74755デザイン&音色の良さがスゴイ電子ピアノ「Privia」|CASIOショールーム見学記

デザイン&音色の良さがスゴイ電子ピアノ「Privia」|CASIOショールーム見学記

田村 巴 (たむら とも)
田村巴
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世界にその名を轟かすCASIOといえば、何を思い浮かべるだろうか? G-SHOCK、チプカシ、PRO TREKやOCEANUSなどの腕時計。「いやいや、CASIOといえば電卓でしょう」「まてまて、電子辞書だってすごいんだぞ!」そんな会議を脳内で行うこと数分。

ところが今、一番勢いを増している分野が「電子ピアノ」だと皆さんご存じだろうか?

今回はCASIOさんのご好意に甘えて、渋谷区初台にある本社ビル内のショールームにて特別に製品見学をさせていただいた。一般には公開していない、ショールーム。特別感たっぷりにその模様をお伝えしたい。

時計といったらCASIOでしょ歴30余年の興奮たるや…

まず冒頭でお伝えしたいのは、今回CASIOさんから「ちょっと遊びにきませんか?」とお声がかかったのは、これまで音楽を聴くための書斎や音楽家・ミュージシャンの方々へのインタビューなど音楽に関わる記事をアップしていたことがフックとなっている。

雑誌「男の隠れ家」や「男の隠れ家デジタル」の読者層と、CASIOさんが紹介したい製品の相性が良いと見込まれたからだ。

そこで諸手を挙げて「ぜひ! 行きます!」と即答したのには、訳がある。

筆者の人生の大半を占める30年以上にわたり、この左手に輝き続けるCASIOの時計たち。そう、筆者は生粋のCASIOユーザーなのだ!

筆者所有のCASIOの時計たち。

生まれて初めて自分で買った腕時計はG-SHOCKのDW-5600VT。G-SHOCKらしい角型モデルでイエロー、ベゼルガード(プロテクター)が付いたタイプだった。大切にしていたが引っ越しのドタバタで失くしてしまったことに気づいた時は血の涙を流したものだ。

以降、G-SHOCKやDATA BANK、CASIOコレクション(通称:チプカシ、チープカシオ)の時計を気の向くままに愛用してきた。

いわばファンなのだ。CASIOさんのファン。ただただ好きなの。そんな憧れの人(?)に声を掛けられたら沸くってもんでしょう。

しかし、これは仕事! 平然を装い、いざ本社へ潜入!

やはり世界に名を轟かせる一流企業、セキュリティチェック&消毒をしっかり受け、受付の女性に朗らかに対応してもらい、2階にあるショールームへ。

何度も言うが、ここは一般に解放していないショールームなのだ。それだけで興奮もの。「ぐふぐふ」と漏れ出てきそうな心の声を必死にしまい、広報の奥田さんにショールーム内を案内していただく。

世界初の小型純電気計算機「14ーA」の1年半後(1959年5月)に発売された「14ーB」が堂々と鎮座する入口。初っ端から「博物館ですか?」の勢いである。

貴重な「14ーB」が現存。
自分が生まれる前に誕生した「カシオミニ」(右)も。

そこから「カシオミニ」(1972年)やクレジットカード電卓「SL-800」(1983年)、世界で初めて製品化されたデジタルカメラ「QV-10」(1995年、このカメラ持っていた!)といったレジェンド製品たちをくまなく見学し、ドキドキの時計エリアへ。

時計エリアではブランドごとにフラッグシップモデルたちが、惜しげもなくその美しさを発揮してディスプレイされている。

眩暈がしそうだ。あまりの興奮で全体像をカメラに残し忘れるという失態をかますほど。

サファイアガラスベゼルが光り輝くOCEANUSマンタOCW-S6000。
G-SHOCKの最上級ライン「MR-G」(MRG-B5000)。
『頭文字D』仕様のEDIFICE(ECB-2000MFG)。※生産終了モデル

