108163遠藤憲一 ご当地の魅力に出会う旅 第五回「界 出雲」|王道映ゆる湯、あたらしきを湛ふ湯宿へ。

遠藤憲一 ご当地の魅力に出会う旅 第五回「界 出雲」|王道映ゆる湯、あたらしきを湛ふ湯宿へ。

男の隠れ家編集部
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王道なのに、あたらしい———。遠藤憲一さんが日本全国の「界」をめぐり、その地ならでは特徴をいかした湯宿、さらに「ご当地楽」に出会う、春夏秋冬旅。

【プロフィール】
遠藤憲一(えんどう・けんいち)
1961年東京都生まれ。1983年ドラマ「壬生の恋歌」でデビュー。個性派俳優として数多くの映画・ドラマで活躍。BS朝日「きっちりおじさんのてんやわんやクッキング」では、初心者ながら料理に奮闘する素の姿が人気。『エンジェルフライトTHE MOVIE』Prime Videoで配信中。

■神話の世界に身を委ね 勇壮な石見神楽に酔う宿

英雄が必ずしも勝者になるとは限らない。伊勢神宮に祀られる天照大神が天から世界を照らす正統の神であるなら、出雲大社の御祭神である大国主命は地上で国を整え、最後にその全てを譲った神。

争いではなく対話を選び、そして表舞台から退く。その決断が、出雲神話を神話以上の物語にしている。

伊勢が「中心」や「始まり」を象徴する場所だとすれば、出雲は「裏側」や「余白」を引き受けた土地だ。譲った者の記憶が積もる場所。

そのため出雲には、〝急ぐ理由〟がない。歩く速度は自然と落ち、言葉数も少なくなる。

島根半島の西端・日御碕に佇む「界 出雲」。奥に見えるのは日御碕灯台だ。宿泊する部屋によって朝日か夕日のどちらかが愉しめる。

「出雲大社には何度か来たことがあるよ。出雲から見る日本海の荒波は迫力があって好きなんだ」

ご当地の魅力に出会うべく島根県出雲市へやってきた遠藤憲一さん。

〝急ぐ理由がない〟その感覚を引き連れたまま訪れたのは「界 出雲」だ。出雲大社の門前にありながら、神話を語り尽くすのではなく、ゆっくりと考えるための距離を与えてくれる宿。

島根半島の西端・日御碕にあり日本海の絶景を望む。夕焼けの美しさは言うまでもなく、朝日に照らされる景色も格別だ。遠藤さんが今宵宿泊するのは、ご当地部屋「彩海の間」。

ご当地部屋「彩海の間」。遠藤さんが宿泊したのは夕日と灯台を望む客室。
大きな窓とテラスのおかげで眺望がよく、落ち着いたインテリアがモダンな空間。静かな刻を過ごす。

眼前には日御碕灯台と水平線、広々としたテラスに出れば刻々と姿を変える波の形に目を奪われる。夕日が映えるよう藍色で整えられた客室で、しばしの休息。時間がすぅーっと溶けていく。

「今日はせっかくだからご当地楽の石見神楽を撮影したいんだ。実は昔からカメラが趣味なんだよね」

ここ「界 出雲」で宿泊者向けに提供されているご当地楽は、出雲大社の起源に触れる「石見神楽」。演目は「国譲り」だ。

ご当地楽「石見神楽」は、海を背景にした屋外舞台でダイナミックに披露される。美しい神楽面と神楽衣装にも注目したい。

大国主命の息子・建御名方神は、高天原から派遣された経律主命との力比べで敗北、最終的に大国主命は剣を取らず話し合いの末、戦いを終わらせた。

武を誇らず、勝利を祝わず、縁や関係性を司る神の物語である。迫力ある神楽の舞を前に、遠藤さんは夢中でシャッターを切り続けたのだった。

スタッフは日頃から稽古を繰り返し、勇壮で迫力に溢れた本格的な神楽を披露。宿泊者は出雲の伝統文化に触れられる、またとない機会。
石見神楽衣装は金糸銀糸で立体的な刺繍が所狭しと施され、陰影が浮かび上がるような造形。その美しさは間近で見ると如実だ。

