81162雑誌「男の隠れ家」編集部が選んだいいもの。使う人に寄りそう匠の技・大澤鼈甲「KUAI F」

雑誌「男の隠れ家」編集部が選んだいいもの。使う人に寄りそう匠の技・大澤鼈甲「KUAI F」

男の隠れ家編集部
編集部

■「素材がもたらす掛け心地と美しい表情の虜になってほしい」

●大澤鼈甲(東京都)× KUAI F

(※その他の写真は【関連画像】を参照)

慎重に行われる鼈甲を切り出す作業。

聖徳太子の頃には日本に鼈甲の宝物が伝来していたが、その加工技術の確立は17世紀初めに来日したポルトガル人が長崎で広めるまで1000年近くの時を待たねばならない。その技術が煌びやかな加工品とともに江戸に伝わると、一転してシンプルで粋なデザインの実用品が好まれるようになった。

それが今に伝わる江戸鼈甲で昭和57年(1982)に「伝統工芸」、平成27年(2015)には「日本の伝統的工芸品」の指定を受けた格式高い技術である。

大澤鼈甲は昭和31年(1956)創業。以来、鼈甲メガネを専門としてきたので職人たちのメガネ加工の熟練度も高い。大澤鼈甲では江戸時代から変わらない手作業による鼈甲の削り出しを受け継ぎ、一つひとつ丁寧に作る。工房内には彼らが鼈甲を削る音が常に響いている。

ウミガメの一種・タイマイから削り出される鼈甲はセルなどと比べると軽くてフィット感があるため、素材としてメガネとの相性がとても良く、メガネを持つ大人たちの羨望を集めている。

その素材はタイマイの甲羅や爪から型に合わせて切り出し、それを必要な厚さに重ね合わせて作る。このとき、重ね合わせた際の模様や色が美しくなるように素材を切り出していくには、長年培ってきた職人の経験と明確なイメージが必要となる。さらに切り分けられた鼈甲を重ね合わせて、工具に挟み熱と圧を加える。この温度や挟む力の加減がメガネの品質を決めるといっても過言ではない。

鼈甲の模様や厚みは、作業の度に光を当てて何度も確認する。

この素材を型に合わせて曲げ、滑らかになるまで削れば完成だ。この工程が大澤鼈甲の真骨頂。使用者に最もフィットするように細かな調整を加える。

例えば横に伸びるつるの部分の太さ、鼻にかかるブリッジの角度など削り・曲げなどのわずかな調整を怠らない。これは日々使用するメガネを専門とするからこそのこだわり。対面販売を信条とするのもそのためだ。

また鼈甲のメガネは折れるなどの破損があっても修理できるメリットもある。水や熱とともに再び圧力をかければ接着剤を使わずともくっつけることができる(古くなると水分が抜けすぎて修理できない場合もある)。きちんとメンテナンスをして、修理を行えば世代を超えて長く使える。大人の嗜みに一本持っておきたい、憧れの逸品だ。

【商品概要】
製品名:KUAI F(KUF-009)
価 格:81万4000円~
素 材:鼈甲(蝶番はβチタン)
サイズ:43×24mm

大澤鼈甲(おおさわべっこう)
東京都文京区千駄木3-37-15
TEL:03-3823-0038
公式HP:大澤鼈甲

photo/Tomoko Osada

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