98585越前の水と米が生み出す日本酒「黒龍酒造」(福井県永平寺町)

越前の水と米が生み出す日本酒「黒龍酒造」(福井県永平寺町)

男の隠れ家編集部
編集部

熟成させた高級な日本酒 吟醸造り大吟醸酒の美味

酒蔵の建物は築100年以上。豪壮な佇まいに「黒龍」の暖簾が際立つ。

永平寺町松岡地区。古くから酒造りが盛んだった町に、豪壮な建物の酒蔵が残っている。江戸時代から続く老舗酒蔵、黒龍酒造である。今や国内外にその名が轟く、福井を代表する酒蔵だ。

黒龍酒造は文化元年(1804)の創業。近くを九頭竜川が流れており、この地区の酒蔵と同様に伏流水を仕込み水にしている。そして厳選された酒米を使い昔から一貫して手作りで酒造りを行ってきた。

七代目の水野正人さんは、同じ醸造酒であるワインに注目して、日本酒を熟成できないかと考え、少量で高級な日本酒造りを追求した。昭和40年代、50年代には、普通酒から、吟醸造りに蔵の方向性を変えた。

玄関内に掲げられた看板。田と牛で「頼もう」と読み、昔は客が叩いて来店を知らせていた。
趣のある店内。「黒龍」「九頭龍」などの銘柄が揃う。

九頭竜川の伏流水は軟水で、吟醸造りに適している。昭和50年には全国に先駆けて、大吟醸酒を商品化した。

一方、蔵の改革にも乗り出して、杜氏と蔵人を通年で雇用、酒造りの現場では人の手でなくてもよいところは機械化を進めた。

蔵の中では約30人が働く。現在は、昔ながらの日本酒とは一線を画した、高級な日本酒を醸す酒蔵として、日本酒愛好家に一目置かれる存在となった。

「石田屋」など限定販売の銘柄はなかなか入手できないために、幻の酒ともいわれている。

杜氏の畑山浩さん、52歳。

杜氏の畑山浩さんは、富山の大学を卒業後に入社。蔵人として先代の杜氏に師事し、2002年から杜氏を務めている。

「吟醸造りは精密なコントロールが必要。丁寧な酒造りに徹して、調和感を出すことが重要です。熟成した後までを見据えた酒造りを心がけています」。

麹造りの作業をしているときが一番楽しいと語る。

2021年には商品構成をリニューアルした。「黒龍」は贈答用などのプレミアムな酒として、「九頭龍」は福井県産の酒米・五百万石を使い、燗やロックでも楽しめるカジュアルな酒として位置づけられる。

また黒龍酒造の親会社「石田屋二左衛門」が手がける複合施設「ESHIKOTO(エシコト)」も注目される。

きれいで膨らみのある黒龍酒造の日本酒。品質の確かさは揺るぎない。

商品概要

(左)九頭龍 大吟醸(720ml /2750円)
お燗用の大吟醸酒として、平成16年(2004)に発売開始。熟成することによって洗練された深い味わいに。ぬる燗(約40度)から上燗(約45度)くらいに温めて飲むのがおすすめ。
・原料米/五百万石 精米歩合/50% 酒度/+4.0 酸度/1.0

(中)黒龍 大吟醸 龍(720ml/4400円)
ワインの熟成を応用した大吟醸酒。先代が全国に先駆けて、昭和50年(1975)に発売を始めて、ベストセラーとなった。兵庫県産山田錦を40%精米。上品な果実香と上質な味わい。
・原料米/山田錦 精米歩合/40% 酒度/+4.5 酸度/1.0

(右)黒龍 大吟醸(720ml/2750円)
国産の山田錦を50%まで精米した、大吟醸酒。ふくよかな香りがあり、透明な喉ごしと爽やかな飲み心地。絹の羽二重織のような、しなやかで、きめ細やかな味わいを楽しめる。
・原料米/山田錦 精米歩合/50% 酒度/+4.0 酸度/1.0

COLUMN

石田屋二左衛門が手がける複合施設「ESHIKOTO(エシコト)」

2022年6月にオープン。酒を核に福井や北陸の文化を発信する、複合施設。「酒樂棟」には小売店とレストランを併設。「今日のテイスティング」などで気軽に日本酒を楽しめ、黒龍酒造の商品も購入できる。

福井県吉田郡永平寺町下浄法寺12-17
TEL:0776-63-1030
営業時間:10:00~17:00※モーニングやランチなどの各営業時間は季節により変動あり
定休日:水曜、第1・3・5火曜

石田屋

江戸時代から続く酒蔵の屋号

初代石田屋二左衛門が石田屋本家から分家して創業したことから、屋号の「石田屋」として、日本酒を販売している。

福井県吉田郡永平寺町松岡春日1-38
TEL:0776-61-3733
営業時間:10:00~16:30
定休日:日曜、不定休あり

文/阿部文枝 撮影/渡部健五

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