■食・湯・体験の宝庫で出雲を堪能し尽くす

「界 出雲」では夕食に出雲蕎麦や海鮮など、地元食材を取り入れた「福神会席」が提供される。

「界のお料理はいつも素晴らしいね。蟹の煮物椀や八寸のフォアグラ干し柿、それとお造りに合わせた煎り酒も美味しくて驚いたなぁ」

大満足の夕食後、波音に身を委ね早々に床に就いた。翌日、早朝の湯浴みを愉しんだ後は体験プログラム「手業のひととき」へ。

打出の小槌を模した器は先付けの「出雲そばの薯蕷(じょうよ)寄せ」。お重の器で供される「宝楽盛り」は遠藤さんも感動した八寸をはじめ、地魚のお造りが。煎り酒と紅梅しょうゆで味わう。
台の物は大田の大穴子と大山の鶏肉を味わう「うず煮鍋」。旧暦元旦の福神祭で振る舞う郷土料理をアレンジ。

「界 出雲」は「日本遺産に認定された『石見神楽』の守り人と学ぶ、神楽面の絵付け体験」を提供しており、石見神楽の神楽面を制作する「柿田勝郎面工房」の二代目・柿田兼志さんの手ほどきで、神楽面の絵付け体験ができる。

柿田さんのアドバイスと手本を見比べながら、遠藤さんも筆を取る。

「筆の使い方が難しいね。でも口を大きく描いて笑った顔にしたいな」

柿田兼志さんと共に和やかな雰囲気で神楽面の絵付けを体験。石見神楽面は長浜面ともいわれ、木彫面に匹敵する緻密な造形を伝統技術を用い軽量で強靭な石見和紙で制作される。遠藤さんは大黒様の面に絵付けを施した。

時折、柿田さんと談笑を交えながら、幾重にも筆で色を重ね、集中して仕上げていく。「自由度の高い創作」と柿田さんが言う通り、遠藤さんらしさが溢れる仕上がりとなった。

旅を総括して遠藤さんは語る。

「海が近いのに静かな環境で心が洗われる宿だね。神楽も絵付け体験もとてもよかった。日々の疲れを癒すには、あと何泊か必要だなぁ」

「界 出雲」で過ごす時間は、出雲という土地が持つ神秘性に直接触れることかもしれない。「知識」が「感覚」へと変わる。そして、次に進むため一度立ち止まる時間。

出雲の神がそうであったったように、自分の役割を見極める旅の拠点となるのだ。

大きく笑う口と頭巾に施したドット柄がポイント。「細かなルールがなくて自由に表現できたよ」
フロントの日本海と沈む夕日をイメージした設えが見どころ。たたら製鉄による「玉鋼」と「鉄滓(のろ)」が素材に使われている。
東側の絶景が愉しめる「かわたれテラス」。日本海に佇む出雲松島と水平線を望み、トラベルライブラリーとコーヒーマシンを併設。
「朝日をここで眺めるのも旅のいい想い出だね」
「界 出雲」の湯は塩分濃度の高いナトリウム-塩化物強塩泉。「清めの塩に見立てた“禊湯”ってコンセプトもいいね」
ご当地楽広場の「石州瓦(せきしゅうがわら)ベンチ」は島根の街並みを想起させる。石見地方特産の石州瓦が使用され落ち着いた雰囲気。柱には出雲大社と同じ様式のしめ縄。

■お詣り支度セット

「出雲大社お詣り支度プラン」では出雲大社の御神酒・八千矛やオリジナルご朱印帳、かみまもり、願い和紙が用意される。

■神話の里で灯台と海を望む 出雲大社お詣り支度の宿

「王道なのに、あたらしい。」をコンセプトに全国23施設で展開する、星野リゾートの温泉旅館。

ブルゾン14万800円(FRANK LEDER)、パンツ3万4100円(CONFECT)、その他スタイリスト私物 ※すべて税込
問/FRANK LEDER(MACH55 Ltd.)☎03-5846-9535、CONFECT 表参道店☎03-6438-0717

スタイリング/中本コーソー ヘアメイク/村上まどか 文/田村巴 撮影/野村雄治 取材協力/界 出雲

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