2020年10月から税率が段階的に変更

酒類に課せられる税金の歴史・推移は複雑で、税率改正の度に酒造業界は大きく揺さぶられる。原材料やアルコール度数、生産量など、さまざまな分類で税率が異なり、またそれぞれの分類で税率が改定されてきたわけだが、消費者が知りたいのはいつも、税率改正に伴いお酒の値段が上がるのか、下がるのか、の一点だ。

国税庁が平成32年(2020年・令和2年)10月1日から段階的に税率改正を実施するのは、ビールや発泡酒などを含む発泡性酒類と、日本酒やワインなどを含む醸造酒類、そして梅酒など果実酒を含む混成酒類の酒税の基本税率。これに加え、発泡性酒類の特別税率も改正される。

醸造酒、蒸留酒、混成酒の違いは?

「ビール」は7円(350mlあたり)の値下げ

まず、2020年10月1日からビールの値段は安くなる。いくら減税になるかというと、これまでは350ml缶1本あたりのビールにかかる酒税は77円と発泡性酒類の中では最も高く、価格の面で発泡酒や新ジャンル商品を選ぶ人も多かったが、減税後はビール350mlあたり7円安くなる。量を飲む人にとってはかなり家計が楽になりそうだ。

麦芽比率が50%を超える発泡酒もビールと同等の税率が課せられていたが、こちらも2020年10月からビールと同じく減税になる。麦芽の量が多く、香りや苦味が楽しめる海外製の発泡酒などを好んできた人にはうれしい改正だ。

「発泡酒」は一部値下げ、「新ジャンル」は増税で約10円値上がり

一方、発泡酒は麦芽の使用割合によって税率が区分されていて、麦芽比率25%以上50%未満の発泡酒が現在350mlあたり約62円のところ、新しい税率では約58円に値下げ。麦芽比率25%未満の発泡酒は現在も改正後も350mlあたり約47円と値段に変化なし。

新ジャンル(第三のビール)はというと、350mlあたり28円だったのが、約38円へ増税され値上げに。安さが魅力だった新ジャンルが約10円も高くなると、値段の安いお酒へと乗り換えを検討する人が増えそうだ。

<ビール系飲料の酒税比較(350mlあたり)>

酒類〜2020年9月2020年10月〜価格増減
ビール77円70円7円値下げ
発泡酒
(麦芽比率25%以上50%未満)
約62円約58円約4円値下げ
発泡酒
(麦芽比率25%未満)
約47円約47円変化なし
新ジャンル約28円約38円約10円値上げ

大手ビール4社が価格改定を発表

今回の税率改正を受け、アサヒビール、キリンビール、サッポロビール、サントリーの大手ビール4社も主な対象ブランドの価格改定を発表。減税となるビールや増税となる新ジャンルなどの主な銘柄を紹介している。各社、希望小売価格の設定はしていないためいくらになるかは明示されていないので、酒類の区分と今回の改定される税率で計算してみよう。

【大手ビール4社】価格改定になるブランド一覧

<アサヒビール>

ビール(減税)アサヒスーパードライ、アサヒ ドライプレミアム豊醸
新ジャンル(増税)クリアアサヒ、アサヒ オフ、アサヒ ザ・リッチ
ワイン(増税)サントネージュ リラ、サンタ・ヘレナ・アルパカ

アサヒビールでは、人気新ジャンル商品である「クリアアサヒ」や、「リアリィ!?」のCMでお馴染みの「アザヒ ザ・リッチ」などが値上げに。

<キリンビール>

ビール(減税)キリン一番搾り生ビールなど
新ジャンル(増税)キリン のどごし<生>、本麒麟など
紹興酒(減税)古越龍山など
ワイン(増税)おいしい酸化防止剤無添加ワイン、フロンテラなど

