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【前編3選】ラーメン天国・喜多方で本当に美味しい店と会津の古刹を巡る旅
■清々しい朝に不思議な「会津さざえ堂」で散歩
会津若松市の飯盛山には寛政8年(1796)に建立された御堂がある。「円通三匝堂(えんつうさんそうどう)」は、その不思議な構造から「会津さざえ堂」と呼ばれ、国の重要文化財にも指定されている。
昼食のラーメンを美味しくいただくため、軽い運動もかねて朝から訪れることにした。飯盛山は白虎隊十九士の墓があるほか、厳島神社や宇賀神堂があるなど、会津地方の歴史を体感する上で重要な場所。
中でも会津さざえ堂は世界でも非常に珍しい二重らせん構造となっており、上りも下りも一本道。一度も人とすれ違うことがない構造となっている。レオナルド・ダ・ヴィンチの構想が巡り巡って伝わった、という説もあるというから面白いじゃないか。
183段の石段を登り、会津さざえ堂へ。確かに横から見ると特異な構造が見て取れる。拝観料を支払い手を合わせた後、中へ一歩踏み入れる。スロープ状の通路が時計回りで上へと続き、なるほどサザエのような構造なのか。
ぐるりと一周し、確かに誰ともすれ違わずに上って下りてきたことに不思議な体験をしたのであった。
会津さざえ堂
福島県会津若松市一箕町八幡滝沢155
http://www.sazaedo.jp/
■喜多方の地酒を求めて「ほまれ酒造」で酒蔵見学
会津若松から一路、再び喜多方市へやってきた。本日のラーメン1杯目をいただく前に時間があったので、喜多方の酒蔵「ほまれ酒造」で酒蔵見学に参加することに。
敷地内にある日本庭園「雲嶺庵」は、文学博士の綿貫哲雄が庭から見える雲間に磐梯山の山頂が望めることから名付けられた、美しく立派な庭園だ。その庭園もコースに含まれたガイド付きの見学を体験する。
大正7年(1918)、米問屋や味噌・麹の製造を営んでいた唐橋幸作が酒蔵を譲り受けて創業したほまれ酒造は、代表銘柄「会津ほまれ」で知られ国内外で高い評価を得ている。
「播州産山田錦仕込 純米大吟醸」は2015年のIWC(インターナショナル ワイン チャレンジ)のサケ部門でチャンピオンの栄冠に輝き、翌年三重県で開催されたG7伊勢志摩サミットにて、各国首脳への贈答品として贈られた名酒。あのオバマ元大統領も持ち帰ったという。
蔵の歴史や酒造りの話を聞きながら庭園も見学し、美味い酒造りに欠かせない“水”の良さを知った。世界で最も美味しいと評価される日本酒を造る水が湧く、この喜多方。その水が作り出すからこそ美味いのは日本酒然り、ラーメンもまた然りなのかもしれない。
ほまれ酒造
福島県喜多方市松山町村松字常盤町2706
https://www.aizuhomare.jp/
■喜多方産・会津産の食材にこだわる喜多方ラーメン、4軒目!
●農家レストラン 塩川屋「潮ラーメン」800円
塩川屋は地元食材にこだわって、農家が営むレストラン。
自社農場でコシヒカリとエゴマを食べさせて育てた福島のブランド豚「エゴマ豚」は、必須脂肪酸のα-リノレン酸が多く含まれた良質な豚。甘みのある脂、柔らかい肉質で知られ、その高級食材エゴマ豚を贅沢にチャーシューでいただけるラーメンメニューが人気の店だ。
他にもメンチカツやチャーシュー丼、エゴマ豚のしゃぶしゃぶなど多彩なメニューがあるのだが、今回はラーメンを食すと決めた旅。ここは一番人気の「潮ラーメン」を迷いなく注文した。
運ばれてきた丼を見て、思わずため息がでる。シンプルながらバランスの取れた美しさ。喜多方産アスパラガスの存在が上品さをたたえている。スープはシジミをベースに昆布や煮干し、香味野菜からとられ油脂が使われていないという。
まずは一口、スープから。キリっとした淡麗な口当たりながら、ふんわりと優しい塩味が体に染みる。動物性の油脂が入っていないのに、滲み出るコクは何なのか。ものすごく健康的な食べ物を摂取している感覚。
丸めの太ちぢれ麺がスープを掬い上げ、麺をすする箸が止まらないのは言うまでもない。そして、エゴマ豚のチャーシューである。青魚と同様の栄養素が含まれているのを知った上で食せば、しっとりとした食感と噛めば噛むほど滲む甘さ、そして他では得られない“ありがたさ”まで感じる始末。
