27715ディズニーランドは“不愉快”?バンクシーは「ディズマランド」で何を批判したのか?

ディズニーランドは“不愉快”?バンクシーは「ディズマランド」で何を批判したのか?

男の隠れ家編集部
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グラフィティライター、ストリートアーティスト、さらにはアート・テロリストとして活動するバンクシーの最大のプロジェクトといえるのが、2015年に企画された「ディズマランド」だろう。
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バンクシーから見たディズニーランド

現実世界を突きつける遊園地「ディズマランド」

展覧会と遊園地を掛け合わせたこの展覧会は、もちろん「ディズニーランド」を意識したもの。「不愉快な」「陰鬱な」という意味をもつdismalから名前をとったプロジェクトは、イギリス南西部のウェストン=スーパー=メアというリゾート地で、5週間限定でオープンした。

ディズマランドではミッキーマウスを思わせるネズミの耳をつけたスタッフが不機嫌そうに接客、「不愉快な場所」を盛り上げていた。(c)Alamy

場内にはバンクシーの作品のほか、バンクシー側から制作を依頼した58名のアーティストの作品が展示された。荒廃したシンデレラ城やデジタル障害を受けて歪んだリトルマーメイドの彫刻、パパラッチに追われてカボチャの馬車で横転事故を起こしたシンデレラなど、直接的なディズニーランドへのアイロニー(皮肉)を見てとることができる。

ディズマランドの荒廃したシンデレラ城
野外プールの跡地に建設されたディズマランドは、会期終了後にはすべて解体され、建築材は難民キャンプに送られて再利用されたという。(c)Alamy

しかし、展示物のなかには難民をギュウギュウに乗せたボートの模型を操作するアトラクションや、張りぼての入国管理ゲートなど、現実世界の多くの問題が提示されている。

難民を乗せたボートを操作するアトラクション
1ポンドを入れると、ボートを遠隔操作できる。ハンドルを右に回すと左に、左に回すと右にとボートが逆方向に動き、“思い通りにならない”ように細工されている。(c)Alamy

夢の世界に現実をぶつけることで社会問題を浮き彫りにし、アメリカの大量消費社会に疑問を投げかけている。用意周到に準備されたテーマパークは、バンクシーのプロジェクトのひとつの到達点といえる。

ちなみに入場料は3ポンド(およそ500円)で、社会問題や現代美術に関心ある層だけでなく、子ども連れの家族、カップルなども訪れたのは、あくまで「誰もが楽しめる夢の世界」というテーマパーク的な表層を貫いたことが大きい。

Banksy’s Voice

人は僕のことが大好きか大嫌いか、
そうでなければ
どうでもいいかだ。

バンクシーとディズニー

バンクシーは、2006年にディズニーランド内に無許可で、アメリカのテロ対策を批判する人形を設置した。《ナパーム弾》でミッキーマウスを登場させるなど執拗にディズニーを批判。そもそも、バンクシーの分身といえるのもマウス(ネズミ)。そこには夢と現実、光と影、消費社会と現実の社会問題という対比が見えてくる。

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