今夏より、都内の銭湯の入浴料が値上げされ、480円から500円になった。たかが数十円、と思うかもしれないが、毎週銭湯に通う筆者からすると、20円の値上げは正直辛い。
だが、温泉地やレジャー施設に行くとなると、時間も必要だし、旅費も掛かる。そう考えると、仕事終わりに気軽に通えて、500円で非日常の空間が楽しめるというのは、かなりお得ではないだろうか。
そこで今回は、入浴料が値上げされても行きたい、都内のおすすめ銭湯をピックアップした。銭湯マニアが足しげく通う、人気の銭湯を厳選したので、ぜひ参考にしてほしい。
■銭湯の歴史
日本で銭湯の営業が始まったのは、江戸時代に入ってからのことだ。1591年に、東京都千代田区で「せんとう風呂」が誕生し、人気を博したことをきっかけに、江戸の町には次々と銭湯が建てられ、庶民が公衆浴場に通う習慣が定着した。
江戸は、風が強くホコリが舞いやすい上に、夏は蒸し暑く、冬は寒いという気候の影響で、もともと入浴を好む人が多かったという。だが、当時は水が貴重で、火事の危険もあったことから、庶民が自宅に風呂を持つことは一般的ではなかった。
そのため、いつでも気軽に入れる公衆浴場が登場すると、瞬く間に江戸中で”銭湯ブーム”が沸き起こる。自宅に風呂がなかった時代、近所の銭湯に出掛けることは、江戸の庶民の娯楽のひとつでもあったのだ。
■東京の入浴料が値上げして500円に
冒頭でも解説した通り、2022年7月15日より、都内の銭湯の入浴料が、従来の480円から20円値上げして、500円に変更された。
値上げの主な理由は、エネルギー価格の高騰である。水道光熱費のコストが上昇し、銭湯の経営を圧迫していることから、やむを得ず値上げに踏み切ったということだ。
中には「家に風呂があるのに、わざわざ銭湯に行く必要性を感じない」と思う人もいるかもしれない。だが、銭湯は体を洗うだけでなく、サウナや電気風呂、薬湯などでリラックス効果が得られたり、内装や建物の雰囲気を楽しめたりと、自宅の風呂では味わえない魅力がたくさんある。
ちょっと気分転換をしたい、疲れた心と体を癒したい……、そんな時は、銭湯に足を運んでみてはいかがだがろうか。
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■都内のおすすめ銭湯5選
近年は、最新設備を備えたスーパー銭湯が増えつつあるが、銭湯の雰囲気を存分に堪能するのであれば、やはり”昔ながらの銭湯”が一番おすすめだ。
ここからは、昭和にタイムスリップしたような気分になれる、都内の人気レトロ銭湯を紹介する。
おすすめ銭湯①明神湯(大田区)
明神湯は、東急池上線「雪が谷大塚駅」を下車し、15分ほど歩いた場所にある。昔ながらの宮造りの外観、高い折上格天井、大浴場の富士山のペンキ絵など、”これぞ銭湯!”という昭和な雰囲気を醸し出している。
昭和32年創業だが、設備や内装に古びた様子は全くなく、施設内の隅々まで清掃が行き届いていると評判だ。湯は、日替わりの薬湯、深風呂、浅風呂の3種類が楽しめる。
おすすめ銭湯②燕湯(台東区)
地下鉄銀座線「上野広少路駅」から徒歩4分の位置にある燕湯は、朝6時から営業していて、朝湯を楽しみたい人にもおすすめ。ボディソープやシャンプーは備え付けになっており、手ぶら入浴がOKなのも嬉しい。
建物は、都内の銭湯で初めて有形文化財に登録され、観光客も多く訪れる、有名スポットとなっている。浴槽は、深風呂と浅風呂の2種類で、日曜・祝日は薬湯も用意されている。
おすすめ銭湯③ふくの湯(文京区)
東京メトロ南北線「本駒込駅」から、徒歩6分の場所にあるふくの湯。2011年に改装を実施し、”デザイナーズ銭湯”としてリニューアルオープンした。和モダンな雰囲気はそのままに、エレベーターやLED照明といった、現代的な設備が新たに導入され、おしゃれな空間に仕上がっている。
浴槽は「大黒天の湯」と「弁財天の湯」の2種類があり、週替わりで男女が入れ替わるシステム。薬湯のほか、人口ラドン温泉や、ジャグジー、壺湯など、色々な湯が楽しめるのも魅力だ。
おすすめ銭湯④藤の湯(世田谷区)
藤の湯は、東急田園都市線「用賀駅」の南口を出て、8分程歩いたところにある。こちらの銭湯は、浴槽内に東屋があるのが特徴。東屋の下には、備長炭入りのヒノキ風呂が設置され、木の香りを楽しみながら、贅沢なひと時を過ごせる。広々としたバイブラの浴槽や、ジェット風呂もおすすめ。
脱衣所には、作家としても活躍する主人が手掛けた、彫刻やアート作品がセンス良く飾られている。木のぬくもりが感じられる、昔ながらの昭和レトロな銭湯だ。
おすすめ銭湯⑤タカラ湯(足立区)
JR「北千住駅」より徒歩18分、足立区千住元町にあるタカラ湯は、昭和2年創業の老舗銭湯だ。立派な日本庭園と縁側があり、銭湯マニアの間では「キングオブ庭園」と呼ばれている。
浴場には、リンスインシャンプーや石鹸が備え付けられており、入浴用品の貸し出しもあるため、手ぶらでも問題なし。日替わりの薬湯、ゲルマニウム風呂、バイブラ装置など、浴槽のバラエティーが豊かで、サウナが完備されているのもポイント。
■まとめ
本記事では、銭湯の歴史と、銭湯が庶民の人気を獲得した理由、都内のおすすめレトロ銭湯を紹介した。
一口に銭湯といっても、建物の雰囲気や浴槽の種類などは全く異なる。さまざまな銭湯に通って、とっておきの一軒を見つけてほしい。
楽しんでいただけただろうか。今後も「男の隠れ家デジタル」らしい切り口で、読者の気になる情報や、おすすめスポットを紹介していきたいと思う。
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