初夏、信濃路が一年中で一番輝く季節を迎える。じっとしていた自然がむくむくと起き上がり手招きして旅人を迎えてくれているようだ。さて爽やかな緑に囲まれて湯に浸かってみようか。
というわけで「男の隠れ家デジタル」では信州長野のオススメ温泉宿を6軒ご紹介。初夏の温泉旅行の参考にしていただけたらと思う。
■ホテル富貴の森(南木曽町)
「何も無い」ことが究極のおもてなし宿の内も外も木曽の木の香に満たされる

深く静かな山々に圧倒され喧騒から離れる木曽の宿
木曽路はすべて山の中である……から始まる島崎藤村の名作『夜明け前』。現在でも深く美しい山々が昔のまま残っている木曽に「ホテル富貴の森」はある。
地元の材木会社が運営しており、ホテル内にある全ての木材製品が木曽の木材で造られていて、館内の隅々までその美しさや香りが感じられる内装だ。もちろん大浴場も地元木曽のヒノキなどを使用し、木の香りに満たされている。


湯船から外に視線を移せば、深く美しい山々が優しく視界に入ってくる。とろ~りとした肌触りのお湯は無色、無臭の「アルカリ単純硫黄冷鉱泉」。つるつる美人の湯と評判だ。
もう一つのホテルの自慢は、木曽地方を中心に集められた厳選食材を使った自然の豊かさに感謝できる料理。森からの初夏の風と木の香を感じられる木曽の温泉ホテル。「何も無い」贅沢を満喫するために足を運んでみたい。


ホテル富貴の森
長野県木曽郡南木曽町吾妻4644-7
TEL:0264-58-2288
チェックイン・アウト:15:00・10:00
宿泊料:ロッジスタイル 2万1500円〜 2名/1室(1名料金)
客室数:12室
泉質:アルカリ単純硫黄冷鉱泉
アクセス:JR「南木曾駅」より送迎バス(要予約)で約15分
http://fukinomori.com
■高峰温泉(小諸市)
ランプの灯りの中で湯に浸かれば雲上の世界で下界と一時の隔絶

山の一軒宿の楽しみは標高2000mの野天風呂
今からさかのぼること100年以上前の明治の初期。地元の農家が岩から湧き出る温泉を見つけ、簡単な野天風呂を造ったことがこの山奥の温泉の始まりだ。昭和31年(1956)10月1日、念願の旅館を開業した高原の一軒宿は多くの登山客に愛されてきた。
宿を訪れたらぜひとも入りたいのが標高2000m・雲上の野天風呂だ。眼下には高峰渓谷、遠くには中央アルプスの山々が視界を捉え、自然と一体感が味わえる気分爽快な湯だ。


内風呂は高峰温泉の代名詞である「ランプの湯」。源泉かけ流しで冷泉のままの湯と加熱泉の2つの湯船があり、交互に入ることで血行促進につながる。そしてもう一つ乳白色の源泉が気持ち良いヒノキの高峰の湯がある。また山歩きや星の観察会、野鳥観察界など、標高2000mの宿ならではの体験プランも用意されているのも嬉しい。


高峰温泉
長野県小諸市菱平高峰高原704-1
TEL:0267-25-2000
チェックイン・アウト:13:00・10:00
宿泊料:1万7750円〜 2名/1室(1名料金)
客室数:23室
泉質:含硫黄-カルシウム・ナトリウム・マグネシウム-炭酸水素塩温泉
アクセス:JR「佐久平駅」よりバスで約1時間
https://www.takamine.co.jp
■創業大正十五年 蓼科親湯温泉(茅野市)
武田信玄の隠し湯は蓼科の文化を守る宿

5つの絶景渓流露天風呂と3万冊蔵書ラウンジで寛ぐ
開湯400年とも1200年とも言われる歴史ある蓼科親湯温泉。絶景ロードとして有名なビーナスラインから一歩奥に入った滝ノ湯川沿いの瀟洒な宿だ。
蓼科親湯温泉は大正、昭和に多くの文人・歌人が訪れた宿で、そうした背景から3万冊の蔵書を取り揃えたラウンジ&バーや太宰治など宿に縁ある10人の文人たちをイメージした客室などがある。
温泉は、武田信玄の隠し湯でもある自家源泉。弱酸性のさらりとした泉質は美人の湯として評判だ。緑に囲まれる5つの絶景露天風呂は心地良い渓流のせせらぎ音に抱かれる。まさに目と耳と肌で楽しめる温泉だ。
さらに特筆すべきは料理だ。健康長寿県の信州で自然豊かに育った食材を和フレンチベースの「蓼科 山キュイジーヌ」としていただける。レストランは個室になっているので周りに気兼ねなく楽しめる。


