男の隠れ家の神出鬼没な編集者・田村巴は年がら年中“休肝日”がない生粋のお酒好き。そんなほろ酔い編集が美味い酒を求めて今宵もぶらりと旅に出る──。
「かっぱ橋道具街」は日本が世界に誇る厨房道具の問屋街。今回はこの街をぶらぶら歩いて、自分好みの酒器を探します。
※この記事は2025年9月号に掲載されたものです。
ほろ酔い編集・田村巴のちょっと一杯やらないか? 第20杯


ざっくりですけど、一年365日のうち、363日くらいは呑んでいます。こんにちは、嗜む程度にお酒が好きな田村です。
こんな書き出しをしてしまったら昨今の飲酒業界を取り巻くコンプライアンス的によろしくないのかもしれませんが、ウソがつけないタイプなので正直に申告しますと、363日ではなく、364日くらいは呑んでいると思います。
とはいえ一日の酒量はそれほど多くはないと自覚しています。晩酌に舐める程度です。はい。
一年のうちお酒を呑むシーンで最も多いのは自宅でございます。そもそもワタクシの性格は「社交的な人見知り」で、「アウトドアが好きな引きこもり体質」なものですから、誰にも気兼ねなく酔っ払える環境、すなわち自宅で呑むのが一番なのです。
毎夜、愛犬をこねくり回しながらまったりとお酒をいただき、眠たくなったら徒歩20歩でベッドイン。“最高にして最強”な環境なのです。

そんなこんなで今回はワタクシが愛してやまない「家呑み」をさらに楽しくするために、ゴキゲンになれる酒器を探して「かっぱ橋道具街」へとやって参りました!
「かっぱ橋道具街」は浅草と上野のちょうど中間くらいのエリアにあり、さまざまな厨房道具が揃う商店街として昔から親しまれています。
歴史を遡ると大正初期に古道具商が集まり始めたのがルーツといわれ、現在は約800mもの距離に多種多様な専門店が軒を連ねているのです。
今回、田村が探すのは日本酒を美味しくいただくためのお猪口。2025年の日本列島は6月から夏真っ盛りな様相を呈していて、おビールの消費量も非常に多くなっているとは思いますが、ビールジョッキやグラスではなく、あえて日本酒の酒器でございます。


鯵や穴子、鱚に鮎。夏が旬の魚をお供に、冷えた酒でキュっと一献。まだまだあるよ。冷奴に夏野菜のおひたし、ところてん。どう考えたって日本酒が合いますでしょうよ。
毎度この連載では「肉、肉」言っておりますが、魚だって好きなんです。暑い日はさらりと刺身をつまんで呑みたいじゃないの。
茹だるような暑さの中、午前中から道具街をぶ〜らぶら。和食器や洋食器、中華系の調理道具、お菓子道具に刃物屋さん。
使い捨て容器の専門店や、食品サンプルのお店まで、他の商店街では見られないラインアップで、「え、こんなものまで売ってるの?」が楽しめる街なんですよね。


お目当てのお猪口を探して和食器屋さんを中心に覗いていきます。やはり目を惹くのは「切子グラス」。伝統的な文様が描かれた涼やかな佇まいが魅力的。
それぞれに色や表情が異なり、なかなか「これだ!」というものが選べません。気持ちを切り替え、別のお店にも行ってみましょう。
次々と和食器屋さんを見つけてはチェックしていきます。それにしても人間てのは罪深い生き物ですね。見れば見るほどに心が定まらない。
切子が良いなと思っていたはずなのに、陶器にも惹かれてしまいます。徳利とお猪口のセットもいいね。せっかくなら産地で選ぶ? 有田焼? いやいや、信楽焼も良いじゃない。

いや待てよ、青磁のお猪口ってなんだか大人っぽいよね。優柔不断に拍車がかかります。なので、条件を科すことにしました。
①気持ちがアガる柄
②あくまでもお猪口サイズ
③一年を通して使いたいもの
条件を絞ってみると「これ、いいな」が明確になってきました。
結果として最終的に購入に至ったお猪口は2つ。九谷焼の青郊窯が作る「縁起ちょこ」で、柄は「花かるた」と「風神雷神図」。

俵屋宗達の風神雷神図屏風を模した柄は、ついつい手元に置きたくなりますね。縁起が良さそうだし守ってくれそう。何ならお酒も強くなりそう。
「花かるた」の方は花札の五光と梅の赤短(あかよろし)、そして菊に盃(酒札)が描かれています。子どもの頃、花札が好きでクラスメイトと休み時間に勝負したのを思い出します。こちらは勝負運を授かれそう。
それにしても自分好みの酒器を探す旅。楽しすぎて病みつきになりそうです!
かっぱ橋道具街
約800mも続く厨房道具の問屋街
その道のプロだけでなく料理好きや酒好き、観光目的でも楽しめる商店街。見るだけでも楽しいお店がたくさんあるので、ぶらり散歩にオススメ。
かっぱ橋道具街
東京都台東区松が谷3-18-2
TEL/03-3844-1225(東京合羽橋商店街振興組合)
【著者プロフィール】
田村 巴(Tomo Tamura)
1979年北海道出身、フリー編集者。長年「男の隠れ家」に携わり現在は「男の隠れ家デジタル」編集長も務める。毎日の晩酌が人生をより良くすると信じて疑わない。
文/田村 巴 撮影/Noriy.k
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