオ」、第三弾の「フィガロ」と、日産がレトロなカスタムカーの発表を続ける一方で、これに着想を得た(と思われる)スバル(当時の富士重工業)は、既存の軽自動車「サンバー」や「ヴィヴィオ」(画像)のヘッドライトを丸型に替え、メッキを多用したグリルやモールを付け加えることでクラシックな外装に仕立てたモデルを発売、大いに人気を得る。他社もこの手法に追従し、多種多様なレトロカーが日本の路上を彩った。

ヴィヴィオ

バブル景気に後押しされた日産が、既存モデルの外装パネルからインテリアまで大幅に作り変えたのに対し、バブル崩壊後のレトロカーは、簡単に交換可能な樹脂製の前後バンパーや小物パーツを変更するという、比較的低コストな方法を採ったため、ベース車からの価格上昇幅を小さく抑えつつ、発売から時間が経過した商品に新鮮味と付加価値を与えることに成功した。上汽通用五菱汽車が今回の画像を公開した目的は、かつての日本のレトロカーに倣った商品企画(テコ入れ)をチラつかせ、市場の反応を見るためと思われる。

しかし、いくら手頃な価格に加え魅力的な外観を備えても、宏光MINI EVが日本で発売される見込みは薄い。となると、我々日本人としては、レトロカーの本家本元にして、我が国における電気自動車市場のリーダーである日産に期待したくなるところだが、現状では内燃機関の自動車に比べてただでさえ割高な電気自動車に、性能以外のさらなる付加価値(=価格アップ)を消費者が求めるようになるのは、おそらくもう少し先のことになるだろう。

サクラ

とはいえ、軽自動車規格のEVとして先日発売された日産の「サクラ」(画像)と三菱自動車の「eKクロスEV」は、基本的に同一の車体を共有しつつ、効果的に2種類のデザインを作り分けることが、設計段階から織り込まれている。つまり、市場が求めれば、さらに外観の異なる(例えばレトロなデザインの)モデルを、比較的低コストで作り出すことも難しくないはずだ。排ガスを出さずに懐古的な雰囲気が楽しめるレトロEVは、本物の旧車には増税が科せられる……いや、課される日本にこそ、必要とされるクルマかもしれない。

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