■蔵人が直汲み、中取りのうまい部分をぜいたくに
(※その他の写真は【関連画像】を参照)
雪深い長岡市、栃尾(とちお)の城下町。雁木が連なる通りに「越銘醸」がある。この蔵の代表銘柄は古くから造られる「越の鶴」と「壱醸(いちじょう)」、そしてもう一つが平成27年(2015)に立ち上げた「山城屋」。
蔵の裏山に、上杉謙信が初陣を飾った栃尾城があり、その城(山城)にちなむ旧屋号をブランド化した「懐かしいけど新しい」銘柄だ。
主にスペシャルクラス・ファーストクラス・スタンダードクラスの3種があり、専務取締役の吉原雅史さんが夏酒として勧めてくれたのがスペシャルクラスである。
「この酒は、ほとんどコンクール出品用ともいえるぐらい手間をかけているんです。昔ながらの生酛造りで、ヤブタ(薮田式自動醪搾機)から滴り落ちる一番うまい部分を、機械を通さずタンクに直汲みしています。一回の仕込みで4合瓶4000本分ほど造れますが、スペシャルクラスはそのうち一割、約400本しかできないのです」
まず先にファーストクラスを味わってみる。優しいがキレがある。しっかり後を引くうまさだ。
続いてスペシャルを味わうと、そのうま味がさらに増幅されるような感覚に驚く。微発泡、搾りたての新鮮味が口中に溶け広がる。しかも後味濃厚で、その余韻の長いこと……。
ラベルの裏にアルコール度数程度しか書かれていないのは、ちょっと秘密めいているが、「精米歩合表記がないのは、毎年条件が異なる気候で育った酒米の状態をしっかり見極め、その状態に見合った精米歩合を行っているためです」と吉原専務。
今年のものは精米歩合50%、日本酒度2・8%と教えてくれた。
肴にはトロの寿司、和牛のカルパッチョなどがとくに合うが、梅干しとの相性も良い。食中酒として肴の味を巧みに引き出す繊細さ、それでいて大胆さも同居する「山城屋」の魅力と味に酔いしれた。
無濾過・無調整のピュア感 米の濃厚な余韻を楽しむ
山城屋
江戸時代に創業した山家屋と山城屋が合併し、1934年にできた「越銘醸」。その代表銘柄「山城屋」のレギュラーシリーズの中の最上位にあるのが「スペシャルクラス」。
山城屋 Special class
720ml/3080円
原料米/一本〆
精米歩合/50%
アルコール度数/15度
越銘醸
新潟県長岡市栃尾大町2-8
TEL:0258-52-3667
公式HP:越銘醸
取材・文/上永哲矢 撮影/本田織恵
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