だが今回の目的はあくまでも電子ピアノ「Privia」。ヲタク心を必死にしまおうとするあまり、必要以上に時計に対してクールな態度を取ってしまったことが悔やまれる。

でも、フラッグシップモデルのみんなはとにかくキラキラ(物理的にも)輝いていたことだけは、お伝えしておこう。

PRO TREKコーナー。アウトドアに最適なブランド。

続いて世界で選ばれ続けている電卓コーナーへ。特にインドなどでは関数電卓の需要が多いのだとか。

理系ではなかったが謎の安心感を持って「電卓買うならカシオでしょ」と高校生の頃に親が購入してくれたことを思い出す。

特に興味深かったのは、防水・防塵が施された“洗える”電卓「WM-320MT」。飲食店などで重宝するという。心なしかG-SHOCK的な見た目が刺さる。

また、人間工学電卓「JE-12D-WE」の盤面は右下がりに傾斜がついていて、右利きの人に向けた新構造の操作性が2022年のグッドデザイン賞を受賞したモデル。

盤面がワンタッチで外れて洗える「WM-320MT」。
確実に打ちやすいだろうとわかる「JE-12D-WE」。

いやはや、こうして見学してみるとCASIOさんの製品造りは「時代をリードして、生活を豊かにする」アイデアであふれている。

樫尾忠雄さんが樫尾製作所を立ち上げなければ、今頃我々はまだソロバンを弾いていたかもしれない…。

そして本題の電子ピアノ「Privia」へと辿り着く

前置きが鬼ほど長くなってしまったが、ショールームの最奥でドーンっと待ち構えていたのが、今回の主役「Privia PX-S7000」だ。

CASIOはこれまで「カシオトーン」(1980年)を筆頭に、シンセサイザーや電子ピアノの「CELVIANO Grand Hybrid」(2015年)など、さまざまな電子楽器を販売してきたが、近年、最も開発に注力したといえるのがこの「Privia」だ。

Privia PX-S7000がお待ちかね。

まず見た目。北欧家具を想起させるトータルデザインが際立っていて、特に専用ペダルが一体となったスタンドに目がいく。木目が美しく、イサム・ノグチを彷彿とさせる雰囲気をまとっている。

洋室に限らず畳の敷かれた和室にも似合うだろうと、まず思った。シンプルモダンと言ってしまえばそれまでだが、畳でもフローリングでもカーペットでも“置く場面”をイメージできるのは、普遍的な作品に通づるものがあると思う。

サイズ感も重要なポイントだ。「Privia」のミニマルデザインは、解放的で圧迫感を与えない仕上がりとなっている。

全幅134㎝、本体奥行き24.2㎝、スタンド奥行き44.9㎝と、とにかく幅を取らない。もちろん、本体はスタンドから取り外してテーブルの上で弾くことだって可能だ。

また、色も重要。「PX-S7000」には写真のハーモニアスマスタードのほか、ブラックとホワイトをラインアップしているが、スタンドのカラーリングもそれぞれの色に合わせて設定されている。

自室のインテリアと楽器の調和を考えた際、選択肢があるのは嬉しい。存外、ハーモニアスマスタードは調和を考える上でオールマイティさがあるような気がしてくるから不思議だ。

3色のバリエーションがある。

聞けばハーモニアスマスタードは開発段階でヨーロッパのインテリアスタイルを参考に、さまざまなエビデンスを取った上で設定された色とのこと。

シンプルで余分な派手さを省きつつ、それでも生活を華やかにしてくれる印象がある。

本体に搭載されているディスプレイ。
フェルト素材のカバーも雰囲気に合っている。

デザイン性の高さでCASIOさんの底力を見せつけられたのだが、電子ピアノとして何より大切なのは、その音色。

ピアノ、ひいてはグランドピアノという楽器の特性を語る上で重要なのは、共鳴(レゾナンス)であるが、「Privia」は限りなくグランドピアノに近い音の響きを再現するため、鍵盤の素材にまでこだわって作られている。

新開発の「スマートハイブリッドハンマーアクション鍵盤」というシステムが搭載されているのだが、これはデジタル制御技術により鍵盤操作で発生する音の反応をコントロールするというもの。これによりグランドピアノのようなタッチが実現できたという。

