70048【前編3選】ラーメン天国・喜多方で本当に美味しい店と会津の古刹を巡る旅

【前編3選】ラーメン天国・喜多方で本当に美味しい店と会津の古刹を巡る旅

田村 巴 (たむら とも)
田村巴
ご当地ラーメンの中でも根強い人気を誇る、福島県の喜多方ラーメン。札幌ラーメン、博多ラーメンと並ぶ日本三大ラーメンともいわれ、喜多方市内には約100軒のラーメン店がある。福島へは幾度も訪れたことがあったものの、本場の喜多方ラーメンを食べたことがなかった筆者。せっかくなので1泊2日の喜多方・会津旅、限界まで喜多方ラーメンを食べてきたのである。
目次

■旅の思いつきは「会津大仏」への再訪

木造阿弥陀如来及び両脇侍坐像/通称:会津大仏

今から7年前の2015年、雑誌『男の隠れ家』の編集者だった筆者は、「仏像を巡る旅」特集で会津地方を取材した。会津は東北きっての仏都として知られ、鎌倉時代から今に至るまで衆生済度(しゅじょうさいど)を願う人々の拠り所となっている地だ。

いくつもの古刹を巡り、様々な仏様を拝観したが中でも特に印象に残っているのが、願成寺の御本尊「木造阿弥陀如来及び両脇侍坐像」、通称・会津大仏である。

像高2m41cmの阿弥陀如来像は千体仏をつけた舟形光背が金色に輝く立派な佇まい。久しぶりにその神々しい姿を拝見したくなったのである。

千体の仏様が背後に。

第65代住職の秋山高範さんに伴われ大佛堂へ。手を合わせ心の中で南無阿弥陀仏を唱える。雪深い山里で人々とともに存在し、生活を見守り続けてきた仏の顔の、なんと柔和なことか。再訪できた喜びと感謝を静かに念じた。

前回の取材時は先代の住職・諦譽俊良さんに様々な話を伺ったが、代替わりで住職となった秋山さんにも新たなお話を伺う。一般には公開していない本堂へも案内いただき、平家の落人たちがこの地に逃げ延び、弔いのためにひっそりと描かれた欄間絵や、貴重な仏像群を見学させていただいた。

願成寺
福島県喜多方市上三宮町上三宮字籬山833
https://aizudaibutsu.com/

■心穏やかに祈った後は、お待ちかねの喜多方ラーメン、1軒目!

●食堂いとう「炒めそば」750円

願成寺から車で10分、ちょっと変わった喜多方ラーメンが食せると聞いて訪れたのは、昭和32年創業の老舗「食堂いとう」。朝10時30分から開店しているということで、開店直後に入店する。

店内はこじんまりとした昔ながらの食堂といった風情で、懐かしさと温かさを感じる。店を切り盛りする伊藤さんにご挨拶し、名物の「炒めそば」を早速注文。ほどなくして供された炒めそばは、これまで抱いてきた喜多方ラーメンのイメージを覆す姿だ。

長年、麺やソースの味を変えずに守り続けてきた地元住民に人気の一杯である。ほかほかと立ち上る湯気と香ばしいソースの香りに、思わず生唾を飲み込む。撮影もそこそこに一口すすれば、甘しょっぱくて胃袋を刺激する期待通りの味。

「炒めそば」750円

しかし、普通の焼きそばとは似て非なるもの。もちもちとした太ちぢれ麺の食感とキャベツや豚肉の歯応え。秘伝のソースとラーメンスープでしっかり煮込まれたその味わいは、唯一無二の旨さだ。サービスの自家製漬物とスープも、また美味い!