創業大正十五年 蓼科親湯温泉
長野県茅野市北山蓼科高原4035
TEL:0266-67-2020
チェックイン・アウト:14:00・10:00
宿泊料:1万4850円〜 2名/1室(1名料金)
客室数:52室
泉質:単純温泉(弱酸性低張性低温泉)
アクセス:JR「茅野駅」より送迎バスで約30分
https://www.tateshina-shinyu.com
■つたや季の宿 風里(木曽町)
木曽御嶽山の麓に流れる贅沢な時間

御嶽山の豊かな恵みを肌で味わう大浴場と露天風呂
長野県御嶽山の麓1000m~1500mに広がっているのが木曽馬と蕎麦のふるさとである長野県木曽町・開田高原。平成18年には「日本で最も美しい村」に選定された。その雄大な木曽御岳山と満天の星空を望む大自然の中にぽつりと佇む眺望佳景の宿が「つたや季の宿 風里」。
宿を囲む自然は四季折々にその表情を変え、旅人の心を癒してくれる。広大な庭に備わるテラスでのんびり風とお茶を楽しみながら自然を感じる。そんな癒しの休日を提供したい、との思いがこの宿には詰まっている。
特にそれが実感できるのが露天風呂と大浴場。季節によって桜や白樺に囲まれての湯浴みは気分爽快だ。2021年秋にはテントサウナ、源泉水風呂、露天風呂を完全プライベート空間で楽しむスパテラスツインルーム・スパテラス特別室がオープン。人気を呼んでいる。


つたや季の宿 風里
長野県木曽郡木曽町開田高原木曽馬の里入ル
TEL:0264-42-1188
チェックイン・アウト:15:00・10:00
宿泊料:3万3000円〜 2名/1室(1名料金)
客室数:20室
泉質:炭酸水素塩泉
アクセス:JR「木曽福島駅」より送迎バスで約30分
https://kiso-kazari.com
■湯宿せきや(山ノ内町)
全8室の小さな宿でプライベートな休日を

全ての部屋がかけ流しの天然温泉露天風呂付き
美術館や博物館が木々の中に点在していて、温泉地というよりは別荘地の雰囲気を持つ上林温泉。「湯宿せきや」は大正元年(1912)創業の宿だ。温泉も料理も堪能できる宿として密かな人気を得ている。
温泉は男女別の大浴場のほか、源泉かけ流しの3つの無料貸切露天風呂も全て森の中にあり、森林浴も満喫できる。料理は、雪国の豪壮な建築の個室「四季亭」ほか、個室の畳ダイニング「昔心亭」で。霜降り信州牛のしゃぶしゃぶをメインに、志賀高原山麓の北信濃ならではの山の幸、野菜、フルーツをふんだんに使った郷土会席を楽しめる。
食事の後は「サロンTANNOY」で上質のオーディオと100本以上用意されている信州産ワインや地ビールなどで至福の時間を過ごしたり、薪ストーブを備えた「ラウンジ暖DAN」で静かでプライベートな時間を過ごせる。


湯宿せきや
長野県下高井郡山ノ内町上林温泉
TEL:0269ー33-2268
チェックイン・アウト:14:00・11:00
宿泊料:2万3100円〜 2名/1室(1名料金)
客室数:8室
泉質:ナトリウム・カルシウム・塩化物-硫黄塩温泉
アクセス:長野電鉄「湯田中駅」よりバスで約10分(送迎可)
https://www.yuyadosekiya.com
■心を整える宿 風景館(高山村)
故郷に帰ったようなおもてなしの宿

「おかえりなさい」の心でもてなす松川渓谷の宿
信州高山村の標高900mに位置する山田温泉の風景館。応永年間(1394~1427)に発見されたと伝えられている山田温泉は、開湯当時は山岳信仰の修行の地として、その後戦国武将福島正則公も湯に浸かったと伝えられている。
その地に、人々の心の拠り所となる旅館を造りたいとの思いから明和5年(1768)に創業された風景館。以来、この宿には文人・墨客も心身の療養にこの地を訪れたという。
「お客様の故郷であり続けたい」という田舎流儀のおもてなしが今でも評判を呼んでいる。楽しみの温泉は自噴する湯を自然のまま手を加えることなく、全ての浴槽で源泉をかけ流している。
穏やかな硫黄の香りと湯船の木の風合いを堪能できる。「里山の恵み御膳」と称する料理は自然食をテーマに、地産地消にこだわり、地元農家と提携し自然の恵みを供している。


心を整える宿 風景館
長野県上高井郡高山村大字奥山田3598
TEL:026-242-2611
チェックイン・アウト:15:00・10:00
宿泊料:1万3200円〜 2名/1室(1名料金)
客室数:21室
泉質:ナトリウム・カルシウム塩化物泉
アクセス:長野電鉄「小布施駅」より無料送迎バスで約60分
https://www.fukeikan.co.jp
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