グランドピアノと同様にハンマーの自重を利用した弾き心地は、88鍵デジタルスケーリング技術により、打鍵の強弱によりタッチ感の違いや音の大きさを変化させる。

白鍵の材質はグランドピアノに使用されるスプルース材と樹脂のハイブリッド構造で、表面の仕上げもこだわる。より自然な象牙調の質感を再現した。よくよく注目してみると、確かに手触りがちょうど良い。また黒鍵も黒檀に近い質感を目指しているという。

スピーカーは背面に独立駆動のフルレンジスピーカーを4つ設定。振動板には強化剤マイカを混ぜ込み、きめ細かくハリのある高音域を。

さらにボイスコイルの可動域を広げた内部構造により、豊かでゆとりある低音域を出力することが可能となった。これによりバランスが良く奥行きを感じるサウンドとなり、グランドピアノに近い臨場感で演奏が楽しめる。

実際に演奏するポジションに座り内蔵されているデモ音源を聴かせてもらったのだが、音がしっかり前から広がりを持って襲いかかってくるような印象を受けた。「とにかく音が良い!」一聴すればその一言に尽きるだろう。

ファブリック素材のスピーカーネットを使用し背面からの見た目にもこだわっている。
USB端子、マイクイン端子、Bluetooth接続による外部機器との接続から多彩な楽しみ方が出来る。

音の響きの良さに驚いていると、さらに驚きの技術が搭載されていることを教えてもらった。

「マルチ・ディメンショナル・モーフィングAiR音源技術」で、世界的名器のグランドピアノの音色や数々のピアノからサンプリングして作ったバラエティ豊かな音色を搭載。アコースティックピアノだけでなく、有名なエレクトリックピアノなどを網羅しているのだ。

変な話、「あのミュージシャンのあの曲のイントロはこんなピアノの音色だったね」が自宅で楽しめるというわけ。

専用アプリをiPadで使用することも。
Bluetoothで繋げコントロール可能。

さらにプリアンプなどの回路特性を測定したデータを内蔵することで、その時の演奏に応じたそれぞれの楽器の反応を忠実に再現するという。もう、何が何だかわからない。

これらを可能にするのは大量のデータをリアルタイムで演算できる高性能なカスタムLSIのおかげ。さすが世界のCASIO。

結局、CASIOの凄さをまざまざと体感する一日だった

こんな風にかっこよくピアノが弾ける人間になりたい…。

今回こうして本社ショールームでCASIOの歴史、技術力、イマジネーションを見学できたのはとても有意義な時間となった。

終始爽やかに案内してくれた広報の奥田さんや、楽器部門を担当する山﨑さんの明るくきめ細やかな説明、随所で的確なコメントをくれる楽器部門の有賀さん、御三方のおかげである。

時計につられてホイホイ訪れた筆者に対して、とても丁寧に対応いただいた御三方はたぶん天使

ピアノは幼少期にわずかに齧った程度(実質、舐めた程度)で「きらきら星」すら満足に弾けもしないが、おしゃれでカッコよくて所有欲を満たしてくれる「Privia」、ちょっとどころか、かなり欲しくなってしまったのは言うまでもない。

近々、世田谷区成城にある「樫尾俊雄発明記念館」に行こうと決めた、そんな一日だったのだ。

【商品概要】
製品名:Privia PX-S7000
価 格:オープン価格
公式HP:Priviaスペシャルサイト

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田村 巴 (たむら とも)
田村 巴 (たむら とも)

1979年、北海道出身。バイク(チョッパー)専門誌「HARD CORE CHOPPER」、フリーペーパー「MOLE Magazine」、ライフスタイル誌「男の隠れ家」を経て、現在は「男の隠れ家デジタル」編集長。

バイクやクルマでの日本一周・目的を決めない旅が趣味。好きな分野は「飛行機」「クルマ旅」「地方の土着的な風習や歴史」「ミステリー」など。UFOや都市伝説に興味深々。好きなものは「巨大建造物」「道の駅・SA(道の駅きっぷ収集)」「キャンプ」「ガジェット」「カメラ」「ボストンテリア」。

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