ライスとスープ、漬物が付いた「炒めそば定食」(850円)は、特に男性に人気なのだとか。確かに炒めそばをおかずに白飯、食える! B級グルメ的な口コミも見かけるが、食堂いとうの炒めそばは“母の味”である。

喜多方市民の胃袋をしっかり掴むソウルフードなのだ。子供の頃から家族と通い、大人になっても定期的に食べに来る客が多いとのこと。

てきぱきと働き、明るく朗らかな“お母さん”伊藤さんと話していると、こちらまで元気をもらえる。「ちゃんとお腹いっぱいになったかい?」そんな言葉がなんだか嬉しい。

1軒目からとても美味しいラーメンと人情に出会えて、幸先の良い旅の始まりとなったのであった。

食堂いとう
福島県喜多方市1丁目4625
http://www.ramenkai.com/list/detail.php?i=9

■喜多方に行ったら訪れたい「ラーメン神社」

食堂いとうを後にして、次に向かったのは市内中心部のふれあい通りに面した「ラーメン神社」だ。喜多方ラーメンを腹一杯食べに行こうと決めた際に、現地の情報を調べていて出会ったスポットなのだ。

大きな箸で造られた鳥居が目印のナチュラルローカルマーケットとのことで、自然食品や酒類、雑貨などを扱っている。また、中には神社があり御朱印も受けられるという。面白そうじゃないか。

入店してみると昭和レトロな雰囲気。入り口から入って正面の奥に鎮座するラーメン神社にまずはお参りをして、記念に御朱印を授かる。

店長の岩田さんに、その時食べたいラーメンのイメージや味の好みを伝えれば、市内の喜多方ラーメンのおすすめも教えてくれるとのこと。それは旅人にとって、ありがたいサービスだ。何店舗か情報をもらい、店内を見学していると「喜多方らーめんソフトクリーム」のメニューが目に入る。

せっかくなのでプチサイズ(200円)をいただくことにした。小さなナルトとネギが乗ったソフトクリームは、初めて見たぞ。

「喜多方らーめんソフトクリーム」プチサイズ(200円)

一口食べてみると甘さの中にほんのり塩っぱさがある。どうやら、喜多方ラーメンの定番である醤油味風らしい。とはいえ、普通にとても美味しいのでこれは喜多方名物にすべき!

ぜひ喜多方へ訪れた際には立ち寄って、名物ソフトクリームを食べてもらいたい、おすすめスポットだ。

暮らしの酒場なみなみ/ラーメン神社
福島県喜多方市字2丁目4662
https://www.instagram.com/naminami___kurashi_no_sakaba/

■シジミとワサビのハーモニーが楽しめる喜多方ラーメン、2軒目!

●活力再生麺屋 あじ庵食堂「山葵潮ラーメン」850円

さて、次の店へと向かうことにしよう。「活力再生麺屋 あじ庵食堂」は地元住民はもちろん観光客にも人気のラーメン店とのこと。名物はシジミのエキスがたっぷりのカエシを使った「山葵潮ラーメン」とのこと。

福島県塩川町出身の店主・江花さんが、かつて塩川町が会津のシジミ産地だったという歴史にインスピレーションを受け、生み出した至極の一杯だという。

供されたラーメンはとても美しい。透き通るスープ、喜多方らしいちぢれ麺、食べ応えのありそうなチャーシュー、細めのメンマと白髪ネギ、そしてネギの上に添えられたワサビ。

「山葵潮ラーメン」850円

どんな味がするのだろう? 興味のままにスープをすすれば、優しい塩味の奥にひっそりと存在するシジミの香り。「ああ、これ。飲んだ次の日に朝一番で食べたいやつだ」。そんな感想が真っ先に頭に浮かぶ。

麺はもちろん、もちもちと食感が良くスルスルとすすれてしまう口当たり。ボリュームのあるチャーシューは驚くほどホロホロで、ふんわりと口の中でとろけるから驚いた。しっかり最初の一口を堪能した後、ワサビをスープに溶かしてみる。

あら、これもまた良い! 優しくて滋味深いスープの味が、すっきりシャッキリとする。輪郭が出る、とでも言うのだろうか。決して辛いわけではなく、鼻から抜ける風味がワサビで爽やかになるのだ。シンプルに美味しい。人気の理由がわかった気がする、これはこの店でしか味わえない特別なラーメンなのだ。

すっかり胃も心も満たされて店を去ろうとした際、店主の江花さんと少し話ができた。「ぜひこれも食べてみてください」そんな言葉と共にいただいた「鳥皮モツ煮」(660円)の缶詰は、地元塩川町のご当地グルメとのこと。

サイドメニューでも食べられるということで、次に訪れた際は鳥皮モツ煮を肴にビールを飲んで、〆で山葵潮ラーメンをいただきたい。そんなことを思ったのである。

活力再生麺屋 あじ庵食堂
福島県喜多方市豊川町米室字アカト5246-54
http://www.ramenkai.com/list/detail.php?i=45

■喜多方ラーメンといえば全国的にも有名な名店は外せない、3軒目!

