70722チ・ケ|アルゼンチン・タンゴのリズムに哀愁と浪漫漂う旋律が重なり、小さな空間に鳴り響く。

チ・ケ|アルゼンチン・タンゴのリズムに哀愁と浪漫漂う旋律が重なり、小さな空間に鳴り響く。

男の隠れ家編集部
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■同じ場所で、いつまでも変わらずあり続ける価値

タンゴが鳴り響くシックな店内。壁にはタンゴに関連する写真が並ぶ。

「私、この店より20日ほどお姉さんなんです」と朗らかに迎えてくれたのは中西顕子さん。「チ・ケ」の2代目だ。

中西さんの両親がこの地に店を構えたのは昭和34年(1959)。以来60年にわたり、こだわりの珈琲と共にタンゴを届けてきた。それにしても、どうしてタンゴだったのだろう。

「父はいろいろな音楽を聴く人でした。その中でよく聴いていたのがタンゴだった。珈琲にも合うとしっくりきたようです」

昭和一桁生まれの人たちが若い頃、タンゴは馴染みのある音楽だった。当時レコードは高価だったため、音楽好きの若者たちの交流の場になっていたのだろう。

「久しぶりに来てくれたお客さんがカウンターに座って、ここで窓の外を眺めていたら二十歳の頃に戻れるわ、とおっしゃるんですよ」

人気のBブレンドは600円。価格は1990年から変えていない。

コロナが流行し始めた頃、動画を配信する店を見て葛藤したという中西さん。

「映像で見たり聴いたりできたとしても、それはチ・ケで聴く音ではないですよね。珈琲を前にして、空間に漂う香りとスピーカーが空気を振動し続ける中で飲むのとは違う。ウチはやっぱり、体で感じてもらいたいかな」

このまま店を続けることで、誰かに喜んでもらいたい。「そのためにも、私が元気でしっかりせなあかんね」と中西さんは笑う。

これからも変わらず、この店を愛する人たちの帰る場所であり続ける。

■店主とっておきの一枚

ダイナミック・アルゼンチン・タンゴ
ドナート・ラシアッティ
レーベル:NIPPON GRAMMOPHON

『Chique』はアルゼンチン・タンゴのスタンダードナンバー。俊二さんが好きだったことから店の名前になった。アルバムのドナート・ラシアッティはウルグアイのバンドネオン奏者であり作曲家としても知られる。

■音響機材

レコードプレーヤー:DENON DL-1300MKⅡ
アンプ:(プリ)Accuphase C-222、(パワー)Western-350pp
スピーカー:TANNOY Lancaster

チ・ケ
昭和34年(1959)創業
大阪府大阪市阿倍野区長池町21-14
TEL:06-6628-1541
営業時間:10:30~19:30(土曜12:00~19:30)
定休日:日・月曜・祝日
席数:カウンター12席
アクセス:大阪メトロ「西田辺駅」より徒歩3分

文/いしだかおり 撮影/渡部健五

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