ブリストルで生まれたバンクシー作品

Girl with a Pierced Eardrum(ブリストル,UK)

ブリストルは、古くから港町として栄え、イギリスでは8番目に人口の多い、イギリス南西部最大の都市。飛行機やエンジンの生産が盛んなことで知られる。

バンクシーの出身地とされ、今でもバンクシーの作品が残されており、バンクシーが有名になる以前の初期作品をはじめ、様々なアーティストによるグラフィティを楽しむことができる。

Girl with a Pierced Eardrum
Bristol,UK 2014年
(c)Alamy

「Girl with a Pierced Eardrum(ピアスの少女)」は、フェルメールの《真珠の耳飾りの少女》をパロディ化したもので、真珠の耳飾りの部分をもともと設置されていた黄色い六角形の警報機で表現したもの。イギリスのセキュリティー産業への傾倒に対する批判が込められているようだ。

Mild Mild West(ブリストル,UK)

Mild Mild West
Bristol,UK 1999年
(c)Alamy

「Mild Mild West(マイルド・マイルド・ウエスト)」は、バンクシーによる貴重なフリーハンド作品で、初期の頃に描かれた。当時ブリストルで無許可のレイブパーティーが流行し、警察の弾圧を受けたことが背景にあるようだ。テディベアが機動隊に火炎瓶を投げようとしている。

Cat and Dogs(ブリストル,UK)

Cat and Dogs
Bristol,UK 1990年代前半
(c)Kyla Borg

かつてバンクシーが住んでいたというイーストン地区にあるバンクシーの最初期の作品。猫がエアゾール缶を持ち、壁に落書きをしている。その背後には、警察を思わせる緑色の2匹の犬がパトロールする姿が描かれている。

Bridge Farm Primary School(ブリストル,UK)

Bridge Farm Primary School
Bristol,UK 2016年
(c)Alamy

ブリストルにある小学校の生徒たちとバンクシーの心温まるエピソードから生まれた本作。校舎の名前を「バンクシー」に変えることになり、子どもたちがバンクシーに手紙を書くと、休み明けに短い手紙とともに本作が残されていたという。

Well-Hung Lover(ブリストル,UK)

Well-Hung Lover
Bristol,UK 2006年
(c)Alamy

裸のまま窓からぶら下がる男は、情事の合間に入り込んできた愛人の夫によって、今まさに発見されそうになっている。性感染症専門病院が入ったビルの壁に描かれた。青い絵の具で上書きされたが、現在もそのまま残されている。

Valentine’s Banksy(ブリストル,UK)

Valentine’s Banksy
Bristol,UK 2020年
(c)Alamy

バートン・ヒル地区マーシュ・レーンで、バレンタインデーの前日の朝に発見された。Y字型のパチンコを放つ少女と、その先には放たれた赤い花と葉が飛び散る様子が描かれている。翌日バンクシーのSNSにもその様子が投稿された。

BANKSY VS Bristol Museum(ブリストル,UK)

2009年、ブリストルではバンクシーの個展が開かれた。ミレーの《落穂拾い》をモチーフに、農婦の1人を切り取り、額縁に煙草を吸う農婦を置いた《エージェンシー・ジョブ》やメインホールにはアイスクリーム販売車を展示。

Agency Job(エージェンシー・ジョブ)
(c)Alamy
メインホールに展示されたアイスクリーム販売車
BANKSY VS Bristol Museum
Bristol,UK 2009年
(c)Alamy

Grim Reaper(ブリストル,UK)

Grim Reaper
Bristol,UK 2003年
(c)Alamy

水上ナイトクラブの船体の右舷に描かれた作品。ちょうど死神が水面に浮いているように見える。2014年にナイトクラブが改装された際に、絵の部分が切り取られ、現在はブリストル美術館別館に展示されている。

イギリスで生まれたバンクシー作品

バンクシーの活動拠点であるロンドンには、《ガール・ウィズ・バルーン》を始め、バンクシーの作品も多く残されてきた。しかし、破壊されたり、上塗りされたり、壁ごと切り取られてオークションに出されたりと、今はもう見られなくなってしまった作品も少なくない。ロンドンに登場したバンクシー作品の足跡をたどる。

