外出先で書斎のように落ち着ける空間があると、どんなに良いだろう。書と向き合う、至福の一人時間をいつもと違う環境で味わいたい。
(※その他の写真は【関連画像】を参照)
※この記事は2025年3・4月号に掲載されたものです。
■人形たちが迎えてくれる不思議な異空間へ
狭い路地に残る昭和レトロな街並みが人気の中崎町。個性的な店が並ぶ中で、ひときわ目を引くのが「珈琲舎・書肆アラビク」だ。
引き戸を開ければ、まさにそこは異空間。ひしめくように本が並び、天井にはシャンデリア、店のそこかしこに人形たちが静かに座っている。まるで時間が止まったような不思議な感覚に襲われる。

「本と珈琲の店を」と店主の森内 憲さんが2017年にオープン。人形の専門誌のバックナンバーを引き取ったことをきっかけに、人形や人形作家を紹介するようになった。今では現代作家の人形から戦前の市松人形まで、さまざまな人形を展示、企画展なども行っている。
「人形はプリミティブなもので可愛がる対象でもあります。また、子どもの成長を願う市松人形など、祈りや呪術という側面もある。アートにはなりえないからこその魅力が人形にはあります」

本は古書を中心に近代文学から美術書まで幅広く、店主は大阪の文学にも造詣が深い。建物は昭和初期の長屋で当時のままの雰囲気を残している。同時代のアンティーク家具と調和し、じつに居心地がいい。
20代から70代まで、幅広い層が訪れるという。本を求めてくる人、珈琲を飲みにくる人、中には通ううちに人形コレクターになる人も。日常の風景にスッと溶け込む不思議な異空間に浸かりながら、ゆっくりと本のページをめくりたい。


■この店で読みたい
●愛玩拒否の人形 土井典とその時代

人形作家の土井典は、三島由紀夫の写真集や寺山修司の舞台美術を手がけたアーティストでもある。「彼女をフォーカスすることで、人形の真価を明らかにする意欲作です」。
珈琲舎・書肆アラビク
大阪府大阪市北区中崎3-2-14
TEL/06-7500-5519
営業時間/13:30~21:00
定休日/水曜(火曜不定休)
アクセス/大阪メトロ「中崎町駅」より徒歩約3分
文/いしだかおり 撮影/渡部健五
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