●坂内食堂 喜多方本店「肉そば」1000円

ここまで2食、個性豊かな喜多方ラーメンをいただいてきたが、まだまだ食べられる! ということで訪ねたのは喜多方ラーメンの代名詞的な名店「坂内食堂」だ。休日ともなれば店の外には数十人規模の行列ができる有名店。日本各地にある「喜多方ラーメン坂内」は、この坂内食堂の暖簾分けである。

せっかく喜多方まで来たのなら、「誰もが旨い!」という本店の味を食べてみたい。そんな思いから取材を申し込めば、二つ返事でOKをいただいた。

平日の夕方、客足が比較的落ち着いた時間に暖簾をくぐる。笑顔で出迎えてくれたのは店主の坂内章一さんだ。はやる気持ちを抑えて、お店のオススメを聞けば「やっぱり肉そばはよく出ますね」とのこと。その言葉に迷うことなく、では、それで! ドキドキしながら着丼を待つ。

待つこと体感でほんの数分、提供された肉そばの丼を覆い尽くすチャーシュー、インパクトがすごい! スープは想像よりもずっと透き通っていて、「塩ラーメンですよ」と言われたら納得してしまいそうな色。

「肉そば」1000円

まずはこの大量のチャーシューからいただこう。たくさんあるから贅沢に一口で一枚食べてみた。「肉。肉だ!」噛み締めるほどに豚の旨さと脂がジュワーっと口に広がり、丁寧に仕込まれた仕事がうかがえる。

スープは豚骨ベースで、聞けば寸胴の中ですでに味が完成しているという。そのためラーメン丼にカエシを入れてスープを注ぐ、という一般的によく見る一連の流れで作られていないのだ。

特別にスープだけを注いで見せていただいた。

キリリと淡麗なスープは飲み干せるほど飽きがこない。あっさりしているのに旨味がすごくてレンゲが止まらないのだ。平打ちのちぢれ麺にスープが絡まり、ズルズルと音を立てて景気良くすする。美味い!

チャーシューの下に隠されたメンマを箸休めに肉と麺を交互にすすれば、これ一杯で1日分のスタミナをチャージできそう。すでに2杯のラーメンを食べていたにも関わらず、スルリと完食してしまった。

店内では「おみやげラーメン」も販売しており、地方発送も可能。職人が手作りするオリジナルの肉そばストラップもある。本店へ訪れた記念に購入する客も多い。かくいう筆者も、どちらもしっかりゲットして店を後にしたのであった。

坂内食堂
喜多方市字細田7230
http://shop.bannaisyokudou.jp/

■これにて1日目は終了。続きは後編で

喜多方・会津のラーメンと古刹を巡る旅。前半では元祖、定番の喜多方ラーメンをはじめ、個性あふれる一杯をいただいてきた。清らかな地下水が豊富な喜多方で出会うラーメンはどれもこれも美味いの一言。語彙力を失わせる魅力がある。

あまりに長文の記事になってしまったため、残り2軒は後編にて紹介したい。

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田村 巴 (たむら とも)
田村 巴 (たむら とも)

1979年、北海道出身。バイク(チョッパー)専門誌「HARD CORE CHOPPER」、フリーペーパー「MOLE Magazine」、ライフスタイル誌「男の隠れ家」を経て、現在は「男の隠れ家デジタル」編集長。

バイクやクルマでの日本一周・目的を決めない旅が趣味。好きな分野は「飛行機」「クルマ旅」「地方の土着的な風習や歴史」「ミステリー」など。UFOや都市伝説に興味深々。好きなものは「巨大建造物」「道の駅・SA(道の駅きっぷ収集)」「キャンプ」「ガジェット」「カメラ」「ボストンテリア」。

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