Girl with Balloon(ロンドン, UK)

Girl with Balloon
London,UK 2002年
(c)Dominic Robinson

2017年、イギリス人2000人によって選ばれた「イギリス人が選ぶ、イギリス人アーティスト」の第1位に選ばれたバンクシーの《ガール・ウィズ・バルーン》。ロンドンのテムズ川沿いにあるサウスバンクのウォータールー橋を上る階段に描かれた本作は、その最初の壁画であった。その後、市議会によって削除された。

Girl with Balloon
London,UK 2007年
(c)Alamy

イースト・ロンドンの中心地ショーディッチに描かれたバージョン。ウォータール橋など《ガール・ウィズ・バルーン》はロンドン周辺の様々な壁に描かれたが、現在それらはすべて塗り潰されひとつも残っていない。

Yellow Lines Flower Painter(ロンドン, UK)

Yellow Lines Flower Painter
London,UK 2007年
(c)Alamy

道路から続く黄色いラインがそのまま壁へと続き、大きな黄色い花を咲かせている。ラインを引いたペインターが、傍らで一休みしている。歩道を横切っていたラインは取り除かれたが、画家と花はそのまま残された。

unknown(ロンドン,UK)

unknown
London,UK 2019年
(c)Alamy

環境保護団体のデモが行われたマーブル・アート付近に描かれた少女の絵。「FROM THIS MOMENT DESPAIR ENDS AND TACTICS BEGIN(この瞬間から絶望は終わり作戦が始まる)」のメッセージが添えられる。

Sweeping it under the Carpet(ロンドン,UK)

Sweeping it under the Carpet
London,UK 2006年
(c)Alamy

ロンドン北部にあるギャラリーの壁に描かれた。メイドの女性が埃を掃除するために、カーテンのようにレンガの壁を持ち上げている。メイドは2008年に約2億円で落札された《Keeping it Spotless》にも登場している。

His Master’s Voice(ロンドン,UK)

His Master’s Voice
London,UK 2003年
(c)Alamy

ショーディッチのナイトクラブの中庭に描かれたもの。レコード会社HMVのトレードマークとして知られるニッパー犬をモチーフにしている。蓄音機をのぞく犬の絵を、蓄音機にバズーカを向けている犬に描き変えている。

What are you looking at?(ロンドン,UK)

What are you looking at?
London,UK 2004年
(c)Alamy

「何を見ているの?」という文字に向けられる監視カメラ。イギリスにおける監視カメラの数は驚異的なレベルに達しており、本作にはイギリス国内の過剰な監視カメラの使用に対するバンクシーの批判が込められている。

Les Misérables(ロンドン,UK)

Les Misérables
London,UK 2016年
(c)Alamy

催眠ガスに包まれるのは『レ・ミゼラブル』の主人公コゼット。フランス北部・カレーの難民キャンプで、警察関係者が催眠ガスなどを使用したことに対する批判を表している。左下のQRコードで証拠を示す動画とリンクする。

Slave Labour(ロンドン,UK)

Slave Labour
London,UK 2012年
(c)Alamy

2012年のエリザベス女王即位60年にあわせ、ユニオンジャックの旗が大量に作られた。本作は違法な少年労働がモチーフとなっている。翌年の2月初旬に壁ごと切り取られ、その後オークションにかけられた。

Guard Dog(ロンドン,UK)

Guard Dog
London,UK 2003年
(c)Alamy

警備員がパトロールの相棒に連れているのは、見回りにそぐわないふわふわの愛らしいプードル。「THIS WALL IS A DESIGNATED GRAFFITI AREA(この壁は指定された落書きエリアです)」の文字が添えられる。

The Royal Family(ロンドン,UK)

The Royal Family
London,UK 制作年不明
(c)eddiedangerous

バッキンガム宮殿のバルコニーから手を振るイギリス王室を道化風に描いた。建物のオーナーは壁画をそのまま残すつもりだったが、2009年、市職員が誤って、大部分を黒いペンキで上塗りしてしまった。

