66923「4w1h」の便利なホットサンドメーカーと軽くて丈夫なチタンカップの製造現場へ

「4w1h」の便利なホットサンドメーカーと軽くて丈夫なチタンカップの製造現場へ

男の隠れ家編集部
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過去2回にわたり紹介してきた、ものづくりの町・燕三条のアウトドアギア製造会社探訪。初回は伝統の職人技に裏打ちされた鉈をつくる「日野浦刃物工房」、そして2回目にはキャンパー御用達のペグ・エリッゼステークを製造する「山谷産業」を紹介した。

今回はキャンプの朝食で活躍するホットサンドメーカーをつくる「杉山金属」、そして多くのブランドの商品をOEM生産する「せきかわ工芸」を訪れた。

■この地だからできる技の集積が生む道具たち

ここ燕三条では、アウトドアばかりか家のキッチンでも大活躍するホットサンドメーカーも作られている。杉山金属はそのトップ企業だ。食パン2枚用各種のほか、「4w1h」ブランドで製造する、1枚を折り畳む小型のソロ用も爆発的な人気を得ている。

基本は家庭用キッチン用具メーカーである。広い敷地には加工の仕方が違う複数の工場を設置している。その中で、鋳造工場はキャンプ需要を受けたホットサンドメーカー製造にフル稼働だ。

「30年余り作ってきて、アウトドア向けとは全く考えていませんでした。皆さんが見つけてくれたんです」と営業部部長の小川陽介さんは言う。「昨年のピーク時は注文をいただいても半年から1年待ちをお願いすることも……」

アルミのインゴットを溶かし、金型で成型するのは機械だが、調整する人間の目は不可欠だ。そしてその後のバリ取りや表面処理、組み立てなどは皆手作業である。熟練者たちの手はよどみなく動いていく。見ていて気持ち良い。

焼き目のデザインを変えて、大手ブランドのOEM生産を請け負うほか、個人からの1個だけという注文にも応じる。

「100個以下は、金型に流すのではなく切削加工して作ります」

プレス工場ものぞかせてもらった。四角く平らなキューブケトルを作っているのはこちらだ。

「ものを作るのに最短ルートはない。でも、それが面白さでもあります」と小川さん。この仕事が好きだからこそ言える言葉だ。

■ものづくり見学の締めくくりはシェラカップの製造見学

最後はシェラカップ造りを訪ねよう。金属加工の伝統技術にヘラ絞りというものがある。回転させた金属板にヘラを押しつけ、3次元に伸ばす方法で、鍋、やかんから航空機やロケットの先端部まで用いられる。機械を使うにしても繊細な微調節が求められる技だ。

それを一番の得意とするのがせきかわ工芸である。多くの著名ブランドの品をOEM生産するほか、「ART TECH」ブランドで自社オリジナルの製品も手がける。使う素材はステンレス、銅、真鍮などさまざまだが、アウトドアの調理具兼食器としてはやはり、軽くて金属臭がなく、金属アレルギーの人も使えるチタンが主だ。

成形にはスピニングマシンというものを使う。これがすごい。1枚の円形のチタン板を回転軸にセットすると、ローラーが近づき、みるみるうちに立体になる。

「材料の伸びだけで作ります。シェラカップの場合、底の厚みは元の金属板の0.5㎜厚のままで、側面は0.29㎜程度になり、熱伝導率も良くなるんです。しかも1工程で素早く形作れます」と言うのは、苦心を重ねてこの技術を編み出した社長の関川正幸さん。

同じ形状はプレスでも3工程ほど重ねればできる。だがどこも同じ厚さになり、使い勝手に劣る。ローラーの形状、接触距離の調節などは積年の経験あってこそだ。

日本の技は素晴らしい。燕三条の職人たちに深く学ばされた。

【取材協力】
杉山金属

キッチン用鍋類などの企画・製造・販売として1948年に創業。独自のアイデア商品も多く知られる。
新潟県燕市小池3633-10
TEL:0256-63-8125

【取材協力】
せきかわ工芸

工業デザイナーだった関川正幸さんが27年前に創業。分業が多い燕三条で職人の一貫生産を旨とする。
新潟県燕市杣木857-2
TEL:0256-63-8951

文/秋川ゆか 写真/島崎信一

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