106690遠藤憲一 ご当地の魅力に出会う旅 第三回「界 箱根」|王道映ゆる湯、あたらしきを湛ふ湯宿へ。

遠藤憲一 ご当地の魅力に出会う旅 第三回「界 箱根」|王道映ゆる湯、あたらしきを湛ふ湯宿へ。

男の隠れ家編集部
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王道なのに、あたらしい———。遠藤憲一さんが日本全国の「界」をめぐり、その地ならでは特徴をいかした湯宿、さらに「ご当地楽」に出会う、春夏秋冬旅。

【プロフィール】
遠藤憲一(えんどう・けんいち)
1961年東京都生まれ。1983年ドラマ「壬生の恋歌」でデビュー。個性派俳優として数多くの映画・ドラマで活躍。BS朝日「きっちりおじさんのてんやわんやクッキング」では、初心者ながら料理に奮闘する素の姿が人気。カンヌ国際映画祭『監督週間』正式出品作品「見はらし世代」が10月10日より公開。

■脈々と紡ぐ歴史に触れ 和の美を再確認する箱根路

日本は美しい。1860年代、ヨーロッパで巻き起こったジャポニスムの潮流は、モネやドガの色彩感覚に影響を与えたが、ゴッホも並々ならぬ影響を受けた一人。

『名所江戸百景』など、歌川広重の模写をいくつも描き残した。その広重の代表作として日本人に馴染み深い作品といえば『東海道五十三次』だろう。

トラベルライブラリーで借りた歌川広重の画集を手に、気持ちの良いロビーで過ごすひと時。

「ロビーで広重の『東海道五十三次』の画集を見つけて久しぶりに眺めたら、インスピレーションが湧いてきたんだよね。思わずすぐに同じ本をネットで手配しちゃったよ」

嬉しそうにそう話すのは俳優の遠藤憲一さん。ご当地の魅力に出会うべく日本各地の「界」を巡るこの旅。今回、遠藤さんが訪れたのは広重も描いた箱根宿にある「界 箱根」である。

箱根湯本温泉の旧街道沿いにひっそりと佇むこの宿では、モダンな設えの中で伝統文化と民藝や歴史に触れることができる。

トラベルライブラリーで蔵書鑑賞を楽しんだ後は「界 箱根」自慢のご当地部屋「箱根ごこちの間 清流リビング付き和洋室」へ。清流・須雲川を見下ろす広い窓の前にはカウンター席が設けられており、まずは今宵滞在するこの部屋で景色を眺めて一息つく。

遠藤さんが投宿した「箱根ごこちの間 清流リビング付き和洋室」。目の前に広がる箱根の山林と清流の川音に、日頃の疲れが溶けていく。
ご当地部屋では様々な箱根寄木細工のアイテムを手に取って使用することができる。グラスやカトラリー、スピーカー、お盆など自分好みの寄木細工を見つける楽しみも。

「駅前の賑やかさから離れて、山に囲まれた静けさがとても良いね」

日々多くの作品と向き合うからか読書や台本読みなどの集中作業に、この環境が適していると遠藤さんは話す。日暮まで新しい作品の台本に向き合う姿が印象的だった。

夕方、少しだけ疲れた様子の遠藤さんが向かった先は、半露天の大浴場。ナトリウム-塩化物泉は1200年の永い歴史を持つ名湯である。神経痛や冷え性、疲労回復に効くとされ、人一倍、寒がりな遠藤さんにはピッタリだ。

眼下に須雲(すくも)川を望む半露天の大浴場にて、箱根湯本温泉の湯に心底リラックスした表情で湯浴みを愉しむ遠藤さん。

「大浴場は広くて眺めが最高。まるで一つの絵画を見ているよう。このお湯の温度も僕には最適で、これは長く浸かっちゃう心地良さだよ」

贅沢な湯浴みを堪能した後は、事前に予約していた「ご当地楽」を愉しむことに。

箱根山系は日本屈指の樹種を誇り、数多くの樹木が育つ山。そんな個性豊かな木材を集め、江戸時代後期に生まれた箱根寄木細工は、精緻な幾何学模様の美しさが特徴的である。

加工前の原木に触れることで色や木目の密度、個性の違いを改めて認識する。

「界 箱根」では、その箱根寄木細工の製作工程の一部を体験できるプログラムが用意されている。まるで木工職人の工房のような「ご当地楽ルーム」へ足を踏み入れると、一瞬にして爽やかな木の香りに包まれる。