パレスチナ自治区で生まれたバンクシー作品

イスラエルがパレスチナ自治区との間に建設した”分離壁”に初めてバンクシーが作品を残したのは2005年。以降、The Walled off Hotelの開業に携わったりと、人々の目をこの地に向けてきた。ガザ地区を含むパレスチナ自治区では、政治的メッセージが込められたバンクシーの作品を見ることができ、今日も世界中から多くの人がこの地へ足を運んでいる。

Watch Tower Swing(ガザ、パレスチナ 2015年)

ガザ地区北部のベイトラヒヤの幹線道路の壁に描かれたのは、まるで遊園地の回転ブランコで遊ぶかのように、イスラエル軍の監視塔で遊ぶ子どもたちの姿だ。2015年に《子猫(ジャイアント・キトゥン)》とともに制作された。

Angels(ベツレヘム、パレスチナ)

Angels
Bethlehem,Palestine 2017年
(c)Alamy

少し隙間の空いた分離壁に描かれた2人の天使たち。スカーフで顔を半分覆い、本来なら優しいはずの天使が、無理矢理壁をこじ開けようとしている。バンクシーが手がけたホテルの脇にある小道沿いの分離壁に描かれている。

Art Attack(ラマッラー、パレスチナ)

Art Attack
Ramallah,Palestine 2005年
(c)Maureen

壁に空けられた大きな穴の向こうでは、バケツを持った少年が砂場で遊ぶのを待っている。パレスチナの子どもたちのビーチへの憧れを描いているようだ。2005年にバンクシーがパレスチナの分離壁で制作した9点のうちのひとつ。

Armored Dove of Peace(ベツレヘム、パレスチナ)

Armored Dove of Peace
Bethlehem,Palestine 2005年
(c)Alamy

平和の象徴である鳩がオリーヴの枝をくわえ、羽を広げている。しかし、よく見ると鳩は防弾チョッキをを身につけ、その胸には銃のターゲットが当てられ、どこからか狙われている。本作も2005年に制作された作品のうちの1点。

Cracked TV(ベツレヘム、パレスチナ)

Cracked TV
Bethlehem,Palestine 2017年
(c)Maureen

バンクシーが手がけた「The Walled off Hotel」の部屋のフラットテレビ。CNNニュースが流れる画面にはひびが入り、画面の中にはやり場のない怒りを抑えきれず、宿泊客に向かって石を投げつける挑戦的なパレスチナ女性が入っている。

Thrower(ベツレヘム、パレスチナ)

Thrower
Bethlehem,Palestine 2017年
(c)Maureen

ヨルダン川西岸に描かれたバンクシーの代表作《フラワー・スロア》をモチーフに3つの作品で構成されていた本作。石の代わりに花束を投げる男性が描かれるが、花束の部分には額縁前に花瓶が置かれ、造花が飾られている。

Balloon Debate(ラマッラー、パレスチナ)

Balloon Debate
Ramallah,Palestine 2005年
(c)Maureen

ベルリンの壁の3倍の高さはあるという分離壁に描かれた風船にぶら下がった少女のシルエット。紛争に巻き込まれ、身動きがとれなくなってしまった子どもたちの「壁を越えて自由に飛び立ちたい」という夢が表現されているようだ。

アメリカで生まれたバンクシー作品

アメリカから伝わったグラフィティが、バンクシーというアーティストを介してひとつの新しいアートとなって再びこの地へ舞い戻った。ニューヨークやロサンゼルスといった都市では、様々な作品が残された。またバンクシーらしいユニークな個展も開かれ、バンクシーはアート史へ新たな足跡を残すこととなった。

unknown(ニューヨーク、アメリカ)

unknown
NY,USA 2013年
(c)Alamy

人を見下すかのように冷ややかな表情を浮かべたロナルド・マクドナルドが貧困層の男性に自身の巨大なブーツを磨かせるインスタレーション。従業員に企業イメージを磨き上げることを強いる大企業への批判を表している。

The Banality of the Banality of Evil(ニューヨーク、アメリカ)

