108093蒸溜と熟成に長けた“鹿児島”の焼酎蔵|ジャパニーズウイスキーの新潮流「嘉之助蒸溜所」の挑戦とは?

蒸溜と熟成に長けた“鹿児島”の焼酎蔵|ジャパニーズウイスキーの新潮流「嘉之助蒸溜所」の挑戦とは?

男の隠れ家編集部
編集部

男の隠れ家の神出鬼没な編集者・田村巴は年がら年中“休肝日”がない生粋のお酒好き。そんなほろ酔い編集が美味い酒を求めて今宵もぶらりと旅に出る──。

日本で最も長い砂丘の吹上浜と東シナ海を望む海沿いの蒸溜所。絶景を目の前に、いま注目のウイスキー造りを見学してきました!

ほろ酔い編集・田村巴のちょっと一杯やらないか? 第21杯

輝く太陽、光る波飛沫、潮騒の夕暮れ。あぁ、今年も日本に夏がきた……。「暑い、暑い」と日々、地球に文句をつけながらも、南へと向かってしまうのは、なぜでしょう。今月は鹿児島県日置市へとやってきました。

鹿児島で酒といえば焼酎。芋を筆頭に麦、米、黒糖などなど。その種類も酒蔵の数も豊富です。

そんな中、この数年で世界から注目を浴びるウイスキー蒸溜所があると聞き、あれやこれやと会社に言い訳を並べた田村は鹿児島行きのチケットを華麗にGET。サクッと飛んでまいりました!

訪れたのは「嘉之助蒸溜所」さん。平成29年(2017)年からウイスキー製造を始めた比較的新しい蒸溜所です。もともとは明治16年(1883)創業の焼酎蔵「小正醸造」が母体で、蒸溜に関していえば、その道のプロ。

東シナ海を望む風光明媚な地にある嘉之助蒸溜所。70年に及ぶ樽熟成の経験と技術は他の蒸溜所にはない特徴。4代目の小正芳嗣さんが祖父の名前を冠して設立しました。

そして何よりも注目したいポイントは小正醸造の「メローコヅル」という焼酎の存在です。どういうことかというと、このメローコヅル、実は日本初となる“樽熟成米焼酎”として昭和32年(1957)に誕生したもの。

二代目・小正嘉之助さんの「焼酎も樽で熟成したらもっと美味しくなる」という信念から生み出され、当時「焼酎=安酒」というイメージが強かった中、「洋酒のような焼酎」としてバーや高級店で人気を集めました。

特に1960年代から70年代にかけては、高価だったウイスキーの代わりに多くの人に親しまれました。つまり嘉之助蒸溜所(小正醸造)は、樽で酒を熟成するという技術や知見を70年近くも積み重ねてきた酒蔵ということ。

メローコヅルが全ての始まり

ここであらためて確認しますが、ウイスキー造りに欠かせない工程は「蒸溜」と「樽熟成」。賢明な読者の皆さんなら、もうお分かりですよね。そのどちらの技術も長い歴史と経験を持つ嘉之助蒸溜所のウイスキーは絶対に美味いはず。

どんなウイスキーに出会えるのかワクワクしながら、蒸溜所見学をさせていただきました!

まず最初に見学したのは熟成庫。貯酒管理のエキスパート・神前拓馬さんの案内で2種類の熟成庫を巡ります。一つ目はかつてメローコヅルを熟成させていた「レガシー」をテーマにした熟成庫で、半地下構造のため気温と湿度が安定した環境。

かつて使用した焼酎熟成タンク
小正醸造の歴史ある熟成庫

昭和の時代から焼酎を熟成してきた歴史ある建物に足を踏み入れた瞬間、ウイスキー香でひと酔いできそうなほど芳醇な香りが漂っています。

続いて「テロワール」をテーマに2022年から熟成を開始した新しい熟成庫へも足を運びます。海風を効率的に取り込む構造で、5000樽以上を収容できるとのこと。

4カ所7棟あるすべての熟成庫の貯蔵能力は、なんと1万樽以上! その規模は大手メーカーを追随するような、とにかくすごい量です。

大量の樽が熟成中!

「年間で40℃程度の寒暖差があるため、スコットランドの約3倍のスピードで熟成が進みます。3年程度で色づきが良くなり、甘みも出てきます」(神前さん)

ただその分、揮発して樽の中で失われる量も増えるそう。どうりで熟成庫に漂うウイスキー香が強いと感じるわけです。香りだけでも美味しく酔えそうって、見学者だけが味わえる幸せな体験。

さて、蒸溜所はどのような施設でしょう。所長の中村俊一さんの案内で製造現場を拝見します。

平成29年から稼働したコの字型の蒸溜所は、青い空に美しく映える白亜の建物。原料処理から糖化、発酵、蒸溜を順番に巡ります。

ポットスチル3基で蒸溜します

「嘉之助では3基の蒸溜器を使い分けシングルモルトを造り、日置蒸溜蔵では焼酎設備を活かしたアイリッシュスタイルの蒸溜でバーボンのような新樽熟成のポットスチルウイスキーにも挑戦しています。“いいとこ取りのウイスキーを鹿児島の風土で育む”のが私たちのスタイルです」(中村さん)

聞けば樽にもこだわりが。バーボンやシェリー、ワイン樽のほかミズナラやメローコヅルを熟成した樽なども使用。ふむふむ。これは味わいが非常に気になります。

蒸溜所2階の「THE MELLOW BAR」で3種のウイスキーをテイスティング。香りと味わいをしっかり楽しむと、良い意味で“裏切り”と“驚き”のある試飲体験となりました。

試飲の詳細は写真キャプションにて!

美しい海を望む「THE MELLOW BAR」にて。
ボトル右から定番の「シングルモルト 嘉之助」(以下、SMK)、小正醸造の焼酎蔵で造る「嘉之助 HIOKI POT STILL」(以下、HPS)、上の2つの原酒をブレンドした「嘉之助 DOUBLE DISTILLERY」(以下、DD)。

スパイシーさに甘さが漂うSMKは正統派の旨さ。芳醇な香りが際立つHPSは甘やかでリッチな味わい。

SMKとHPSの良さが高次元でブレンドされたDDは、特に上質な仕上がりで個人的に一番好み。どれも3~4年熟成とは思えぬ美味さ。

海を眺めながら余韻に浸る…

嘉之助蒸溜所(嘉之助SHOP)

140年続く焼酎蔵が世界へ挑む!

国内外のコンペティションで多数の金賞や優秀な成績を収め、世界から注目を集める蒸溜所。ロケーションの美しさも含め、一度は訪れていただきたい。

嘉之助蒸溜所(嘉之助SHOP)
鹿児島県日置市日吉町神之川845‑3
営業時間/10:00〜16:30
休館日/月曜・年末年始、臨時休館あり
※蒸溜所見学は予約制、公式HPより事前申込
https://kanosuke.com/

【著者プロフィール】
田村 巴(Tomo Tamura)

1979年北海道出身、フリー編集者。長年「男の隠れ家」に携わり現在は「男の隠れ家デジタル」編集長も務める。毎日の晩酌が人生をより良くすると信じて疑わない。

文/田村 巴 撮影/Noriy.k

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