アスパラガスの存在も良い。特有の甘みと風味が塩味のスープに合っている。これだけ食材にこだわり抜いた贅沢な一杯が、たったの800円で食せるのは、生産者が営むレストランだからこそだろう。東京で同じレベルのものを食べるとしたら幾ら支払えばいいのだろうか? 確実に1000円は超えてくるだろう。
元気な女性店員の皆さんが活気よく朗らかに働く姿も、とても好印象だ。「美味しかったです」と伝えれば、みんな笑顔で嬉しそうに「ありがとう」と返してくれる。そんな温もりにあふれた、喜多方ラーメンの名店である。
農家レストラン 塩川屋
福島県喜多方市1丁目4544
https://mediateshiokawa.jp/
■会津ころり三観音を駆け足で巡る
腹が満たされたところで、夕食のラーメンまで古刹巡りをすることに。福島県といえば会津三十三観音巡りが日本遺産に登録されている。さすがに夕食までの数時間で全てを巡ることは不可能だ。そこで思いついたのが、「会津ころり三観音」へのお参り。
ころり三観音とは、“苦しまずにぽっくり死ぬ”という願いを成就させるという信仰で、会津でも3つの観音が「ころり三観音」として古より人々の拠り所となってきた。
まず向かったのは妙法寺の「鳥追観音」。心穏やかに幸福な人生を祈りつつ、横に鎮座する身代わりなで仏(金剛力士像)も撫でた。特に左足首に怪我をしやすいので、重点的に仏様の左足をお祈りしながらナデナデ…。きっとご利益があると信じて。
続いて訪れたのは恵隆寺の「立木観音」だ。弘法大師・空海の作とも伝わる木造十一面千手観音は8.5mと国内最大級の木造観音として圧倒的な大きさを誇る。真下から見上げるように手を合わせ、七難を七福に変えるというご利益を願ったのである。
最後は弘安寺の「中田観音」だ。こちらは個人での拝観は前日までの予約が必要と知らず、御本尊を拝むことができなかった。とはいえ、野口英世の母・シカが深く信仰したと伝わる霊験あらたかな古刹。しっかりと参拝して、再訪を誓った。
■喜多方ラーメン旅のラストは異色の豚骨!? 5軒目!
●源絆家 美豚「豚骨らーめん塩」900円
これまで4軒の喜多方ラーメンを食してきて、最後に訪れたのは「源絆家 美豚」。創業から4年と若い店でありながら、アグレッシブなメニューで人気の店だ。
店主の松下さん、出身は九州の熊本とのこと。奥様の地元・喜多方でラーメン店を始めるにあたり、自分のルーツである九州の豚骨ラーメンと喜多方の麺を融合した一杯を生み出した。
味のラインアップも豊富で、正油、塩、濃味噌、坦々風から選べるのも面白い。今回は松下さんオススメの塩味を注文した。5分ほどで提供されたラーメンは大きな海苔が中央に鎮座する佇まい。
まずはスープから。確かに九州風の豚骨だ。けれど豚骨特有の臭みがなくて、マイルドな味わい。濃厚なのにあっさりしているスープを味わいつつ、中太のちぢれ麺を掬いあげれば、その頃にはすでに違和感はない。
喜多方ラーメンなのか、豚骨ラーメンなのか。些細なことはどうでもいい。スープが麺にしっかりと絡み、豪快にすすれば納得の旨さ。訪れた時間帯がちょうど夕飯時ということもあり、活気ある店内は地元の常連でいっぱいだ。
喜多方ラーメン界に新風を吹かせていると評判の源絆家 美豚。つけ麺も人気を博しているというから、いずれまた再訪しなければならない店だ。
源絆家 美豚
福島県喜多方市小田付道下7122-1
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■まとめ
2回に分けてお届けした福島県会津・喜多方の旅。喜多方ラーメンを腹一杯に食べ、会津の古刹を巡り、色々と満たされた1泊2日の旅となった。
特に喜多方ラーメンは100軒を超える店が市内にあり、その数だけ個性豊かな味がある。ここで紹介したのは、ほんのわずかでしかない。他にも食べてみたいラーメンはたくさんあるのだが、それはまたの楽しみにしよう。
これを読んで喜多方ラーメンを食べたくなっていただけたら、それだけで嬉しい限り。ぜひとも次の休暇は喜多方への旅をオススメしたい。
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