The Banality of the Banality of Evil
NY,USA 2013年
(c)Alamy

ホームレスを保護するNPO団体が運営するリサイクルショップから50ドルで購入した油彩の風景画に、バンクシーがナチスの将校を描き加えた。作品はリサイクルショップに戻され、オークションに。その収益は団体に寄付された。

The Village Pet Store and Charcoal Grill(ニューヨーク、アメリカ)

The Village Pet Store and Charcoal Grill
NY,USA 2008年
(c)Ludovic Bertron
The Village Pet Store and Charcoal Grill
NY,USA 2008年
(c)Ludovic Bertron

2008年、ニューヨークのグリニッジ・ビレッジでペットショップ「The Village Pet Store and Charcoal Grill」をオープン。バーベキューソースを突っつくマクドナルドのチキンナゲット(上)や化粧をするウサギ(下)が展示された。

Parking(ロサンゼルス、アメリカ)

Parking
LA,USA 2010年
(c)Alamy

もともとあった「PARKING(=駐車場)」の「ING」を白く上塗りし、「PARK(=公園)」に。「A」に縄をかけたブランコで遊ぶ少女が描き加えられた。子どもの遊び場の不足を訴え、アメリカの自動車依存を批判している。

Sirens of the Lambs(ニューヨーク、アメリカ)

Sirens of the Lambs
NY,USA 2013年
(c)Alamy

羊や豚、牛や鶏のぬいぐるみを載せたトラック《Sirens of the Lambs(子羊のサイレン)》には、動物虐待への批判が込められている。キーキーという叫び声を発するこのトラックはおよそ2週間ニューヨークの街中を走り周ったという。

Charlie Brown Firestarter(ロサンゼルス、アメリカ)

Charlie Brown Firestarter
LA,USA 2011年
(c)Alamy

2011年2月、放火されたビバリーヒルズのビルの壁に描かれた。漫画『ピーナッツ』のキャラクターであるチャーリー・ブラウンが、タバコを吸いながらこっそりと赤いガソリン缶からガソリンを流し、放火しようとしている。

ヴェネツィアで生まれたバンクシー作品

2019年5月、ヴェネツィアビエンナーレが開催された頃、バンクシーはこの地を訪れたようだ。自身のSNSにサン・マルコ広場で作品を展示する動画をアップし、「世界で最大の権威あるアートイベントに、自分は招待されたことがない」とコメントを残した。そして、彼はそのほかこの地にもうひとつグラフィティを残していった。

Venice in Oil(ヴェネツィア、イタリア)

Venice in Oil
Venezia,Italy 2019年
www.banksy.co.uk

いくつかのカンヴァスを並べるとパズルのように合わさり、観光客を乗せ、ヴェネツィア運河を漂う白い大きなクルーズ船が現れる。クルーズ船から排出される油の汚染を指摘していると考えられる。

Refugee in a Lifejacket(ヴェネツィア、イタリア)

Refugee in a Lifejacket
Venezia,Italy 2019年
(c)Alamy

ライフジャケットを着た移民の子どもが、ピンクの煙がもくもくと出ている炎を掲げている。あらかじめ計算されていたのだろうか、現在海面上昇により、子どもの姿は海に飲み込まれてようとしている。

パリで生まれたバンクシー作品

ステンシルアートの父ブレック・ル・ラットが、80年代この地にネズミを描いたことで、世界にステンシルアートが広まったという。バンクシーもまたパリにいくつかのネズミのステンシル画を残している。エッフェル塔を臨むセーヌ川の橋の下からステンシルアート誕生の地ボーブールまで、パリのバンクシー作品も見逃せない。

Napoleon Crossing the Alps(パリ、フランス 2018年)

ジャック=ルイ・ダヴィッドのナポレオンを描いた作品をモチーフにしている。イスラムの赤いスカーフに覆われた指導者は、移民政策を指揮するフランスの指導者を批判しているのだろうか。

Eiffel Rats(パリ、フランス)

Eiffel Rats
Paris,France 2018年
(c)Greg Wolf

芸術の都市・パリにふさわしい上品そうな年配のネズミのカップルが、エッフェル塔を眺めている。エッフェル塔を借景にし、ネズミの視線がエッフェル塔に向けられるように描かれている。

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