日本で2つのバンクシー展が開催される。それぞれ、個人コレクターの貴重なコレクションや作品の再現展示など、バンクシーを身近に感じられる注目の展示イベント。2つのバンクシー展の見どころや出展作品を見てみよう。

exhibition_1▶WHO IS BANKSY? バンクシーって誰?展
exhibition_2▶バンクシー展 天才か反逆者か

Who is Banksy?

社会へ問題提起をし続けるアーティストに迫る!
(c)Alamy

バンクシー展 天才か反逆者か

体験型の映像展示で知るバンクシーの世界

モスクワ、サンクトペテルブルク、マドリード、リスボン、香港の5都市で開催され人気を博した巡回展で、個人コレクターが所蔵するオリジナル作品のほか、版画、立体作品など70点以上が一堂に集結する。

なかでも特徴的なのが、インスタレーションやマルチメディアスクリーンによる体験型の展示だ。大型3面スクリーンでは、これまでのバンクシーの活動を紹介するイメージ映像のほか、2015年にブリストルにオープンしたテーマパーク「ディズマランド」の映像インスタレーション、2017年にイスラエルとパレスチナ自治区に開業したホテル「ウォールド・オフ・ホテル」の一室の再現が楽しめる。様々な写真・映像資料を元に再現された制作スタジオも展示されており、多角的にバンクシーのメッセージや思想、表現方法の変遷が理解できる。

それらを俯瞰すると、大量のマーケティング情報に自由を奪われ、消費を煽られる資本主義システムに生きる現代人と、そうした人々をさらに監視する強権的な政治体制への嫌悪感といった、バンクシーのメッセージが浮かび上がってくる。バンクシーのネズミは、都会環境に適合した野生動物。それはバンクシー自身であると同時に我々自身でもある。社会システムに適合しつつ、それを出し抜こうとする“力を持たざる者”。多くの人を惹きつけるバンクシーの魅力を、本展で発見したい。

Exhibition topic 01|RATS(ネズミ)

バンクシーはネズミのモチーフを再三取り上げている。それはネズミはどのような状況でも生き抜くことができる都会環境に適合した動物だからだ。我々はみな、システムが作り出す環境のなかで生き抜こうともがくネズミなのだ。当初、ストリート上に描かれていたネズミは、やがてコレクターの家の壁に飾られるようになった。

Exhibition topic 02|ARTIST STUDIO(アーティスト・スタジオ

原則として、展覧会はアーティストの経歴から始まり、その人物像を探求していく。しかし、誰もその正体を知らないバンクシーの場合、この原則には当てはまらない。バンクシーを紹介するにあたり、本展ではいくつもの写真や映像からバンクシーのスタジオを再現。実際にバンクシーのスタジオを体感し、アーティスト像に迫ることができるだろう。

Exhibition topic 03|THE WORST VIEW IN THE WORLD(世界一悪い眺め)

2017年3月、バンクシーはベツレヘムで「ウォールド・オフ・ホテル」を開業した。このホテルはバンクシーいわく「世界で一番眺めが悪い」ホテルであり、論争の的であるイスラエルとパレスチナ自治区の分離壁に面して建てられた。本展ではホテルの一室(《Pillow Fight》)を忠実に再現、ホテルの空間を実際に体感することができる。

ベツレヘムに2017年開業した世界一眺めの悪いホテル

Exhibition topic 04|DISMALAND(ディズマランド)

バンクシーの故郷・ブリストルのウェストン=スーパー=メアで、2015年8月から9月までの期間限定で開演した「ディズマランド」。本展では「ディズマランド」の展示のひとつでであった《ポリス・ライオット・トラック》や「ディズマランド」が建設された場所にちなんで名付けられた《ウエストン・スーパー・メア》など関連作品が展示される。

Exhibition topic 05|CONSUMPTION(消費)

バンクシーの作品で頻繁に取り上げられるテーマのひとつが反消費主義だろう。本展では2004年8月にノッティングヒルのカーニバルでばらまかれた偽紙幣《ディーアイ・フェイスド・テナー》や、アンディ・ウォーホルに対する賛辞ともとれる《ケイト・モス》など、バンクシーの反消費主義にまつわる作品をご紹介する。

Exhibition topic 06|CCTV(監視カメラ)

監視カメラに映る回数が、ひとり1日あたり平均300回といわれているほど「監視カメラ大国」であるイギリス。世界中の監視カメラのおよそ20パーセントがイギリスにあるという。本展ではロンドン・オックスフォード通りにかつて描かれていた《ワン・ネイション・アンダー・シーシーティーヴィー》などのパネルを展示する。

Exhibition topic 07|POLITICS(政治)

政治はバンクシーが好んで取り上げる主題のひとつである。本展では《モンキー・パーラメント》をはじめ、有名な女王の像を白黒のサルの肖像と置き換えた《モンキー・クイーン》や、チャーチル元首相の銅像の頭上に芝生を乗せた《ターフ・ウォー》、1981年のアメリカのレーガン大統領暗殺未遂事件のシーンを描いた《アイ・フォウト・ザ・ロウ》などが並ぶ。