ここで挑戦するのは「寄木細工のずく引き体験」。複数の木を組み合わせた寄木細工の種木をカンナで薄く削り出した“ずく”で、旅の思い出を残すためフォトフレームを作成するのだという。

■往時に思いを馳せ 現代に甦る宿場の面影

「あれれ、これは難しいんだね。ほんと僕は不器用だなぁ(笑)」

スタッフにレクチャーを受けながら何度もカンナをかける遠藤さん。6回目にしてやっと綺麗に一枚のずくが引けた。

ご当地楽の「寄木細工のずく引き体験」に挑戦する。加工前の原木がディスプレイされた空間で、箱根の山が育てた木々と職人が加工した寄木細工の種木を見比べるのも愉しい。職人が制作した寄木細工作品も購入できる。
カンナを水平に保ち、力を込めて手前へ引く。簡単そうに見えて意外と難しい作業に、さすがの遠藤さんも苦戦した。
「界 箱根」では「露木木工所」と連携し、ずく引き体験を提供。寄木細工の種木もその一つ。

コツを掴めば当初の苦戦は見る影もなく、何枚も引けるようになった。フォトフレームの台紙に自前のずくを貼り合わせ、記念写真をセットしたら完成。今回のご当地楽も貴重な体験ができたと話す。

「寄木細工は多様なピースが組み合わさって一つの美が生まれる。これって映像制作のクリエイティブにも本質が通じるなぁって思ったよ。作品がフォトフレームになると、記憶に残る良いお土産にもなるね」

完成したフォトフレームを手にこの笑顔。

集中してお腹が減ったところで旅の醍醐味、夕食へ。「界 箱根」では温泉保養地として欧米人に親しまれた明治期の西洋料理にインスパイアを受けた「明治の牛鍋会席」が愉しめる。

東海道を往く人々がエネルギー補給にした甘酒で作る「甘酒のヴィシソワーズ」や季節の味覚が供される先八寸は、飛脚が使った「挟み箱」を模した木箱で提供。

メインの台の物「明治の牛鍋」は文明開花の時代に親しまれた味と調理法を採用し、ぶつ切りの和牛を野菜と共に桜味噌仕立てのすき焼き風でいただく。

「明治の牛鍋」は濃厚そうな見た目に反し、風味豊かな桜味噌がさっぱりとした上品な味わい。
先八寸は季節の食材を用いた品々と「甘酒のヴィシソワーズ」が挟み箱に入って供される。
寄木細工を模したクッキープレートを添えた甘味「黒豆ティラミス」も美味。

「東海道の旅文化を感じる食体験だね。見た目のわりにさっぱりした味わいの牛鍋が美味しかったなぁ」

夜半に降り出した晩秋の雨垂れが川の音と共に優しく響く。往時の旅人たちへと思いを馳せつつ今宵の旅人もまた、満ち足りて床へ就いた。

「界 箱根」に滞在するもう一つの愉しみは中庭にある「さわ茶屋」の“ふるまい”だ。かつて箱根路を往き交う旅人たちが休憩に立ち寄った茶屋をイメージしたくつろぎ処。宿に到着した昼の時間は快晴茶とお団子、夕食後の夜にはハーブティーやお酒が提供される。
遠藤さんは夕食後に訪れ自然の中で食休み。「現代にいるのに当時の宿場の風景がイメージできるね。こうして茶屋で一休みして、長い長い東海道を歩いたんだなぁ」。
総客室数34室の「界 箱根」は、豊かな自然の中で東海道の歴史を感じられる宿。
中庭には手入れの行き届いた美しい竹庭も。宿自体がゆったりとした開放的な造りで滞在を優雅な時間にしてくれる。

■湯守の解説「温泉いろは」

毎日16時15分から開催される「温泉いろは」は箱根湯本温泉の泉質や入浴法など心と体を整える“いろは”を知る良い機会。

■2025年リニューアル!東海道の歴史を体感する宿

「王道なのに、あたらしい。」をコンセプトに全国23施設で展開する、星野リゾートの温泉旅館。

レザーブルゾン52万8000円(FRANK LEDER)、パンツ3万4100円(CONFECT)、その他スタイリスト私物 ※すべて税込
問/FRANK LEDER(MACH55 Ltd.)☎03-5846-9535、CONFECT 表参道店☎03-6438-0717

スタイリング/中本コーソー ヘアメイク/村上まどか 文/田村巴 撮影/野村雄治 取材協力/界 箱根

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