キリンビールは売れ筋の新ジャンル商品「キリン のどごし<生>」や「本麒麟」を値上げ。

<サッポロビール>

ビール(減税)サッポロ生ビール黒ラベル、ヱビスビール、サッポロラガービール
発泡酒クローネンブルグ1664ブラン
新ジャンル(増税)サッポロ 麦とホップ、サッポロ GOLD STAR、サッポロ ホワイトベルグ、サッポロ ドラフトワン
果実酒(増税)■国内製造ワイン
グランポレール、ポリフェノール/有機酸でおいしさアップシリーズ、うれしいワインシリーズ
■輸入ワイン
テタンジェ、ベリンジャー、ペンフォールズ、[イエローテイル]
■バカルディ社
マルティーニの一部商品

サッポロビールではロングセラー「サッポロ 麦とホップ」や「サッポロ GOLD STAR(ゴールドスター)」「サッポロ ホワイトベルグ」ら新ジャンル商品が値上げに。苦味が弱く飲みやすい白ビールテイストの「クローネンブルグ1664ブラン」(カールスバーグ)は発泡酒に分類されるが麦芽比率50%のため安くなる方向か。

<サントリービール、サントリーワインインターナショナル、サントリースピリッツ>

ビール(減税)ザ・プレミアム・モルツ、ザ・プレミアム・モルツ〈香るエール〉、ザ・モルツ、TOKYO CRAFT、カールスバーグ
新ジャンル(増税)金麦、金麦〈糖質75%オフ〉、金麦〈ゴールドラガー〉、サントリーブルー、ジョッキ生
ワイン(増税)デリカメゾン、酸化防止剤無添加のおいしいワイン。、カルロ ロッシ、サンタ バイ サンタ カロリーナ、フレシネ※、バロン ド レスタック
紹興酒(減税)蘭亭、翠亭、会稽山、曲渓

サントリービールの主力新ジャンル商品「金麦」シリーズや「ジョッキ生」も値上がりに。

減税を追い風に「糖質ゼロビール」誕生

今回の酒税法改正で減税になるビールは、発泡酒や新ジャンルの商品から移行する愛飲家が期待できるとあって、ビールメーカーも新商品の開発に力を入れている。

キリンビールは10月6日、「一番搾り」ブランドから「キリン一番搾り 糖質ゼロ」を新発売。ビールカテゴリーで糖質ゼロを実現する国内初の試みで、雑味のない麦のうまみを感じながら健康志向の人でも選びやすい商品となっている。

「キリン一番搾り 糖質ゼロ」

「日本酒」「紹興酒」は減税で値下げに

醸造酒類では、酒税区分で清酒に分けられる日本酒や、紹興酒などのお酒は減税に。それぞれ1リットルあたり、日本酒は約10円値下がり、紹興酒は約20円も安くなる。日本酒は一升瓶(1.8リットル)なら約18円値下げとなり、四合瓶(720ml)では約7円値下げ。紹興酒は一般的な600mlのボトル1本あたり約12円安くなる。

「ワイン(果実酒)」は増税で値上がり

ワインなどを含む果実酒類の醸造酒は、これまで日本酒などと比べて税率が低かったが、今回の酒税法改正で1リットルあたり約10円の値上げに。一般的な750mlに換算すると約8円の値上がりになる。

<醸造酒類の酒税比較(1リットルあたり)>

酒類〜2020年9月2020年10月〜価格増減
清酒(日本酒)(減税)約120円約110円約10円値下げ
その他の醸造酒(紹興酒など)(減税)約140円約120円約20円値下げ
果実酒(ワイン)(増税)約80円約90円約10円値上げ

まとめると、今年の10月からビール=値下げ、日本酒=値下げ、紹興酒=値下げ、新ジャンル=値上げ、ワイン=値上げとなり、今後は毎日の晩酌にどのお酒を選ぶかでエンゲル係数に違いが生まれそうだ。

なお、国は今回の令和2年(2020年)10月1日〜を皮切りに、令和5年(2023年)10月1日〜、令和8年(2026年)と段階的に酒税の税率変更を発表している。これによりどのお酒が値上がり/値下がりするのかは、また改めて…。

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