中央《Monkey Parliament》(モンキー・パーラメント)
オフセット・リトグラフ(ポスター) 2009年 53×84cm 個人蔵
議員たちによる経費不正申告というスキャンダルに応じて制作された本作は、選挙に選ばれた代議士たちが集まって意見表明をしている。「あなたが選挙で選んだ議員たちは、あなたをサル並にする」という風刺が込められている。

Exhibition topic 08|PROTEST(抗議)

バンクシーの作品の多くは、社会に対するある種の抗議である。《ラヴ・イズ・イン・ジ・エア》のほか、広告バナーを身につけたチンパンジーを描いた《キープ・イット・リアル》《ラフ・ナウ》、『オズの魔法使い』の主人公・ドロシーが警察に尋問されている姿を描いた《ストップ・アンド・サーチ》を展示。

《Love Is In The Air》(ラヴ・イズ・イン・ジ・エア)
シルクスクリーン/紙 2003年 50×70cm 個人蔵
《フラワー・スロアー》としても知られる本作。火炎瓶を投げようとしている人物が実際に手にしているのは花束である。どんな変革も平和的手段で達成されなくてはならないというバンクシーの強いメッセージが込められている。

ベツレヘムの街の壁に描かれた《Flower Thrower(フラワー・スロワー)》

Exhibition topic 09|GAME OF WAR(ゲーム・オブ・ウォー)

バンクシー作品のなかで反軍国主義というテーマは、政治や抗議と深く関係している。戦争や軍隊について、バンクシー自身「世界最大の犯罪は、規則を破る者によってではなく、規則に従うものによって犯される」(バンクシー著『ウォール・アンド・ピース』)という意見を述べている。

《Napalm》(ナパーム)
シルクスクリーン/紙 2004年 50×70cm 個人
ベトナム系アメリカ人写真家の写真に基づいて制作された。泣き叫びながら走る少女の両脇には、アメリカ文化と資本主義の象徴であるマクドナルドとミッキーマウスを配し、資本主義への注意を促している。

Exhibition topic 10|LIFE AND DEATH OF THE ART OF BANKSY(バンクシー・アートの生と死)

ストリート・アートという性質上、バンクシーの多くの作品は短命である。塗り潰されてしまう作品がある一方、壁から切り取られ高額で売買されるもの、また自然と消失してしまうものもある。本展ではバンクシーのいくつかの作品がどのような末路をたどったのかを一連の流れとともに紹介する。

《No Ball Games》(ノー・ボール・ゲームス)
シルクスクリーン/紙 2009年 70×70cm 個人蔵
2009年ロンドンで描かれた本作は、2013年ある企業によって専有された。3つに切り出され3部作となったが、本展ではこの作品が売却されたオークションの様子を写真からたどることができる。

Exhibition topic 11|BANKSY VS
BRISTOL MUSEUM(バンクシーVSブリストル・ミュージアム

2009年6月、イギリス・ブリストル美術館で開催されたバンクシーの個展。鑑賞者に日常生活の文化的要素に関心を向けてもらうことを意図し、バンクシーの作品はブリストル美術館の常設作品に溶け込むように展示された。本展ではブリストル美術館での個展で実際に展示された貴重なポスターが展示される。

《Banksy VS Bristol Museum Poster》(バンクシー・ブイエス・ブリストル・ミュージアム・ポスター)
ポスター 2009年 59.4×41.9cm 個人蔵

Exhibition topic 12|GIRL WITH
BALLOON(ガール・ウィズ・バルーン)

シュレッダー事件でも広く知られる《ガール・ウィズ・バルーン》(風船と少女)は、バンクシー作品のなかでも最も人気が高い作品だ。もともと、2002年にロンドン、サウスバンク側のウォータールー橋の階段に描かれ、他にもいくつか描かれたが多くの壁画が塗りつぶされた。本展では2004年に制作された作品が展示される。

《Girl with Balloon》(ガール・ウィズ・バルーン)
シルクスクリーン/紙 2004年 70×50cm 個人蔵

「バンクシー展 天才か反逆者か」
プロデューサー アレクサンダー・ナチケビア氏 メッセージ


本展は世界中に存在するバンクシーのコレクターの作品が集結した、今までにない規模で開催されるバンクシーの個展です。オリジナル作品だけでなく、映像やインスタレーションなどを用いて、多角的にバンクシーに迫る内容となっています。

本展では作品の表層を取り上げるだけでなく、その内面を通して日々の生活で忘れがちな「感じる」「考える」きっかけにしてほしいと考えています。アートに敏感な日本の皆様にバンクシーの才能を十分に堪能していただきたいです。

※開催情報は変更となる場合があります。最新の情報は展覧会公式HPなどでご確認ください。

文◎奥 紀栄(本文)

バンクシー展 天才か反逆者か

会場:大阪南港ATC Gallery(ITM棟2F)
住所:大阪市住之江区南港北2-1-10
期間:2020年10月9日(金)~2021年1月17日(日)
時間:平日10時~17時(10月は20時まで)土日祝10時~20時
休館日:12/31、1/1は休館
料金:一般平日1800円ほか ※WEB事前予約制あり
https://banksyexhibition.jp/

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